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二人で一つの物語  作者: 雨白狐
第零章 誰も知らないセカイ
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第零章2 『オバケとの遭遇?』

--「……へ?」



 紅色に輝く瞳の少年は、以前の自分とどこか似ているところがあり…。白地に青を基調としたローブを身にまとい、およそ165cmほどある身長は、顔つきとよく似た幼さを放っている。


 状況が飲み込めずただただベッドの上で座りこけて鏡の方に面を向けるナイト。空白の時間が少しずつ経っていき、驚きをやっと声として出すことができる。



「う、うわぁぁぁぁああああ!!!!な、なんだよ、誰だよお前!!オバケ?オバケなのか?は?え?は??」


「ち、違いますよ!!てかあなたこそなんなんですか!?突然鏡の中に現れたかと思ったらいきなりオバケだなんて!」



 彼の言葉すら耳に入れず、ナイトはブルブル震えながら体操座りに面を埋もれさせている。それもそのはずだ。ナイト自身、とても厨二なくせにオカルトに対してはとてつもなく恐怖心を抱いているのだ。俗に言う『ビビリ』というヤツである。



「どう考えてもオバケだろうが!顔そっくりの奴がいきなり喋るとかマジホラーだわ!お前さてはドッペルゲンガーだな?俺を殺しに来たのか!?ぁあ!?」



 恐怖心を隠すかのように、声を荒げる。傍から見たら、弱い犬が大声で吠えているようである。とても弱い精神。震えている手、怯えた表情は、皆を哀れな気持ちにもさせるような姿である。しかし、激しく罵声をあげる黒髪の男に対し白髪の少年は、



「君の言うその…ドッペルゲンガーというものはいまいちよくわからないけど…」



 突然手のひらをひっくり返したかのように、今までとは考えられないほど落ち着いていた。そんな彼の態度に、ナイトは足元をすくわれたかのように、口をポカンと開けてただ呆然とする。



「…とりあえず自己紹介を、…僕の名前はオザーク・ウルゲイン、周りからはザークと呼ばれています。だから君もザークと呼んでもいいですよ」


「えと、オザ、オザー…、なんだっけ?」


「だからザークでいいですって!」



 話を聞いていないフリをして、わざと本名を呼ぼうとしたが、彼の嫌がらせも虚しく、ザークに強く言い返されてしまう。静かな態度からの強い発言に、彼は『コイツめんどくさい』と心の中で思うのである。



「…あ、はい…。ザークな。んで?お前ホントにオバケじゃないんだよな?」



 嫌々返事をし、低いトーンで名前を呼ぶ。そして彼が全てにおいて一番気になっていたことを聞く。が、そんな質問も虚しく、



「だからオバケじゃないって…。てか普通、相手が名乗ったんなら自分も名乗るもんじゃないんですか?」


「ぁあ?」



 彼の言葉に彼は少し逆ギレしたように答える。確かに彼の言ったことは間違っていない。普段のナイトなら迷わず謝って自分から自己紹介をするだろう。しかし、彼の言葉は何故かナイトの尺に触ってしまう。そしてザークは泣き出しそうな表情で、



「…あ、あのえと…、すみません。本当にすみません」



 彼の反応は、ヤンキーに絡まれた弱々しい学生のようである。その姿はまるで、3年前の自分のようにも見えた。そう考えると、さっきまでの彼に対する感情が、なんとなく変わっていく気がする。そして、『プスッ』と吹き出し、笑いとともに言葉が柔らかくなる。



「なんで謝ってんだよ。面白いな、おまえ。あ、俺の名前だったよな。俺の名前はナイト、白井騎士だ。よろしくな!」



 今までのムスっとした態度からは考えられないほど、ナイトはあっさりと笑いながら自分の名前を名乗った。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 白井騎士しらいないとは20世紀と21世紀をまたいだ日本生まれの通称『ミレニアムチルドレン』である。


 彼の人生は17年…いや、先月で18年となった。彼の全てを語るには、それ相応の時間がいるだろうし、無論彼の過去を語ろうなど、彼の口からでない限り、語ることは無神経なことである。それほどにまで、彼の過去は大きくて重たいのだ。

 それらをまとめ、彼の現状を簡潔に表すと『心を病んだひきこもり高校生』となる。

 詳しく説明すると、『中学卒業後、高校に合格したは良いが、初日の入学式にしか顔を出さず、あとは家でゴロゴロ。それを2年と少し。』ってところだ。


 ひきこもった理由は、心に負ったとても深い傷。

 実際、ひきこもりを始めたのは15歳になってからおよそ二ヶ月後のことである。しかし、その頃のナイトはひきこもりと言うより病人であった。であるからして、彼の中でのひきこもりのカウントは、高校生からになっている。

 そして、そんな生活から他人と触れ合うことを忘れ、家族任せのダラダラ生活にひたり、いつの間にか再起不能にまで至った。その結果が今である。


 彼の唯一の特技は走ること。以前は陸上部に所属しており、100mで県大会に出場し、優勝してしまうほどだった。小学生の時から今まで、陸上をざっと5年程続けたにも関わらず、心を病んでしまったせいか、陸上の道をプツリと断ってしまった。しかし、陸上が嫌いになった訳ではないため、家でもできる基礎トレーニングは毎日欠かさず行っている。そのため、ガッチリとした体格を保っていた。


 少し体格の話が出たが、彼は別にゴリマッチョではない。いたって普通の筋肉質といったところだ。身長は日本男性の平均よりやや高め。陸上のせいか、脚はやや太い。また、目つきはもともと悪くはなかったが、ダラダラした生活を続けたせいで、目の下にクマができ、ドヨーンとした感じのやる気のなさそうな目である。瞳は紅色で大きい。


 言葉遣いはもともとザークのように丁寧だった。が、そんなことももう面倒になったのか、今となっては激しい威張り口調。元担任に向かって『テメェ』なんて言っちゃうんだから相当に。

 だが、それは相手が麓山だったからという可能性も捨てきれない。

 しかし、ここから読み取れる事は、ナイトの心が過去と比べてとても弱っているということである。



「そんで鏡に俺とそっくりのヤツ、か」


「え?何か言いました?」


「いや、何でも」



 正直自分の頭がおかしくなったんじゃないかと自問し、それに対して『イヤイヤ』と自答する。


 傍から見たら鏡に写る自分と話すおかしなヤツである。しかし、彼自身少し心は病んだが、今起こっている現象は実際に起こっている事実、であるからして彼の頭がおかしいということは否である。


 こちらの世界の人間にとっては、理解ができるレベルを軽く超えている話であった。しかし、ナイトは少し違う。なぜなら、異世界ファンタジーに憧れるゲーマーで、そして厨二病でもあるからである。だから、例えそんな話が飛び出してきても、彼にとっては疑いよりも憧れの方が勝るのである。そのため、初めてザークと出会った時、初めはオバケだと怖がったが、意外とあっさり心を開くことが出来たのだ。そこに自分の憧れの可能性を感じたから。


 ナイトはなんとなく察しがついていた。ザークという存在がオバケでないというのなら、これはゲームやラノベ展開でお決まりの異世界関係の何かではないかと。そして、ここまである程度話をしていてなんとも思っていなかったが、言葉が通じていた。普通異世界なら結構な異文化だから、言葉が通じないのも無理はない。でも通じてるって事は、



「ゲームの『イージーモード』、あるいはラノベでよくある『優しい初期設定』ってところか。まぁなんにせよありがてぇ。コミュ能力クソ落ちてんのに言葉通じないとかまじ死活問題だったわ」


「なんですか?その『いーじーなんとか』とか、『ラノベ』って」


「いや、こっちの話だ気にすんな」



 ナイトがブツブツと呟くのに対し、ザークが質問するのも無理のないことだが、ナイトは面倒くさそうにあしらった。そして、ザークは、



「あ、はぁ…」



 と、溜息をつきながら、彼の言葉に対する疑問を置き去りにした。

 そして、ナイトは話を変えようと思ったのか、これまでの話に節をつける。



「それは良しとして…」



 今までのことを振り返りすべてをまとめた後、彼は根本的な疑問について質問をする。



「お前は一体何者なんだ?」


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