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二人で一つの物語  作者: 雨白狐
第一章 縛りと影
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第一章14 『力の脅威』

 投稿遅れて申し訳ないです!

 少々宿題に手こずりました、本当にすみません。毎日投稿に復帰できるのはもしかするともうちょこっと後かも。


 戦いの後はいつでも疲れるものだ。たとえそれが軽い決闘だったとしても。否、軽くはなかったか。



「終わったとはいえ……ほっぺたマジでいてぇな。

火傷したかな……」


「あたいだってね、自分の最大魔法モロに食らってヘロヘロなんだからね!」



 そういう少女の顔はやはり真っ黒だ。


 戦いはナイトの勝利に終わっている。少女が己の負けを認めたから。



「まぁそれは良しとして……」



 少女は顔を拭きながら話し始めた。



「さっきあんたが言ってたこともっと詳しく教えて」



 敗北した少女は、約束した通りにナイトの言葉を信じようとしていた。だからこそ、彼の言葉の意味を追求しようとしたのだ。

 そんな少女の態度に、ナイトは『やっとわかってくれたか』と言わんばかりの表情を向けながら『ふぅ』とため息をついて話し始める。



「おまえがもう少しで死ぬ……って言ったけど、まだなんとかできるかもしれないんだよ」


「……だから…あたいはなんで死ぬの?」



 ナイトの答えは、少女の求めるそれとは異なったようで、ナイトと初めて会った頃のような不機嫌そうな表情になった。 

 その初めて『会った頃』というのはついさっきのことなのだが。



「……もうじき誘拐殺人事件が起きる。おまえはその事件の被害者の一人なんだ」


「……なんでそんなことがわかるの……って聞いてもやっぱりあたいの信じられないような理由なんだよね」


「まぁ……うん…」



 意外と物分かりがよかった。むしろ良すぎて怖いくらい。今までの態度からは考えられなかったから。

 しかし、そんな少女の態度はナイトにとっても都合がよかったためその疑問はあえて伏せる。


 と、そんな時、少女の口からその答えが話された。



「でも信じるって約束したからあたいあんたの言うこと信じるよ。だって普通理由もなくこんなとこ来てあたいなんか助けないはずだし」


「だろ?」



 少女は全てに納得した。いや、したようにふるまってくれたのかもしれない。それが、彼のことを信じるということが、彼との約束だったから。



「調子に乗らない」


「すみません……」



 少し注意された。

 ナイトと彼女の立場は、初めはナイトが上のように思えていたが、今の会話からもはやその立場は逆転している。

 ナイト自身謝ってしまうほどに。やはり男女で争っても結局最後は女が勝利してしまう。争いの結果がどうであれ。


 『まぁとにかく』と一言おいて、



「あたいのこと助けてくれてありがとうね!」


「お、おう!」



 初めて少女は素直な姿を見せた。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 少女との会話の末、見事和解することができた彼らは再び今の状況を確認し疑問に思うようで。



「ところでさ、この火の球どうすればいいの?」



 先ほど少女から奪い取った二つの火の球は、ふわふわと宙を漂っている。どうやら放っておいても消えることはない様だ。



「あたいの魔法……なのよね? 普通ならあたいだけで消せるんだけどなんかあんたのもとにあると操れないみたい。あんた自分で消せないの?」


「さっきからやってるけどよ……いまいちイメージがつかめねーんだよ。消すってどんな感じだ?」



 主要魔法を操ったことがないナイトにとって、それの扱い方などわかるはずもない。また、ザーク自身もその使い方を知らないらしいため今回に関しては完全にお手上げのようだ。



「そうね……あたいの場合は出したものをそのまま体に戻すっていうか……取り込むというか……そんな感じかな」


「そうか、ちょっとやってみる」



 アドバイスのもとそれを実行に移す。

 しかし、リアルというのはあまり思い通りにいかないものだ。



「アチッ! 火の球もろで顔面に食らっちまったぜ……いてえな」


「やっぱバカねあんたって。マジでウケる」


「るせぇ」



 一つの火の球を体内に取り込もうとしてそれを顔に近づけたところ、それは体内に取り込まれるどころか彼の顔を焼いた。その分火の球を一つ消すことには成功したが。

 どうやら彼は魔法を取り込めないようだ。



「……弱ったな……。これで消せても毎回消すためにダメージ受けなきゃいけないのもな……。オレはどうすればいいんだ? ぶっちゃけ一生このまんまか? どんな副作用だよ、クソゲーかよ」


「壁にぶつければ?」



 少女は最善策のようなことを口に出した。

 しかし、



「壁が傷つくじゃん」



 と、先ほどの登場からは考えられないような言葉を放った。少女は『こいつなに言ってんだ? あれだけぶっ壊しといてよく言うな』と思うのだった。



「バカすぎてそろそろあきれてきたわ」


「-----」



 言葉が出なかった。

 明らかすぎたことをはっきり言われて傷ついたのか、ナイトは無表情だ。

 そんな彼の姿を見た少女は『ふぅ』とため息をついてから話し出す。



「……それで……何か思いついたの?」


「一応……思いついたは思いついたんだが…」



 彼は何かを思いついた。

 だがあまり言いだそうとしない。



「なに?」


「魔法を『潰す』」



 彼はまた変わったことを言い出した。


 魔法をつぶすというのはおそらく何らかの方法でその火の球を消滅させるのだろうか。



「……どうやって?」


「こうやって」



 ナイトは残った火の球に手のひらを向けた。そして火の球をバリアが覆う。


 そして、ナイトがその手のひらを握りしめた瞬間、そのバリアは火の球とともに圧縮され、完全に手のひらが閉じたと思ったらそれらは消滅した。



「そういうことね。対敵用の補助魔法を自分の魔法に使ったってこと。まぁそもそもあたいの魔法なんだけどさ」


「バリアで魔法が弾けるのならこういう使い方もできるかなってな」



 その発想にはザークも驚いているようだ。口には出さなかったが、彼の表情は明らかにそれを連想させる。


 そして、事柄にけりがついたことをきっかけに、彼は全てをまとめて本当に伝えたかったことを改めて少女に念押しする。



「まぁともあれ、だ。さっきもいったけどもうじき事件が起きるかもしれないから十分に注意しておいてくれよ。この先一週間はできるだけ一人でいるのは避けろ」


「言われなくてもわかってるわよ。自分の身ぐらい自分で守るわ」



 少女は親指を立てながらはにかむ笑顔で言い放った。

 そんな少女の姿にナイトは『この子なら大丈夫だろう』と安心するのであった。



「んじゃあそろそろオレ行くわ。またどっかで会えたら会おう」


「約束だかんね! 絶対だよ! 今度は負けないんだから!」



 安心のもとナイトはそのまま立ち去ろうとする。

 もともと彼にとってここに寄ったのは本当に偶然だった。だからこそもともとの彼にとっては早く帰りたいという気持ちが強かったのだ。


 だが、去り際にナイトが口を開いた。



「そういえば名前聞いてなかったな。何て名前なんだ?」


「サクヤよ。サクヤ・オーティス。あんたは?」


「オレはシライ……いや、オザーク・ウルゲインだ。ザークって呼んでくれ」



 名前を名乗った。それも自分のではなくこの体の持ち主の名を。

 本当の名前を名乗りそうになったがもしそうしたら今後のザークに影響してくる、と考えたナイトは彼に対してちょっとした気遣いをしたのだ。

 だが、ザークはそんなことに気付くはずもない。


 少女はオザーク・ウルゲイン、とくにウルゲインのところを聞いてとても不思議そうな表情になり、それから首を少しかしげていた。しかし、少女はそのことについて何も言わなかったためナイトはそれをスル―した。


 そして、今度こそ、



「今度こそ本当にさよならだ。……バイバイ」


「……そうね……いろいろとありがとう」



 少女は素直な表情で言った。

 そして、『あと、』と前置きして、



「『目』は大切にね」



 と、今まで気づいていなかったと思っていたことを口に出した。だからナイトも負けじと、



「おまえも学校くらいちゃんと行けよな!」



 と、少女が隠していたであろうことを堂々と言い放った。その言葉にはやはり『お前が言うな』とツッコミたくなってしまうが。


 そして彼は手を振りながら飛び上がり、とうとう見えなくなった。その時少女は『これでサヨナラか…』と少し寂しそうに思うのである。


 そして、完全に二人が別れた後、少女が口を開く。



「やっぱりあたい……あいつとどこかで……」



 少女の言葉はとても意味深だった。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 少女との一幕を終え、ナイトはまた空中を突っ走っていた。

 何も考えることなくそのまま家へと向かうナイトにザークは話しかけた。



『そういえばナイトさん……? さっき魔法をつぶしたときなんで少しためらっていたんですか?』


「やっぱりおまえにはわかったか」



 ナイトはそれを予想していたかのように言った。

 そして、



「あの力は……正直怖い」



 ナイトから出た言葉は『怖い』だった。

 それはなぜかというと、次に彼が話す中にある。



『え? なんでですか?』


「ふつうあの力は補助魔法によるものだから魔法にしか効果はないだろ? けどこの体だったらどうだ、魔法以外にでも作用するってことだろ。仮にあれを人間を対象にやってみろ……。自分の力が恐ろしい…」



 持ち合わせてしまった力がいかに協力で脅威的か、そして危険か、ということをあの出来事を通して改めて痛感したようだ。



『それは少し考えすぎですよ、ナイトさん』



 そんなナイトの言葉に対してザークは軽く考えていた。

 だから、ナイトの言う真実を証明するためにナイトはとある実験をした。



「そういうと思ってさっき石を拾っておいたんだ」


『石……ですか』



 ナイトはポケットから石を取り出してそれを真上に放り投げた。そして、



 バコ! ボロボロォ……。


 ナイトが拳を握ると同時に石は簡単に粉々になった。



「ほらな」


『……………』



 そんな脅威的な力を前にして、ザークは無言になってしまった。



 与えられた力はまさにチート級の力だ。思い通りに物も操れるし、全てを弾き粉砕することだって可能だ。

 しかし、そんな力だからこそ忘れてはならない。


 少しでも使い方を誤れば、絶望すら生み出してしまうということを。



 事件発生まで、およそ後2日。


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