第七話(後編) 体育祭
新作の小説やらで遅くなってしまいました。ごめんなさい。
こころコ 第七話(後編) 体育祭
「どーして、短パンなんですの?!」
アリスが開会式が終わったと同時に不満をぶつけた。
「短パンのどこが悪いんだ?」
八志智が呆れながら聞いた。
「だって先々代の御主人様の頃はブルマでしたわ!!なのにこんな短パンではわたくしのうっつくしぃーーー脚が見えないではありませんの!!校長に抗議してやりますわ!!」
アリスはすごい不機嫌な顔をしている。
「そんなくだらないことで抗議すんなよ。つか2年生の最初の種目の玉入れ始まるぞ。そろそろビスに変われよ。」
八志智が忠告した。
「玉入れなら、わたくし得意ですわ!だから変わる必要ございませんわ!」
アリスが自身満々に言った。
「・・・そいえば、わたくしたちは何組ですの?」
アリスが初歩的な質問をした。
「2年A組!間違えて他の組のところに玉入れんなよ!!」
八志智が忠告した。
【玉入れに出場される2年生の女子はすみやかに入場門に並んでください。】
スピーカーから放送された。
「まあ、せいぜい、華麗なわたくしの姿を見ていてくださいませ。オーホッホッホッ!!」
また高笑いをして、アリスは入場門の方に向かっていった。
ポン ポン ポン
アリスの言ったとおり、アリスの投げた玉は面白いくらいにかごの中に入っていく。
「わたくしの玉は百発百中ですわ!オーホッホッホッ!!」
笑いながら投げている。
「あいつほんとに得意だったんだな。」
八志智と宗助はアリスのことを少しだけみなおした。
【ピピーーーッ!!玉を投げるのを終了してくだい。・・・・それでは数えます。1、2、3、4・・・・・・・・・・41,42,43・・・・・ただいまの勝負、一位はA組!!】
「イエーーーイ!!」
いろいろなところから喜ぶ声が聞こえた。
「次の綱引きも騎馬戦もわたくしが勝ってみせますわ!!」
アリスからはすさまじいオーラが見えている。
【ここで、1時間の昼休憩を挟みます。生徒の皆さんは時間厳守を守って昼食を食べてください。】
「ってことで天気のいい外でみんなで食べましょう!!」
そう言うと奈留はアリスと八志智、宗助、ぬいぐるみのままのビスを連れて校舎と校庭の間にある芝生に行った。
「今日、お弁当、アリスちゃんだっけ?作って来たんでしょ!」
奈留がワクワクしながらアリスに聞いた。
「ええ、作って来ましたわ!!初めて和食に挑戦してみましたが、料理上手のわたくしにはこんなの朝飯前でしたわ!!オーホッホッホッ!」
アリスはそう言ってお弁当の蓋を開けた。
「うっわぁーー!!スゴイじゃない!!」
奈留が興奮している。
「たしかにすげぇな・・・。」
宗助も感心している。
「フワッフワッの玉子焼きだぁーーいっただっきまーす!!おっいしーーーい!!」
奈留がつまみ食いした。
「でも、料理だけじゃなく、玉入れも綱引きもとくいだったんだな。・・・特に騎馬戦なんかすげぇスピードで鉢巻取りまくっておまえの騎馬が圧勝だったよな。」
八志智が改めて感心した。
「そりゃ、そうだろ。もともとこいつは騎士だったらしいし・・・。」
ぬいぐるみのままのビスが言った。
「え?!騎士ってあの王様を守るやつだろ?」
宗助が耳を疑った。
「ええ、しておりましたわ。だから、もともとわたくしは人間ですわ・・・。」
アリスにさっきまでの声の張りがない。
「やっと見つけた!!あんたたち何のん気にお弁当なんて食べてんのよ!!」
エリーザがやって来た。どうやら今日は私服のようだ。
「うわっ!なんて可愛らしい私服!カメラ持ってくればよかった〜。」
奈留が後悔している。
「うっさいわね!今から式服になるからいいの・・・・・グゥ〜〜〜〜〜」
エリーザのお腹が鳴った。
「エリーザもなんか食うか?アリスのまあまあ食えると思うぞ!」
ビスが手を振りながら言った。
「失礼ですわね!!みんなおいしいって言ってくれてますわ!ぬいぐるみで食べれないからってそんなこといわないでくださる?!」
アリスが怒っている。
「・・・・・ワサビロール・・・・ボソッ」
エリーザが小言で何か言った。
「は??」
みんな聞き取れなかったようだ。
「ワサビローーール!!!!それ食べさしてくれたら今回は何もせずに退散してあげるわよ!!」
エリーザが大声で言った。
「ワサビロール?・・・なんだそれ??」
ビスが頭を傾けた。
「わさび巻きよ!わ・さ・び・巻・き!!」
エリーザいちいち叫んで教えた。
「んなもんあるわけ・・・・」
「ありますわよ。これでしょう・・・。」
そう言うとアリスはエリーザにわさび巻きを手渡した。
「ずっと前に大好物だって言ってましたものね。」
アリスがニコッと笑った。
「覚えてたんだ・・・。」
エリーザが照れくさそうに言った。
「ってことでこの借りはいつか返してもらいますわよ!!オーホッホッホッ!!!」
さっきとは全然違う人のようにエリーザは甲高い声で笑っている。
「やっぱり、そういう裏があったのね!!そーゆーひねくれた根性どうにかしたほうがいいわよ!!」
エリーザは、もらったわさび巻きを握りつぶすくらい強く握った。
「あら、あなたも野性的本能丸出しのところ、どうにかした方が良いんじゃなくって?!」
アリスの頭に怒りマークが出ている。
「な゛んでずっでーー!」
エリーザから火花が散っている。
「そーゆーところが野性的だと言っているんですわ!」
アリスも負けじと火花を散らせた。
「まあ、ケンカはその辺にして・・・。そういえば、最後の種目の選抜リレーってアリスが出るの?ビスが出るの?」
奈留がケンカから話しを逸らした。
「わたくしは、短距離は平気ですけど、リレーとなると・・・。」
アリスはあまり自身がないらしい。
「・・・となると、やっぱり、俺様だろう!!」
ビスが短い腕をなんとか曲げて、ガッツポーズをとっている。
「ってことでそろそろその身体返してもらうぜ!」
ビスはぬいぐるみの身体をアリスのおでこにくっつけた。
シュ・・・ン
アリスの蒼い瞳からビスの緑の瞳に変わった。
「うっしゃーーー!!やっぱりこっちの身体の方が身動き楽だーーー。うし!選抜リレーがんばるぜ!!」
腕をぐるぐる回しながらビスが言った。
「俺様の出番はアンカーみたいだな!!うっしゃー!一番良いポジションじゃねぇか!!」
やる気満々だ。
「学校では女の子の設定だからそのしゃべり方は止めた方がいいんじゃない?」
苦笑いで奈留が言った。
「ところで、何週走るんだ?」
ふと、我に返り、ビスが聞いた。
「女子は半周だけど、アンカーだから一周だったはず・・・。」
八志智が教える。
「一周?みじけぇな。ま、圧勝してやらぁ!」
アリスと同じでビスも自信満々だ。
「・・・って言ってもその前に部活リレーに出てもらうから。もちろん、コスプレして!!」
いつの間にか、奈留の手にはピンクのチアガールの衣装があった。
「・・・・・・!!」
ビスがものすごく暗い顔をした。
【これから、2年生による選抜リレー女子の部を開始します。第一走者、第二走者の方は位置についてください。】
「ガンバレーーーー!!」 「負けんなよーーー!!」
いろんな人への応援が聞こえる。
「位置について よーーーい」
パアァ・・・ンッ!!
リレーがついに始まってしまった。
【ただいま、スタートしました!どうやらトップはA組です!そして、C組、E組、D組、B組の順に団子状に並んでいます。】
「へぇ・・・結構うちのクラス強いじゃねぇ・・・・強いわね。」
ビスは周りの目を気にして、奈留に言われたとおり、女らしい言葉を使った。
【バトンは第一走者から第二走者に渡されました!トップは変わらず、A組です!!それをC組、E組がすぐ後で追いかけます!!】
ゴソゴソ ゴソゴソ
「なにやってんだ、菊池?」
奈留が校舎から何か持ってきたらしい。
【バトンが第二走者から第三走者に渡せれます。A組とC組との間が短くなってきました!!】
「このカメラで決定的瞬間を収めるのよ!連射も可能よ!!」
満面の笑みで奈留はカメラを構えた。
「あっそう・・・。」
八志智と宗助はスルーした。
【第三走者から第四走者にバトンタッチ!!A組今のところ逃げ切っています。】
「やっと次か・・・こんなのらくしょ・・・・」
ギロッ!!
他の組のアンカーたちがビスを鋭い眼つきで睨んだ。
「な、なんでもないわ、なんでも!!」
(女ってこんなに恐ろしい生き物だったとは!!)
ビスは女の恐ろしさに気付いた。
(そろそろか・・・。)
ビスは走り始めた。
パンッ
ビスにバトンが渡った。
「さすがビスだな・・・これじゃ心配いらねぇ・・・・」
八志智が安心した瞬間だった。
カランッ
ビスはバトンを落としてしまった。
(やべっ!!)
ビスはすぐに拾い上げたがその間にC組に追い抜かれてしまった。
【A組がバトンを落としました!どうやら、右手に持ち帰る際に滑ってしまったようです!!C組がトップです!しかもA組とはかなりの間が開いています!!】
「なにやってんだよ!あいつ!!どうやっても勝ち目ねぇ・・・」
みんなからブーイングが飛び交ったとき・・・
ダダダダダダダダッ
「くぉんのヤンロォーーーー!!なめやがって!!こちとらマッハで走ってやらぁーーーーー!!!!」
ビスがすごい速さと剣幕で追いついてきた。腕を直角に曲げ、ものすごい速さで振っている。
ぽかーーん・・・ ヒソヒソ・・・
「あれってほんとに永山さん?」 「いつもとキャラ違うくない?」 「てゆかあれが本性なんじゃ・・・。」
一瞬、みんな開いた口が塞がらなかったが、その後、ヒソヒソ話があちこちから聞こえた。
パアァ・・・ンッ!!
みんながひそひそ話しをしている間に、いつの間にかビスがトップでゴールしていた。
「・・・・え、うそ?!シャッター押し忘れた!!」
奈留が折角持ってきたカメラは決定的瞬間を撮り逃してしまった。
「・・・・にしても選抜リレー、あっけなく終わっちゃったわね!」
閉会式で奈留が小声で話した。
「ん・・・あ、そうだな・・・・。」
八志智が簡単に返事する。
(・・・にしても、さっきからビスの様子がおかしい・・・。なんか考え事してるのか?)
八志智はチラリとビスの方を見た。
すると、ビスはジッと左手を見ていた。
第八話に続く・・・