第五話 課題
こころコ 第五話 宿題
「夏だ!蝉だ!蝉取りだ!!ってことで蝉取りに行こうゼ!!」
ビスははしゃぎ回っている。
「外に出かけてる場合じゃねぇだろ。」
八志智は冷静に言った。
「んじゃ、何すりゃいいんだ?・・・・・ん?」
ビスがガラス戸から外を見た。外には引越し用のトラックが止まっていた。
「あぁ・・・今日、隣のアパートに越してくる人がいるらしい。」
八志智がチラッと外を見た。
「ふ〜ん・・・おまえ挨拶に行かなくていいのか?それとも俺様が行こうか?」
ビスはどうしても出かけたいようだ。
「相手から挨拶しに来るだろ。それに引越し早々に行くと迷惑だろ。・・・・・それより、おまえ・・・・・夏休みの課題どれくらいやったんだ?学校始まるまであと一週間もないぞ。」
「・・・・・・・・・。さて、部屋にでも行こうかな。」
ガシッ
「ごまかすな。」
八志智がビスの服を掴み、部屋に向かうのを阻止した。
「・・・・英語はアヴィスが得意だからやったし、数学は俺様が大得意だから終わったんだ・・・世界史のレポートもやったし、音楽の課題も終わったし・・・・あと理科と古典と地理ぐらいかな?」
ビスが悩みながら答えた。
「理科と古典と地理って一番問題数多いやつじゃないか!おまえそんなんじゃ課題終わんねぇぞ。」
八志智が呆れ返っている。
ピロピロロロ〜
八志智の携帯電話が鳴っている。奈留からの着信だ。
「なんだ?・・・・・勉強会?・・・・まぁいいけど、菊池ん家行けばいいんだな。分かりやした。んじゃ・・・。」
八志智は電話を済ませるとビスの方を向いた。
「菊池が家で勉強会を開くんだと・・・。だから俺たちも来いってさ。支度してさっさと行くぞ!」
そう言うと八志智はさっきまでやっていた課題のプリント等をリュックに入れた。
「奈留ん家かぁ・・・あいつ、いつもハイテンションだから精神的に疲れんだよなぁ・・・ハァ・・・。」
ビスがため息をついている。
「課題をやるいい機会だろ?!いいからさっさと支度しろ!!」
ビスはぶつくさ言いながら支度をした。
ピンポーン♪ ガチャッ
「オッハヨ−−−!!」
チャイムを鳴らすといつもながらのハイテンションで奈留がドアを開けた。
「さぁ、入った入った!時間ないんだから!」
奈留はすごい慌てている。
リビングに入ると机にたくさんの課題の問題集とプリントが並んでいた。
「あれ?漫研の小井川さんとオタク君は?」
八志智が部屋を見渡しながら言った。
「あぁ・・・今日は一年生抜きの勉強会なの!・・・だって・・・さすがに先輩が課題を全然やってないとこ見せちゃいけないでしょ!!」
「・・・・・・・・・・・・。」
周りの雲行きが怪しくなってきた。
「・・・まさか菊池、課題マジで全然やってねぇとか言うんじゃないだろなぁ・・・?」
八志智が眉毛をピクピク動かしながら苦笑いをしている。
「まっさかぁ!!・・・・ただ英語と数学と世界史と理科と古典と地理をやってないだけだよぉ!!」
奈留がへらへらと笑って言った。
「全部じゃねぇか!!!」
八志智がすごい恐い顔で奈留を見た。
「違うよ!芸術の課題は終わってるもの。だから全部じゃないよ!!」
奈留がくだらないツッコミを入れた。
「そんなのどーでもいい!!俺は写させてやんないからな!!」
すると、奈留が怪しい笑みをした。
「フッフッフッ・・・私も永山君を当てにはしてないわ。ってことで今日は我が高校の成績トップナンバーONEの鈴ちゃんに来てもらったわ!」
カチャッ
すると、鈴が部屋に入ってきた。いつも通りの無表情だ。
「じゃぁ、早速教えてもらいながら勉強会を始めYO−−−!!」
かきかきかきかきかき けしけし カチカチカチカチ・・・
し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
みんな黙々と課題をしている。そのせいか、部屋にはシャー芯の擦れていく音と出す音、消しゴムを使う音しか聞こえない。
「ね、ねぇ、おやつでも食べない?」
その静けさに耐え切れなかったのか、奈留が言いづらそうに言った。
「課題やってから食べる。」
「甘いものは嫌いだ。」
「お構いなく。」
八志智、ビス、鈴が順番に断った。
し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
またもや部屋には静けさが漂った。
カクカク・・・・・ガクンッ
ビスは眠いのか、首が前に倒れたり、後ろに倒れたりしている。
(ねみぃ・・・そうだ!!こんなことはアヴィスに任せよ・・・・・・・・・・・・ってアヴィスの反応がねぇ!!あいつも寝てんのか?!・・・・・・・・ねむ・・・・・つか寝ててもバレねぇだろ・・・寝ちゃお。」
ビスはとうとう眠ってしまった。
(ふぁ〜〜。よく寝た。にしても変な夢見たな・・・コンビ二でカレーまん頼んでんのに角煮まんが出てくんだよ。マジわけ分かんなかったな・・あの夢。・・・・あれ?俺様古典なんてやったっけ?いや、やった覚えねぇし、八志智はぜってぇこういうのやってくれねぇから鈴がやってくれたのか??)
ビスがちらりと鈴の方を見た。
「・・・・。」
鈴はいつも通り冷静に予習をやっている。
(まぁ何はともあれ課題が済んだんだしいいか・・・。)
「うぉーーーーーーーーーしっ!!課題おっわりーーーーーーーー!!ってことでお祝いにケンタへレッツゴーーーーーーーーーーーー!!!」
奈留が拳を突き上げながら叫んだ。
「ゴーーーーーーー!!」
ビスもつられて言った。
「帰りたいんだが・・・。」
八志智がそういうと奈留とビスは八志智を引きずりながらケンタまで連れて行くのだった。
第六話に続く・・・