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第十二・五話 書庫

  こころコ 第十二・五話 書庫



 『あれ?アリスは?』

夢の中で目を覚ますとアリスの姿がなかった。

 『さあ?』

アヴィスが目をこすりながら言う。

 『一人になりたいんだろう・・・・して、今日は何で遊ぶ気じゃ?』

椿が言う。

 『アヴィスえほんよみた〜い!!』

アヴィスが手を上げていった。

 『絵本なら地下に書庫があったな。ってことで書庫にレッツゴー!!』

ビスが元気よく言った。



 『くものすハッケ〜ン!!』

アヴィスが蜘蛛の巣を手に取り、ビスに近づけた。

 『アヴィス、本読みに来たんだろ?』

ビスが呆れている。

 『そだった!!ん?』

アヴィスの目に一冊の本が光って見えた。

 『このほん、きれ〜〜!!』

アヴィスはその本を手に取った。背表紙にも表紙にもタイトルは示されていない。

 『これ何語で書かれてんだ?日本語でも英語でもねえぞ!!』

ビスがパラパラとページを捲った。

 『貸せ、わらわが読む。』

椿が本を取り上げた。

 『おまえ、読めんのか?』

ビスが尋ねた。

 『わらわに不可能などと言う言葉は存在せぬ。読むぞ。



  むかしむかし あるところにひとりの おんなのひと がいました。


 おんなのひとは 騎士になり 功績を認められ 王子の目に 留まりました。


  おんなのひとは 王子に好かれ お姫さまになりました。』



 『なんかものすごく省略してある話だな・・・。』

ビスが言った。

 『しー。しずかにしないときこえないよ。』

アヴィスが注意した。



 『 お姫さまには 一つの命 がやどりました。

 

 そのため お城から遠くはなれた お屋敷に 住むことにしました。


  生まれたのは おんなのこ でした。


 お姫さまは おんなのこを かわいがっていました。


  おんなのこは よく 鏡の前で 操り人形を 踊らさせたり


 お庭の 花畑で 花のかんむりを 作ったり していました。




  おんなのこが 成長してきたので お姫さまは おんなのこを つれて


 お城へ 帰ることに しました。


 お城へ 帰ると 近くの お屋敷で 仮面舞踏会を していました。


 お姫さまは ひさびさに パーティーへ 行きたくなりました。


  おんなのこを 寝かせ だれにも 気付かれぬよう こっそりと お城を 抜け出しました。


 


  お姫さまは 仮面をかぶり パーティー会場へ入りました。


 そこには たくさんの貴族が 楽しそうにおしゃべりしたり 踊っていました。


 お姫さまも 曲に合わせて たくさんの男の人と踊りました。




  踊りにつかれたお姫さまは バルコニーへ向かった。


 バルコニーは涼しく 心地よい風が吹いていた。


 そこへ 一人の貴婦人がやってきた。


 手すりにすがっているお姫さまに近づいてきた。


 すると お姫さまの肩を


 ドンッ


 と 勢いよく押した。


 お姫さまは バルコニーから落ちた。


 落ちる直前 お姫さまは 貴婦人の仮面をとった。


 貴婦人はお姫さまの親友だった。


 お姫さまの目には 涙があふれました。


 


  レンガの地面にたたきつけられる前に お姫さまは 願った。


 おんなのこを 守りたい と・・・。


 そのときだった。 お姫さまには 赤いツバサが見えた。


 ふと お姫さまが目を開けると 何もない 何も見えない 世界が広がっていた。


 ただ 赤いツバサの 大きな鳥だけが その世界にいた。


 お姫さまは 大きな鳥に言った。


 生き返りたい と。


 大きな鳥が言う。


 「それは無理だ。しかし、人間にしてあげることはできる。しかし、それには対価が必要だ。しかし、おまえは死者。あまり価値のない存在だ。それに、記憶をもらってしまったら守りたい“モノ”も守れなくなる。」


 大きな鳥は お姫さまが生き返りたい理由を知っていた。


 お姫さまは 身体と名前という対価を支払った。


 けれども 大きな鳥が言うように 死者の“モノ”にはあまり価値がない。


 「おまえが人間になるための対価の残りを支払う“モノ”が来たる“トキ”をしばし待つが良い。」


 大きな鳥がツバサを広げるとお姫さまは眠ってしまった。




  お姫さまが目を覚ますと何年もの月日が過ぎていた。


 お姫さまは お城をこっそりとのぞきに行った。


 お城からはよろこびの鐘が鳴り響いていた。


 「二人目のおとこのこさまがうまれたぞ!」


 「また生まれたの?勘弁してちょうだい。またそのせいで税が高くなるかもしれないわ。あのお妃さまになってからどんどん税が高くなって・・・。」


「わたしは前のお妃さまの方がよかったんだけどねぇ・・・。」


 「うわさじゃ 今のお妃さまが王子を奪うために前のお妃さまを・・・。」


 「今のお妃さまならしそうなことね。」


 城下町からも噂話の声が聞こえてくる。


 お城の大広間に行くと 王子と女の人が椅子に座り 貴族や新聞記者たちに話をしていた。


 女の人の胸には 赤ちゃんを抱いていた。


 王子の足元には 5,6歳くらいのおとこのこが指をしゃぶって王子のすそを掴んでいた。


 お姫さまは 王子が再婚したことに気付きたくなかったが気付いてしまった。


 恐る恐る 王子の隣に座っている女の人を見た。


 すると あの親友だった。


 お姫さまは 悲しみのあまり 倒れこんだ。

 



  さわわ・・・


 風が頬を伝った。 それとともに かすかな花の香りがした。


 あのこはどこだろう?


 お姫さまは おんなのこを探すため 城中を歩き回った。


 思い出のいっぱいつまったお屋敷も探した。


 けれど 見つけることはできなかった。




  お姫さまは 大きな鳥のところへ帰った。


 すると “モノ”と“モノ”が大きな鳥に願い事をしていた。


 「ご主人様が亡くなった。だからココに来た。」


 「ご主人様といっしょの人間になりたいの。」


 “モノ”たちもお姫さまといっしょで人間になりたいらしい。


 「なぜ人間になりたい?」


 大きな鳥が質問した。


 「ご主人様はよく悲しそうな顔をしてた。けど、お母様といっしょのときはものすごくうれしそうに笑った。その笑顔を見るとなぜかは分かんないけど暖かくなった。たぶん、癒されたんだと思う。だから、俺様も何でもいい、どんな“モノ”でもいいから癒してあげたい。人間になればそれができると思った。・・・・理由はそれだけ。」


 「よろしい。しかし、対価は支払ってもらうぞ。」


 “モノ”たちはキオクという対価を支払った。


 「おまえたちはまだ作られて間もない“モノ”。つまりこの対価はあまり価値のあるものではない。そこで、三人で一つの“身体”を授けよう。」


 「三人?」


 “モノ”たちは聞き返した。


 「もう一人はそこにいる“モノ”だ。」


 大きな鳥は お姫さまの方を示した。


 「それでは おまえたちには この“身体”を与えよう。 “身体”の主から身体をもらう対価として黄泉の世界へ行かせた。キオクを失った“モノ”には分からないだろうが、おまえは見覚えのある“身体”かもしれないな。」


 その身体はお姫さまが一番愛して 何よりも一番守りたかった人の“身体”だった。


 お姫さまの目から大粒の涙が溢れた。


 「毒殺され、花畑に埋められていた。」


 お姫さまは “身体”をギュッと抱き寄せた。


 “身体”の主からおまえに与えてほしいと言っていた。名前と共に・・・。

 つまり、おまえの今日からこの子の名前を名乗りなさい。

 それと、今度は自分のために、自分のしたいことをして生きてほしい・・・との伝言だ。」


 大きな鳥は そう言うと“身体”に“モノ”たちを宿らせ 命を吹き込んだ。


 お姫さまは誓った。


 自分に嘘をつかないこと 自分を愛し 自分も愛する人と結婚すること 


 そして 今度こそは 愛する人を守り抜くことを・・・

 



 本にはここまでしか書かれておらぬ。後は全て白紙じゃ。』

椿が本を閉じた。

 『えっぐ・・・・えっぐ・・・』

アヴィスとビスが泣いていた。

 『なにを泣いているのだ?』

椿が冷めた視線で見ている。

 『だってぇ・・・うわああぁぁぁん』

いきおいよく泣き出した。

 『呆れた童たちだ・・・。さて、アリスはどこへ行ったのやら・・・。』



屋敷の庭の花畑にぽつんとアリスが立っていた。


 『今日が命日よね・・・。

 だから、アリス・・・会いにきたよ。』


アリスは笑った。目には大粒の涙を浮かばせて。

目の前には他の場所よりもたくさんの花が咲いていた。



 第十三話に続く・・・



長い文章になってしまい、すいませんでした。

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