表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こころコ  作者: Fill
14/17

第十一話 二月といえば

   こころコ 第十一話 二月といえば



 バコッ!!

 「あいたっ!」

兎のような垂れ耳のぬいぐるみの眼から、じわっと涙が零れた。どうやらこのぬいぐるみはアヴィスらしい。

 「ちゃんと温度計見ないとチョコがまずくなるでしょ!」

丸めた雑誌を振り回しながら、黒豚のぬいぐるみが怒った。このぬいぐるみがアリスのようだ。

 「だってぇ〜〜・・・・ヒックヒック」

アヴィスはとうとう泣き出してしまった。

 「そこ、泣かない!あとそこ!!ちゃんとかき混ぜる!!身体使ってるのはあなたなんだから、その分、ちゃんと作りなさい!」

アリスは怒鳴り散らした。

 「なんでわらわがこのような事を・・・・それにどうしてこの童まで?」

椿はちらっと横を見た。

 「あたしだって来たくなかったわよ!!けど、アリスが無理やり・・・・。」

エリーザが大声で言う。

 「なんてったって、今日はバレンタインですもの・・・・・にしても日本人って変わってるわよね。チョコレートあげるなんて・・・。」

アリスがチョコを刻みながら言った。

 「お菓子会社の思惑だからだろう。」

椿が言った。

 「んじゃあ、チョコじゃなくてもよくない?」

エリーザが言う。

 「お饅頭がいいな〜♪」

アヴィスが泣き止んでいる。

 「それは手作りするのが難しいと思うが・・・。」

 「ええっ!!日本人って全員饅頭手作りするんじゃないの?!」

 「そなた、馬鹿だろ。」

エリーザが衝撃を受けている。

 「お餅あげるとかはどうかしら?あれならまだ作るのまだできそうですし。」

 「正月か?!それに華がないだろ。」

 「・・・・・。やっぱりバレンタインにチョコを考えた人は天才ですわね。」

 「あたしは始めから頭いい人だと思ってたわよ。」

アリスとエリーザが妙なところで張り合っている。



 「ビスーー!どうした?」

八志智が廊下で馬のぬいぐるみを見つけた。そのぬいぐるみがビスのようだ。

 「今日は男はキッチンに入っちゃいけないんだとさ。でも、今、椿が身体使ってるから変なことしないようにこっそり見張ってる。」

ビスは廊下から、リビング越しにキッチンを見ている。

 「椿って死神のことか?」

 「そ、アヴィスが名付けた。さすがアヴィス!ネーミングセンスは俺様の次にいいゼ!」

ビスは首をコクコクと縦に振った。



 「できましたわ〜〜〜!!大きいのが一つと小さいのが三つ、合わせて四つ・・・・・あら?・・・御主人様、ビス、宗助、勇・・・・あと一人いたような・・・・オタクっぽい子だったような・・・まあ、それだけ影の薄い子だからあげなくてもいいですわね!」

アリスは三夫のことを忘れていた。

 「ハァー・・・やっと帰れる・・。」

エリーザは疲れきっている。

 「おつかれさま〜。でもたのしかったね♪」

アヴィスはぬいぐるみをチョコだらけにして言った。

 「どこが?!ぜんっぜん楽しくない!てゆかあんたチョコ付きすぎ!!ちゃんと洗わないと染みになるわよ!!!」

そう言うと、エリーザは翼を羽ばたかせ、窓から去っていった。



 「大きいのは俺様のかな?それとも勇か?」

 (たぶん西園寺の方だと思う・・・。)

ビスと八志智は大きいチョコが気になるようだ。


 「それじゃ渡しに行きますわよー!!」

アリスがそう言ってぬいぐるみのまま玄関に向かいだした。もちろん、アヴィスと椿も一緒だ。

 「やばい!こっち来る!」

ビスと八志智は慌てて階段に上り、二階に隠れた。



 「宗助に渡してきましたわ。そしたら、「なんでぬいぐるみのまま?!」って突っ込まれましたわ。ところで、アヴィスはちゃんと勇に渡せた?」

アリスとアヴィスは家に帰ってきた。まだアリスはぬいぐるみのままだ。

 「うん、わたせたよ〜♪ツバキが身体つかわせてくれたから、天使ってことばれてないよ〜♪」

 「いや、それ元々わたくしたちの身体ですわよ。」

アリスが突っ込んだ。

 「あと渡すは、御主人様とビスだけですわね。どこにいらっしゃるのかしら?」

アリスがキョロキョロと家の中を見渡した。

 「2かいにいるのかも・・・。」

トコトコトコ・・・

アヴィスとアリスは階段を上っていった。



 「スゥ・・・スゥ・・・スゥー・・・。」

二階を上がったすぐの廊下でビスと八志智は眠っていた。

 「どうしてこんなところで寝てるのかしら?とりあえず、持ち運べそうにないから毛布か何か持ってきますわ。」

アリスは部屋に入っていった。

 「チョコ・・・・・・・・ココおいとくね♪」

アヴィスはそっと二人のそばにチョコを置いた。

 『ヤシチへ いつもありがとう!!』

大きなチョコにはそう書かれていた。



 「次のターゲットはアレ?」

 「ソウ、アレ。シバラク 監視 シヨウ。」

夕日に照らされた二つの細長い人影があった。



 第十二話に続く・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ