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第九話 クリスマス

    こころコ 第九話 クリスマス



 「メリークリスマス!!イサム〜、きたよぉ〜!」

サンタ服のような白と赤のドレスを身に纏い、アヴィスが言った。漫研部員全員も一緒に来ている。

 (この間の文化祭のときにアヴィスと西園寺勇とかいうやつは電話番号を交換したらしい。それでこの前の日曜日・・・・・

  


 「うん、そうそう・・・・・そうなんだぁ!・・・・」

 「アヴィスちゃん誰と電話してんの?・・・・バリボリ・・・」

奈留が遊びにきて、煎餅を食べながら聞いた。

 「ああ、この前の西園寺ってやつ。・・・ズズッ」

お茶をすすりながら八志智が答えた。

 「ふーん・・・・・バリッ」

煎餅を貪りながら奈留はアヴィスの方をじーーーーーっと見た。

 「どうかしたか?」

八志智が聞いた。

 「え、あ、ちょっとね。ケータイより受話器の方が萌えるなぁっと!コードのクルクル具合が・・・・」

 「さっさと帰れ。」

八志智が冷静にツッコミを入れた。

カチャンッ・・・

 「ヤシチーーー!!イサムのがくえんでクリスマスパーティーってゆーのやるんだって!!!」

電話を切って興奮しながらアヴィスが八志智に後ろから抱きついた。

 「アヴィス、離れろ!」

顔を赤くして八志智が言った。

 「いこうよー!!クリスマスパーティー!」

八志智の背中を揺らしながらアヴィスが言った。

 「わかった!行くから離れろ!」

八志智の顔は林檎のように真っ赤になっていた。



なんてことがあって来てみたけど・・・)

八志智はチラッとアヴィスの方を見た。

 (あいつ、西園寺と楽しそうに話してんなぁ・・・これ、どうしようかなぁ・・・。)

 「あら、その左手に持っている可愛らしい箱はなんですの?」

黒猫・・・ではなく黒豚のぬいぐるみ姿のアリスが八志智の左手を見た。

 「まさか、アヴィスへのプレゼントかしら?」

アリスがクスリと笑った。

 「ちが!・・・・そうだけど・・・。」

八志智はチラッと勇の方を見た。

 「・・・・・他人なんて関係ありませんわ!

ところで、それはサンタとして渡すんですの?それとも八志智として渡すんですの?」

アリスが聞いた。

 「うるさいな!どっちでもいいだろ!!」

そう言うと八志智はアヴィスの方へズカズカと歩いていった。

 「アヴィス、ちょっと来い。」

アヴィスの右手首をガシッと掴むと中庭へ出て行ってしまった。

 「へぇ〜。御主人様も結構大胆ですわね。」

アリスがまたクスリと笑った。

 「アリス、ちょっと話が・・・。」

アリスが振り返ると、ぬいぐるみ姿のビスがいた。

 「あなたもぬいぐるみの格好してるんだ。」

アリスが少し驚いた。

 「今日くらいアヴィス一人に身体使わせた方がいいだろ。クリスマスなんだから。」

ビスが腕を組みながら言った。

 「へぇ〜。あなたも少しは空気読めるんですのね!」

アリスがビックリしている。

 「空気くらい俺様にも読める!!・・・・そんなことより、アリスは気付いてるんだろ・・・?」

ビスが少し暗い顔をした。

 「・・・・・左眼のことでしょ。」

アリスが真剣な顔をした。

 「いつから知ってた・・・?」

 「あの子が入ってきたときから・・・つまり契約を交わしたときからですわ。」

 「なんでそのとき言わなかったんだ?」

 「言ってもどうしようもできないと思ったからですわ。」

 「・・・・・どうりで対価が合わないはずだ。普通なら、交通事故を救っただけなら左眼の“力”で契約が済むだけだったのに・・・・・・でもあいつの左眼の“力”の方が価値のあるものだった。だから俺様たちの契約期間が延びた・・・。」

 「左眼の“力”の方が価値が高いのは当然よ。何故ならあの子の“力”と魂が入っていたんですもの。」

 「・・・・・・。」

 「・・・・・・。」

二人とも沈黙してしまった。

 「・・・・・・・わたくしたちではもう抑えられませんわ・・・。」

 「・・・・せめて今日、目覚めないことを祈るか・・・。」

二人は窓越しに星空を見上げた。



 「ヤシチ、どうしたの?」

中庭に呼び出されてアヴィスは不思議そうな顔をしている。

 「えと、その・・・。」

八志智は左手を隠しながら戸惑っていた。

 ふわ ふわ ふわわん

雪が降りだした。

 「ヤシチー!ゆきだよーーー!!」

アヴィスがはしゃいでいる。

 「・・・・・・。」

八志智はプレゼントを渡す決心をしたのか、プレゼントを持っている左手をギュッと握った。

 「あ、あのさ!」

 コトンッ・・・

つい力が入りすぎたのか、プレゼントを落としてしまった。

 「?・・・・・なにかおちたよ。アヴィスがひろってあげる!!」

そう言うと、アヴィスがしゃがんだ。


 バアァァァァァ・・・・・・・ン


雪の中を銃声だけが響いた。そして、誰かの倒れる微かな音がした。 


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