1-2 ダンジョンというもの
『プログラムを発動します.....プログラムを発動します......マスター認証開始...名前:太刀花星夜......種族:吸血鬼......性別:男......背格好......登録完了しました。これからよろしくお願いします、マスター』
「誰かいるのか!?姿を現せ!」
『それは不可能でございます。私は"コア"であるため、明確な姿を持ちません。あえていうのであれば、今マスターがお持ちになられているそれが、私の姿と言えるでしょう。』
この言葉の言うことを信じるとするならば、この透き通るような声の持ち主はこの物体であるらしい。ん?マスターだと......?
「おいコアとやら。なぜお前は俺の事をマスターと呼ぶ?一度もお前のマスターなどなった記憶はないのだが?」
『貴方様はそこに倒れている男を倒しました。前マスターの死亡を確認した為、次にこのコアに触れられた貴方様が正統な継承者として認められたのです。』
どうやらこのコアとやらは継承することができるらしい。だったら早く俺も継承してこいつから逃げたいのだが......
「だったら、どうすれば継承することができるんだ?」
『継承の方法は、ただ一つ。ダンジョンマスターが他の生物に殺害された場合にのみ発生します。その場合、ダンジョンマスターを殺害した生物が次のダンジョンマスターとなるのです。ただし、例外が二つあります。一つ目は、ダンジョンマスターが自殺した場合です。その場合は、そのダンジョンは自然消滅します。二つ目は、ダンジョンモンスターがダンジョンマスターを殺害した場合です。その場合は、ダンジョンモンスターの持ち主であるダンジョンマスターがそのダンジョンの正統な所有者となります。』
俺はこいつから逃れられない運命にあるようだ......ん?
「まてよ?先ほどから出てくるダンジョンマスター、ダンジョンモンスターとはなんだ?」
『ダンジョンマスターとは、その名の通りダンジョンの主です。ダンジョンモンスターとは、ダンジョンマスターが作り出した生物です。』
「ダンジョンとはなんだ?あと、二つ目の例外の時にダンジョンモンスターがダンジョンマスターを殺害した場合、とあったが、ダンジョンモンスターからダンジョンマスターへの攻撃は可能なのか?」
『ダンジョンとは、世界各地に散らばる迷宮のようなものです。これはマスターの二つ目の質問にも関係することですが、世界各地にダンジョンがあるということは、それを管理するダンジョンマスターもそれぞれにいるということです。他人のダンジョンを奪うためには、自分の攻撃、もしくは自分の配下の攻撃により敵ダンジョンマスターを殺害することが条件となります。また、敵ダンジョンモンスターを撃破した場合、特定のスキルを持つ者に限りテイムに挑戦することができます。』
「あと、最初にお前が言っていた種族:吸血鬼とはどういうことだ?俺は人間以外の化け物になった覚えはないぞ?」
『それは、継承時に稀に起こる“進化”という現象によってマスターが“吸血鬼”に進化なされたのでございます。まあ人間よりも劣る種族になった前例もありますので必ずしも“進化”するとは言えないのでありますが...。それはともかく、吸血鬼は、人間よりも知能や力、魔力に敏捷といったほとんどのステータスで上回る優秀な種族であります。弱点はほぼ無しに等しく、光もしくは聖属性の魔法に対しては極端に弱いですが、それ以外の属性の魔法や攻撃では倒すことはできません。』
ふむふむ......これまでのコアの話をまとめると、
①俺はダンジョンの主になった
②ダンジョンとは迷宮のようなもので、世界各地にあるらしい
③ダンジョンマスターは俺だけでなく、他にもいるようだ
④他人のダンジョンを奪うこともできる。その場合は、俺か俺の配下の攻撃で相手 のマスターを倒さないといけないらしい
⑤また、他ダンジョンモンスターは仲間にできる可能性がある
⑥最後に、俺は人間ではなく吸血鬼になったらしい
ということか。
「では、俺はダンジョンを作れるということなのか?」
『正確にはマスターが私に命じて私がダンジョンを作る、ということです。』
「今すぐにダンジョンを作ることは可能か?」
『勿論です、マスター。』
「ならば、この地にダンジョンを作ることとする。そして俺はこの地を征服し、この世界の王となる!」
『マスターのお心のままに。』
俺の願いは全ての者を従わせる強い力を持つこと......それにはこのダンジョンマスターという職業は完璧なのではないか?
配下のモンスターを従え、敵ダンジョンを攻略、そしてモンスターをテイムし、勢力を伸ばし、この地を征服し俺という王が君臨する......
嗚呼、その日が来るのが待ち遠しい。
7/6 訂正:種族の『人間』を『吸血鬼』に変更しました。