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プロローグ

この作品は、私の初めての作品となります。

なにか改善した方が良い点や、ご意見などがありましたら

気軽にお声かけください。


 太刀花星夜(たちばなせいや)は今日も剣道の修行に明け暮れていた。


 彼の実家は剣道の大家。数々の実力者達を輩出してきた名門の家系であった。


 まだ3歳の頃から玩具の竹刀を持たせ、息子に教育を施す程に親も剣道に力を注いでいた。また、彼の他に太刀花の家を継げる者がいなかったため、彼は、両親の期待と愛情を一身に受け育ってきた。


 彼はその期待を裏切らぬよう、自分の腕を上げることだけを考え、日々の鍛錬に勤しんでいた。


 その地道な努力が結ばれ、彼は中学生の頃には全国大会で優勝することができる猛者となっていた。


 師に褒められ、親に喜ばれ、彼は幸せであった。その頃の彼の背格好は中学生卒業時で、身長185cm,体重75kgにまで成長していた。


 しかし、幸せは長くは続かない。


 それは、剣道の名門校に進学した翌年の事であった。


 そこは、日本各地から剣道者が集い腕を磨き合う、星夜にとって好ましい学びの場であるはずだった。


 だが、そのことが災いした。古来、弱き者程力に溺れ、無駄にプライドが高い者達はどこにでもいる。


 入学早々部の実力者達を叩きのめし、大会でも一年生にして主将を張り、数々の称賛を浴びる星夜は、彼等にとって羨ましくもあり、妬ましい存在であった。


 あいつさえいなければ、あいつがいるから俺達は舞台にすら立てないのだ。


 醜い嫉妬を抱えた彼等は、星夜を呼び出しそして集団で暴行を加えた。


 いくら星夜が強くとも、数の暴力には抗えない。いくら身体が硬くとも、その身に伝わる衝撃を全て抑えられるわけではない。


 星夜は耐えに耐えたが、とうとう気絶した。星夜をぶちのめし気分が良くなって去って行った彼等には、星夜が抱えることとなった傷の深さを知ることはなかった。


 先生により発見された時の星夜の状態は、酷いものであった。


 制服は破れ、頭からは出血。右腕、左脚は折れ、燦々(さんさん)たる被害であった。


 すぐに病院へ運ばれたが、星夜は左脚に一生治ることのない傷を抱えることとなってしまった。勿論、こんな状態の脚では踏み込むことができず、もう2度と剣を振るうことができなくなってしまっていた。


 幼い時から剣を振るい生きてきた星夜にとって、剣を振るえなくなるということは死と同義であった。


 幸いなことに両親は彼が剣を振るえなくなっても優しく接し続けた。だが、それが彼にとっては何よりも苦痛であった。


 自分は両親の期待を裏切った。それなのに前と変わらず自分に優しくしてくれる。嗚呼、自分はなんて不甲斐無いのだろうか...。


 そんな日に日に憔悴(しょうすい)して行く彼の姿を見て、両親は彼に一度田舎にいる祖父の家に行き療養することを勧めた。


 両親の勧めに応じた星夜は、そこで初めて剣道以外に心惹かれる物を見た。

 星である。都会では街灯や街の光に邪魔され見えなかった星であったが、空気の澄んでいる田舎では近くで感じることができた。


 望遠鏡を買ってもらい、夜に山へ出かけ一晩中星に魅入ることもあった。


 だがしかし、身体を鍛えることだけは辞めなかった。幼い頃からの習慣として続けていた鍛錬だけは、辞めたくはなかったのであった。


 それから3年が経ち、少年は青年へと成長した。背は伸び、身体はよりがたいが良くなり、筋肉量も増えた。


 その日は20年に一度の流星群が降る日。その流星群は彼の名前の由来に関わるものであった。


 夜空に一筋の光が走った。その光を追うように、幾筋もの光が暗闇を照らした。


 少年は見惚れ、そして想った。自分の脚が壊れなければ。自分に敵を退ける力さえあれば。もっと、もっと強くなりたい。そのためには、悪魔にだって魂を投げ出してもいい。何者にも負けない力を、他者を従わせる力を、二度と自分が負けることのないような力を、俺は欲しい......


 その瞬間、彼は眩い光に包み込まれ、不思議な浮遊感とともに意識を失った......

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