誓い
最低月一投稿で頑張っていきたいと思います。
炎と黒煙が包む大地。死体と瓦礫が積み重なったその戦場には、つい数か月前までは栄華を誇り、笑顔が溢れていた国を思わせるものなどありはしなかった。
背後から怒号と爆音が耳に届く。男はそれに振り向くことなく、横たわる竜へ視線を向ける。かつてどの竜よりも美しく、強靭であったその身体には無数の傷が刻まれ、そこから溢れる血液がその身を赤く染める。竜の血は大地を侵す毒となって染み込み、その血を浴びた男をまた一歩人から遠ざける。
「すまない」
瞳から涙を零し、男は友であった竜に許しを請う。
「良いのだ友よ。お前はただ、自らの使命に従ったまでのこと」
行き絶え絶えに竜は男に言う。その瞳は以前と変わらず優しい物であった。
「ただ、お前に一つ頼みたいことがある」
「……」
「あの娘を守ってほしい。友として頼めるのはお前だけなのだ」
「…っ、ああ、絶対、絶対だ。この命に代えても守り抜いてみせるっ!」
嗚咽交じりに、男は竜に誓う。その言葉に竜は微笑み、死が迫る身体を引き摺らせる。
「私を糧とするがいい。そして…その力で、あの娘を頼む」
「リーン…」
「お前との日々は…私にとって心地好い物だった」
重くなる瞼に逆らい赤い空を仰ぎながら竜は呟く。
「さようならだ」
その言葉を最後に、竜はその瞳を閉じた。
魔法歴2389年○月△日、竜が守護する国アルカディアは最強と呼ばれたザフキエル国によって滅ぼされた。
そして、その日を境に、『最強』と謳われた男はその名を捨てた。