バトルⅡ-Ⅳ●
ルナはちょっと赤い顔で畳部屋の中央にあぐらを組んで座った。そして、少年少女に向かって質問を開始した。
「じゃ…じゃあ聞くぞ?質問は簡単だ。俺が男に戻るにはどうすればいいのかっていう事だ。もしかして、ある一定時間で男の姿に戻るとか、実は変身道具があってそれを使用すれは戻るとか、そういうのがあるのか?そして、男に戻ったらまた女に変身したりする事はあるのか?男に戻れたとして、すぐに魔法少女を辞める事は可能なのか?」
ルナは少年少女を矢継ぎ早に質問した。
少年少女はおどおどしながら答える。
『え、えっと…結論から申しますね…』
「ああ?」
『その姿はずっとそのままです…』
「えっ?」
『だから、そのままです…』
「えっと?そのままって?このままって事なのか?女のままって事なのか?」
『そうです。そのすごぶる可愛い女子のままです』
「……はい?」
嘘だろ?という表情で少年少女を見るルナ。
『えっと…申し訳ありませんが、一生そのままだと思います』
「ちょ、ちょっと待てよ!えっと…あれだ…って!たかがスプレーでシューってされただけだぞ?それで女にされただけなのに一生はないだろ?常識的に考えろよ!」
『男が女になる時点で常識を外れてますから、常識的に考えろと言われても…』
「お、お前がそれを言うな!」
ルナは身を乗り出だして顔を少年少女の目の前に持って行く。表情は真剣そのものだ。
『ま、待ってください!まだ僕達は出会ってそんなに経ってないし、まだはキスをするのは早いと思うんです!』
相変わらずすこぶる勘違いをする少年少女。っていか、さっきは【本番】しようとしてたよね?キスは決して早くないと思うよ?(byナレーション)
「だ、誰がキスをすると言った!今はそんな冗談を言ってる暇はないだろ!」
少年少女は冗談とは取ってないみたいだった。ルナの言葉を聞いて、ちょっと機嫌が悪くなる。
『冗談だったんですか?ぐすん…』
「はいはい、解った解った。俺が悪かった。で、俺はずっとこのままなのか?」
ルナの対応がすごく酷い件。そして、少年少女をちょっと目を潤ませて唇を尖らせた。
「なにをムスってしてるんだよ?まったく。で、俺は女のままなのかって聞いてるんだよ」
『僕はそう聞いてますぅ!』
「…マジか?」
『マジですぅ!嘘を言っても仕方ないでしょ!』
何だこの反応。何、こいつツンツンしてんだよ…
「だから、さっきは俺が悪かったって言ってるだろ?そんなにツンツンすんなよ?」
なんてご機嫌を伺うルナ。流石に目を潤ませてツンツンする少年少女を可愛そうだと思ってしまった。
『じゃあ…今度…』
「キスとかエッチな事はしないぞ?」
またツンとする少年少女。お前は一体何様だ!
「解った!キスくらなら…し、してやるから…今度だぞ?今度?だから教えろ。本当の俺はこのままなのか?」
少年少女はその言葉で一気に笑顔が咲き乱れた。なんて解りやすい。
『約束ですよ?あ、そうです!その姿ですよね?うん!戻れない!』
ツンでも笑顔でも結果は同じでした。
ルナは自分の格好をじっと見た。フリフリのピンクの戦闘ドレスを着ている少女の俺。
「いや…これはないだろ?」
『いいえ、あるんです』
「いやいや、ないって言ってもイインダヨ?」
『だから、あるんです!』
少年少女は笑顔でハッキリと言い返す。
「…くっ!」
『申し訳ありませんが、諦めてください♪』
ルナは苦悩の表情で俯いた。だが、すぐに頭を上げる。
「おい…ちょっと気になったんだが、この戦闘コスチュームっていちいち着替えないといけないのか?」
今度の心配は着替えらしい。何でそこまで飛ぶんだ?
『はい♪』
「いやいや、それは無いだろ?冗談はよし子さんだぞ?」
『僕はよし子さんじゃないです♪』
笑顔で返す少年少女。さっきのキスの約束が嬉しかったのかわからないが、冗談すら通じてない。
「くっ…おい、そこは笑う所だぞ…」
『あ…空気が読めなくてごめんなさい♪』
笑顔で開きなおってる少年少女を見て、ちょっとイライラするルナ。
「ぐぐぐ…お、おい…く、空気を読むの意味をわかって言ってるのか?」
『はい。さっきこの機械でググりました~』
…ググるって…何故その言葉を知っている?そして、その機械でこの世界のネットまで利用できるのかよ?
しかし、今はそんなのどうでもいい…俺が…男に…戻れない?だと?
「いや、ちょっと待ってくれ…」
『どうしました?』
「なんていうか…流石にこれは落ち込むな…冗談を超えてるし…」
『最初から冗談じゃないんですけど?』
しかしルナから何の返事も返って来ない。何時もなら「冗談にしろよ!」とか言う所なのに…なんて少年少女はルナの表情を確認した。
よく見れば、ルナの背後と顔に青い縦ラインが入っているような状況になっていた。そう、ルナは本気でかなり落ち込んでいたのだ。
少年少女はちょっとだけ焦り始める。ポジティブだと思っていたルナがここまで落ち込むのは想定外だったらしい。
『あ、あの…ま、待ってください!僕が今すぐにルナさんが男に戻れないかを上司にメールで問い合わせしますから!』
そう言って少年少女はスマホを弄りだした。
「おまえ…上司がいるのかよ…」
『はい』
「まさか、会社組織じゃないよな…あはは…」
『一応…株式会社です…』
「……株式?だと?」
少年少女は株式会社の社員でした。
『これでよしっ!』
少年少女はメールを送り終えたのか、ふうっと一息つく。
『メールを送りました!これで男に戻れるかの返事がくるはずです!』
「お…おお!どれくらいで返事はくるんだ?」
【ピロリリリーン】
『きました!』
「は、早いな…」
少年少女はスマホでメールを確認した。そして顔を顰める。
「おい、何が書いてあるんだ?」
『えっと…いいですか?決して驚かないで下さいよ?何があってもこれ以上は落ち込まないでくださいね?』
少年少女は真剣な顔でルナに向かってそう言った。ルナもその言葉に身構える。
俺…どうなるんだよ?