バトルⅩⅤーⅤ
ルナはうっすらと霧の立ち込める場所に立っていた。
霧はずっと先までたちこめていて視界はゼロに近い。
俺はどうなったんだろう?
俺は頭を打ち抜かれて墜落したんだよな。
確かに俺は墜落したんだ……。
で……で、そうだ。目が覚めたんだ。
そうしたら、誰かが横にいたんだよな?
誰だったっけ?
……えっと、確か……。
そうだ! そうだ、夜音だ!
あれは夜音だった!
……
いや、夜音は死んだはずだよな?
だから、俺は生き返らせる為もあって天界に来たんだよな?
あれ? でもさっきのは夜音じゃないのか?
じゃあ誰なんだ?
わかんねぇ……。
って、そうだよ、こんな場所にいる場合じゃないんだよ!
ルナは体を動かそうとした。
何で体が動かないんだよ!?
体は回復してるよな?
両手だって両足だって再生してるし、頭の傷だってもうないよな?
じゃあ何で動かないんだ?
もしかしてこれは夢の中? だから動かないのか?
やば、早く目を醒まさないと!
で……どうやって目を醒ませばいいんだ?
取りあえず、やっぱり体を動かす?
よし、動け!
おい、動けよ!
動かないとこの作戦が成功しないじゃないか!
動けって!
動けよ!
お願いだから、俺の言う事を聞いてくれよ!
(ルナさん、そろそろ交代しましょうか?)
突然ルナの脳裏に響いた女性の声。
それと同時にルナの目の前にふわっと女性が姿をあらわした。
その女性はどこか古風で、しかしどこかで見たような姿。
お前は誰だ?
(私ですか?)
そうだ!
(私は……)
お前は?
(私の名前はサダです)
サダ!?
サダとは今のルナの体の持ち主の名前だ。
そして、サダはもう死んでしまっているはずだ。
ルナは幾度も瞬きをしながら目の前の女性を見た。
すると、先ほどまではっきりしなかったシルエットが途端にハッキリと見えた。
そう、そこに立っていたのは……。
俺!?
魔法少女になった自分だった。
(はい、ですが、これは貴方であって、貴方ではない。これは元は私の体です)
確かに、この体はサダの体かけど……でも!
(ルナさん、今までお疲れさまでした。そしてありがとうございました)
ちょっと待て! 何でお前がここにいるんだよ?
(それはやっと戻ってこれたから)
戻ってこれた?
(そう、私は地球を離れ、椅子感樽へ行っていたのです)
お前は宇宙戦艦か! っていうか、なんでイスカンダルとか知ってるんだよ! おまけに漢字を適当にあてるな!
(すみません、30年前にネリアの家で見たんですよね)
……ネリア?
(ああ、はい。あなたが少年少女と呼んでいる天使の本当の名前です)
……え? えぇぇぇぇ!? ここで名前出すのかよ!
(あ、何か問題でも?)
い、いや……ここまで引っ張っておいて、それも夢の中で他人から名前暴露とか……あいつ可愛そうだなって思ってな。
(あら、ネリアは可愛そうな天使でしょ? 前から)
いや、あんたの言い方はまずいって。別の意味に聞こえる。
(ふふふ、ありがとうございます)
褒めてねぇし!
(さて、本題に戻りますが、そろそろ私の体を戻してもらいますね)
いや、まってくれ! なんで急に?
(それはやっと魂が復活したからです)
魂が復活? いやいや、お前は死んだはずだろ?
(ええ、確かにほとんど死にました)
ほとんどだと?
(私は大天使アズライールに魂を刈られました。しかし、この体に1%の欠片を残して自ら魂を崩壊させたのです)
えっ!?
(自ら魂を散らし、アズライールに魂を確保されるのを防ぎました)
……よく意味が……わからん。
(アズライールに魂を持ってゆかれるのが嫌だったんです。だから自分の意思で魂を消したのです。そして、アズライールに察する事すら出来ないレベルで魂をこの体に残しておいたのです)
なんで今になって出てくるんだよ? お前の体が蘇生に成功した時に出てくればいいじゃないか。
あっ、イスカンダルはもういいからな?
(あっ……ちぇっ)
今、ちぇっとか言ったろ!
(い、いえ、言ってませんよ?)
くうう……まぁいい。で?
(体は確かに蘇生しました。しかし、私の魂は蘇生しませんでした。そして、正直に言いますが1%の魂では何も出来ませんでした。こうやってルナさんに語りかける事すら……)
でもヤマトは見れたんだよな……。
(はい)
……じゃあどうして今ここにお前はいる?
(それはルナさんが吸血鬼になってくれたおかげでです。だから私の魂も少しづつですが回復したのですよ)
な、なんという……。って、おい!
(はい?)
じゃあ俺はどうなるんだ?
(これから先は私が使いますので……)
そうなるんだろ? じゃあ俺は? 俺はこの体を返したらどうなるんだよ?
(あれ? もしかして私の体が気に入ってしまったのですか?)
いや、それはない!
(酷いですね……そこは冗談でも気に入ったと言うべきでは?)
あ、いや、すまん。気に入ってたよ。
(こいつ、めんどくせぇぇぇぇ)
(えっ!? セクハラ発言ですか!? ルナさん、いやらしい!)
待て! どうしてそういう反応になる!
(十分に私の体を堪能したんですよね? 体の……隅々まで……堪能……)
ま、待て! 堪能はしてないからな!?
(なのですか?)
い、いや、ちょっとはしたけど……さ。
(認めてどうする俺!)
(やだ、ルナさんたら……性犯罪者さんなんだから♪)
おい……。
(ああ、そうですね。ルナさんの今後ですね)
そ、そうだよ。俺はどうなるんだ?
(大丈夫ですよ。ルナさんには代わりの器を用意します。っと言えばなんとなく察していただけますよね?)
代わりの器だと? いや、俺の体は夜音が使って……って! まさか!
(大丈夫です。私もその器に魂を移す魔法は使えますので)
えっ!? そんなのアリ!?
(では、交代です♪)
ま、まてぇぇぇ!
ルナの意識は白い霧の中に沈んでいった。




