バトルⅡ-Ⅲ
そして、場所は変わってルナのアパート前。
ルナは鍵を片手に不思議に思っていた。
服装も変化したのに身につけていたものをすべて持っていたからだ。
鍵も普通にフリフリの戦闘ドレスのポケットの中に入っていたし、財布もちゃんと持っていた。
これって、俺の服じゃないのにどうして?何でだ?
理解出来ない。まったく理解出来ない。しかし、現実に俺は全部持っている。
『ああ、それは、ルナさんの服をベースに魔法少女の戦闘ドレスをつくったからですよ?』
少年少女は笑顔でそう答えてくれた。というかさ…
「えっとな…答えてくれてありがとうな?でもな?俺はまだ言葉に出してないんだよね?ほら、良く見てくれるかな?文章にカッコが付いてないだろ?解るかなカッコって?「」こういうのだよ。こういうのがついてないって事は、まだ言葉になってないんだぞ?解るかな?俺の心で思った事に反応しちゃ駄目だからな?これから先はちょっとそこは注意した方がいいぞ?」
やけに優しく解説するルナ。少年少女はハッと口を押さえた。
『ご、ごめんなさい!今度から注意します!』
って何の会話なんだよこれは…
ルナは鍵穴に鍵を差し込むと、ガチャっと扉を開いた。そしてアパートの中へ入る。
部屋は六畳一間にトイレとミニキッチンとお風呂がついているワンルームアパートだ。
「まぁそこに座れよ」
ルナはそう言いながら座布団を用意して畳の上に置いた。
ちょこんと座布団に座った少年少女は部屋を見渡す。
『えっと…余計なお世話かもしれませんが、ちょっとは掃除はした方がいいですよ?これじゃまるで男性の部屋みたいじゃないですか』
「本当に余計なお世話だ。そして俺は男だ!」
『えっ!?そんなに可愛いのに!?嘘でしょ!?』
ルナは自分の座布団で取りあえず少年少女の頭を叩いた。そして、座布団に座っていた少年少女の胸ぐらを掴んで引き寄せる。
「…その可愛い顔をぶっ潰すぞ?」
怒りの笑顔で言い放った。
『じょ、冗談です…ごめんなさい』
そして雑談タイムが始まる。あっという間に一時間が経過。
「よし、それは解った…さて…じゃあ、そろそろ本題に入ろうか」
『えっ!?本題ですか?』
「ああ、魔族と怪人の話はよくわかった。魔族が敵なのにお前の出身が未設定な理由がわからないけどな…だがもういい。その話はもういい」
『え、えっと…』
「そろそろ本題だ。わかるよな?」
ルナは真剣な表情で少年少女を見た。
それとは対照的に、少年少女は体をもじもじとくねらせながら顔を赤くする。
「おい…どうして顔が赤いんだよ…」
『えっ!あ、えっと…べ、別に嫌な訳じゃないんですよ?でも…ほら、あれでしょ?僕はそういう経験がまだないし…だ、だからルナさんを満足させる自信があまり無いというか…』
そう言って照れる少年少女。そんな少年少女を見てルナはぷるぷると震えた。
「おい…何の話だ?お前は今から何をしようとしてるんだ?いったい俺の何を満足させるつもりなんだ!」
『えっ?えっと!シャワーを浴びてきていいですか?』
「だから、お前は何をしようとしているんだ!」
びくんと反応する少年少女。
『え、えっと!?エ…エッチな事じゃないんですか?僕のテクニックでルナさんを満足させられるか不安で…』
「待て!まてーーー!」
ルナは顔を真っ赤にさせて座布団から立ちあがった。
「ど、どうしてそうなるんだ!?」
『どうしてって!?』
ルナは座布団に座っている少年少女の首をぐっと掴んでまた持ち上げた。
『ぐ、ぐるじい…でず…』
「ば、馬鹿!勘違いも甚だしい!」
『ご…ごめんなざい?』
少年少女が涙目で謝るとルナは首を放す。
『はぁはぁ…な、何なんですか?男女が同じ部屋にいる時に本番って言ったらそれしかないと思うじゃないですか!』
「おい、なんでこういう時は俺を男だと認識するんだ!そしてな?俺は【本題】と言ったんだ…誰が【本番】って言った!」
『ひいいい?ち、違ってましたか!?ご、ごめんなさいっ!』
今度は少年少女の顔が赤くなった。
「違いすぎるだろ!」
『で、でも…僕の全てを捧げる約束をしましたし…早速かなって…』
あっ!あの時のか!本屋で!
「俺は同意してないだろ!」
『えぇぇぇ…』
「それに、今の俺は女だ!お前と【本番】なんてできねーんだよ!」
『じゃあ、出来たらやったって事ですか?』
「そうじゃねぇ!やらない!やらないから!」
『あ、別に僕は女同士でも…』
「俺はそういう属性は持ってねぇ!黙れ!煩い!」
『はひぃ?』
「もういい!お前は話すな。俺がどんどん話すから、お前は答えるだけにしろ!解ったか!」
『はひ…』
少年少女はシュンと肩を竦めた。
く、くそー!脳内ですっげー卑猥な事を考えちまったじゃねーか!
女同士とか…こいつの裸とか…うがぁぁあ!
ルナは想像力が豊かだった。