バトルⅩⅠ-Ⅲ
「ソル! 貰ったぁぁぁ!」
【きゃぁぁぁ】
ソルの悲鳴があたりに響いた。
夜音が慌てて視線をやると、銀色の槍がソルの肩へとめり込み、そして鉄球は地面へと転がっている。
【くっ…私とした事がっ…】
「私はSSS級の怪人だって倒した事あるのよ?」
突き刺したのは先ほどのリーダーの魔法少女だ。魔法少女のリーダは笑みを浮かべ、槍は光を帯びるとソルの肩を貫通していた。
苦痛の悲鳴をあげるソル。真っ赤な血がソルの肩から噴出しそのまま肉がえぐれる。
「ソルっ! うおおお! うちが相手じゃぁぁぁ!」
夜音がそれを目視すると、勢いよく空へと飛び上がった。ソルは虚ろな目でそんな夜音を見る。
夜音は空中で青く輝く翼と、ライトブルーに輝く戦闘ドレスを身に顕現させていた。
霞む視界の中にソルはその姿をまぶたに焼付ける。まるで戦乙女のような夜音の本当の魔法少女の姿を。
【夜音…さ…ま】
ソルはそのまま崩れるように倒れた。
倒れたソルへ赤い戦闘ドレスの魔法少女が追撃をしようと銀の槍を突き立てようとした時だった。その槍が何かに弾き飛ばされた。
「くっ! 夜音か!?」
空中を振り向く魔法少女。夜音の右手のひとさし指は電気を帯びている。
「ソル、あんたは頑張った。じゃけぇ…ちょっと休んじょってええけぇね…」
地上の赤い戦闘ドレスの魔法少女を睨む夜音。魔法少女の額からは油汗が流れる。それと同時に、その魔法少女の背後から凄まじい暗黒のオーラが波動のように襲いかかった。
「なっ!?」
赤い戦闘ドレスの魔法少女は慌てて振り返る。するとそこには紫色の電気を放つ漆黒の魔法少女の姿があるではないか。
焦る魔法少女。後ろの魔法少女の姿を見て恐怖という二文字が脳裏に思い浮かぶ。
【よくもソルを…】
漆黒の魔法少女の美しい銀色の髪は逆立ち、身長よりも丈のある大鎌は紫色の電気を帯び、体全体からが深紫の湯気のようなものが立ち上がっている。
そして、見事な牙が伸び、紅色の瞳が光る。
魔法少女のリーダーは恐怖で震えた。
「こ、これが…漆黒の魔法少女…ルナ? こんなの…無理だ」
「ちょっと。余所見なんてしちょって大丈夫なん? あんたの相手はうちじゃよ?」
リーダーの魔法少女は青い顔で再び空中を見上げる。
上空には最強の魔法少女夜音。背後には最強の魔堕ち魔法少女ルナ。これが絶対絶命という奴だと直感した。
「ちょっと痺れるけど…我慢するんじゃね」
夜音が両手を広げると、その両手が電撃に覆われる。そして、
「刺激的すぎてごめんねっ! 『ザルニーツァ!』」
すさまじい雷鳴が周囲に響いたかと思うと、ソルを中心とした半径10メートルに凄まじい数の雷撃が降りそそいだ。
「な、なにっ!?」
赤い戦闘ドレスの魔法少女が防御壁を展開するが、電撃はそれを簡単に貫通する。
落雷中の音は野次馬が全員耳を塞ぐほどの爆音で、ルナも耳こそ塞がないがその雷に激しく反応する。
ア…アッサムリーダーだと?(ネタが…)
「きゃあぁぁぁぁぁ!」
リーダーの魔法少女は雷撃を防ぎきれずに感電し、その場に倒れた。
「ルナを意識するのはええんじゃけど、それ以前にうちをなめちょったら怪我する事になるよ?」
いや、もう怪我どころじゃないでしょう?
ルナは空中を飛ぶ夜音を見て今更驚いていた。
今のルナも周囲から見れば十分に驚かれる存在の癖に、夜音の本当の姿を見て驚いていた。
【夜音つぇぇ】
思わずもれる本音。でもあんたの方が今は強いんだぞ? ってナレーションの私は教えたくなります。
な、なんで人間の癖に何で空を飛んでんだよ? おまえは魔法使いか? あっ、魔法少女だ。
一人でぼけて突っ込みをするルナ。
夜音は眼中の魔法少女たちに向けて口を開く。
「聞きっ! うちらとお前らの実力差は見てもわかるじゃろ! 戦闘力のある魔法少女はもうすべて倒した! 残ったのはおまえだけじゃ! そして、おまえらじゃうちらには勝てん! わかるじゃろ?」
魔法少女たちは悔しそうな表情で空中の夜音とルナを見る。
「あんたらだってまだ死にたくはないじゃろ? だから引いて。うちらが本気で怒る前に引いてくれんかな? 言っておくけど、そこのルナが本気を出すとうちより酷いよ? 下手すればあんたらが全員が裸にされるけぇね?」
血まみれの魔法少女を介護する魔法少女たちの顔色がかわった。そして一斉にルナに視線が集まる。
その殆どが蔑んだ目だった。
【ちょ、ちょっと待て! 何で俺がこいつらを裸にしないと駄目なんだ!】
必死の抵抗のルナ。だが、
「ルナの波動は服を裂くじゃろ?」
確かに、ルナの攻撃を食らった魔法少女の戦闘ドレスはどれも悲惨な状態だった。
【いや…で、でもわざとじゃないし!】
「犯罪者はだいたい違うって否定するじゃろ?」
【いや、俺って犯罪者じゃないし!】
「じゃあ、予備軍?」
【どうしてそうなる!】
「だって、女の裸が好きなんじゃろ?」
【そ、そりゃ男だから好きにきまってんだろ!】
「やっぱりエッチじゃん」
【エッチで悪いか!】
と言い放った時、周囲の視線が凍りつくように冷たくなった。野次馬含めて。
【じょ、冗談ですよ? あ、あと…わ、私は女の子ですから~】
ルナは苦笑しながら観客に聞こえるように言った。
まぁ、見た目が女だから殆どの野次馬は真面目に捕らえていなかったのが救いだった。
そして、そんな漫才が繰り広げられている中、残った魔法少女たちはもはや戦闘ができるテンションではなくなっていた。
リーダーも撃沈された今、もうこの戦闘には決着がついている。
「わかったっ。もう私たちは降参するわ」
先ほどルナのボケに乗ってくれた天然系魔法少女が夜音とルナに降参を告げた。
「んっ? よく見ればユスティーナじゃん?」
夜音はゆっくりと地上に降りるとその魔法少女をきょとんとした目で見る。ルナも目をぱちぱちと瞬いた。
ゆすてぃーな? 今、夜音はその少女を”ゆすてぃーな”と呼んだのか? どううみても日本人なのに?
髪は黒だし。瞳も黒だし。身長普通だし。おっぱいも微乳だし。なのに”ゆすてぃーな”って何で?(微乳=日本人とは…酷い偏見だ! 全世界の微乳女子に謝れ! byナレーション)
「まぁ、あんたが負けを認めるんなら、他の奴も認めるじゃろうね」
「うん…そうね」
「まぁ…それならもう攻撃はやめちょくよ」
「ありがとう夜音ちゃん」
何だ? 何だ? 知り合いなのか? やけに話が早いぞ? で? 俺達の勝ちって事なのか?
なんて思ってルナは二人のやりとりを見ていると、”ユスティーナ”と呼ばれた魔法少女が目は閉じた。
「力よ…収集せよ…」
つむじ風のようなものがユスティーナの体を一瞬覆う。そして、その次に見えたユスティーナの容姿は今までの黒髪ではなかった。
【えぇぇぇ!】
思わず驚きの声をあげるルナ。
その声に気がつたのか、ユスティーナと夜音はルナの方を見る。
魔法少女ユスティーナ。
ベージュのシンプルな戦闘ドレスを纏った16歳くらいの女の子。
髪は金色で、瞳はブルー。色白で胸だって結構おおきいく変化している。
どこから見ても抜群のスタイルの異国のお嬢様になっていた。
変身で容姿が変わるなんてあるのか? っていうか、なんで貧乳日本人少女に変身するんだよ! 素の方が素敵じゃないかぁぁぁあ!
ルナは心の中で叫んだ。
「ルナさん、今回は私たちの負けです」
【あっ…はい】
「だから、そんな怖い格好はもう終わりでお願いします」
【えっ…はい…】
そう言われてオーラを消すルナ。というか、いつの間にオーラ操作を覚えたんだルナさん?
「ありがとうございます」
【いえ、どうも致しまして】
先ほどまで敵対していたとは思えないやりとりをするルナとユスティーナ。
「では、私たちはそろそろ消えますね」
【えっ? 消える?】
ユスティーナは両手を天に向かって伸ばた。そしてそれを扇を広げるように左右に開く。すると、周囲の魔法少女たちが光輝き、次の瞬間にはユスティーナ以外の全員が消えていた。
【マジで消えたっ!?】
「では…ルナさん。ごきげにょう」
少女は最後の最後に微妙に噛んで…消えた。
【ごきげん…にょう? にょうって…おい】
ルナは消える寸前に、噛んでしまって恥ずかしそうにしているユスティーナの表情を見てしまっていた。
【いや…さっきの顔、可愛いだろ? ユスティーナ! 覚えたぞ!】
「なにが可愛いんじゃって?」
すごく低音で重い声にルナは背筋がぞっとした。そして振り向けばそこには蔑んだ目の夜音が。
「もう一回きくけど、何が可愛いんじゃって?」
【え、えっと…よ…よねの…おっぱい?】
苦笑を浮かべべながら放ったフォローの一言のはずが…フォローになってなかった。
そしてルナは脳天唐竹割を食らう。
ルナはあまりの激痛に頭を抱えて目に涙を浮かべた。
【い、いきなり殴るな!】
ルナの叫びなど無視。両胸を隠すように真っ赤になっている夜音。
「ルナがうちの胸を…か、か、かわ…かわああああああ!」
夜音は半場発狂の近い叫びを上げながら真っ赤な顔でもう一度ルナをひっぱたく。
魔法少女のパワーで容赦なしの顔面ビンタで、ルナは見事にその場で一回転してしまった。
【痛てぇぇ!】
「ほんっと、乙女心がわかっちょらん!」
【お、お前の何処が乙女なんだよ!】
「なっ! う、うちは乙女じゃろう…!?」
ルナが夜音にたたかれた頬をさすりながら表情を歪ませていると、目の前で真っ赤になって怒っていた夜音の表情が一気に焦りの表情にかわる。
「ル、ルナ…今は言い争ってる場合じゃないみたい…」
【えっ? 夜音?】
「大変じゃっ…大変じゃって!」
夜音が慌てて駆け出す。そして、ルナが夜音を追うように振り返ると…
そこには少年少女が血まみれで倒れていた。知らない間に倒れていた。




