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俺が魔法少女ルナだ!  作者: みずきなな
第十話 主人公が女と一緒に温泉に行くとだいたい変なフラグが立つよな…
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バトルⅩ-Ⅴ

 夜の冷たい風か心地良く火照った顔を冷やしてくれる。

 そして、丁度よい湯加減の白濁したお湯はルナを癒してくれた。

 ソルも先ほどまでのきつい表情はいつの間にか柔らかい笑みに変化していた。

 ルナもそんなソルを見ていて、緊張感がだんだんと薄れた。

 そして、ルナはソルに語りかけた。


「なぁ…俺って本当に魔族になったのか?」


 ソルはルナの方へと顔を向けると【はい】とだけ答えた。


「そっか…俺は魔族になっちまったのかぁ…」


 ルナはそっと自分の髪を触り、そして牙を確認した。


【その牙と紅眼は吸血鬼になったあかしなのです】


 ルナの犬歯が見事なまでに牙になっている。そして瞳は見事な紅眼へと変化していた。


「そうなんだ。でもさ、それがヴァンパイアになった証なら、ソルもそうなるべきなんじゃないのか?」


 目の前のソルは俺の血で生き返った。だけど容姿にまったく変化がなかった。

 確かに俺の血で蘇ったはずなのに。


【私は多分…特殊なのでしょう。私の血の力でヴァンパイアの血の力を薄めたのかもしれませんね。それに、私は最初から魔族の血が流れていますから】

「そっか…特殊か…そういえば…お前って半分は天使なんだよな?」


 ソルはとても寂しそうな表情で小さく頷いた。

 ソルにとっては半分が天使というのは喜ぶべき事ではないみたいだ。


「ごめん、触れちゃダメだったよな。俺も気遣いが無いやつだよな…」

【いえ…大丈夫です。事実ですから】

「…」

【ルナ様。私の話を聞いてくださいますか?】

「何だ?」

【……とてもどうでも良い話です】

「…わかった。俺で良かったら聞くよ」


 それからソルは少し口ごもり、それから勇気を振り絞ったような表情で口を開いた。


【私は…大魔王サタンが緑の天使と浮気をした時にたまたま出来た子供なんです】


 ソルはそう言うと恥ずかしそうに俯いた。


「は、はい?」

【私は…魔界では奇蹟の子供とか言われている様ですが、奇蹟も何も…お父様の遊びで…浮気でできた子供なんです】

「い、いや待て。魔界の王であるサタンが天使と不倫とかするのかよ!? だいたい地獄に天使とか来ないだろ…」

【地獄ではなく魔界ですね】

「あ…うん」


 ちゃんと突っ込むべき所は突っ込んでくれるのね。


【ええと…お父様とお母様の出会いは地上。そう、人間界です。お父様は人間界が好きで、よく人間界に遊びに行っていたみたいなのです】

「な、なんと…魔王が人間界に気楽に来ていたと?」

【はい。とても遊び感覚で】

「魔王が行動派すぎるだろ…魔王なら玉座にすわっとけよ…で? 人間界でどうしたんだよ?」

【人間界の、そう埼玉県久喜市にある一軒のスナックで出会ったのが私の母親です】


 ルナはずっこけた。というか湯船に沈んだ。


「ちょっと待て! 何で魔界の王と天使がスナックで出会うんだ! それも場所がリアルすぎる!」

【純粋に久喜市のスナックに飲みに行ったのだと思います】


 魔界の王が人間界の、それも埼玉県久喜市のスナックにいたとは、絶対に誰も気がついてないよな。


【そこで、源氏名『みどり』だった私の母親に出会ったのです】

「いやいや、ちょっとごめん…お前の母さんって天使だよな?」

【はい】

「なのに何で人間界で、それもスナックで働いてるんだ?」

【魔族や天使は人間に化けて人間界で働いているのですよ?】

「はひ?」

【魔界や天界では深刻な仕事不足で、雇用促進のひとつの策として人間世界で働くという事をしているのです】

「待て! 今の日本は不況だし、雇用不足は魔界や天界とかわんねぇからな? お願いだから人間の雇用を奪わないでくれ!」

【魔族は基本的には人間界では嫌われている職業についているのですよ? 主には肉体労働ですね…例えば建築関係とか】


 日本の建物は魔族が建築してた。


「で…それで続きは?」

【はい。ええと…私の母親が人間に化けてスナックで働いていたら、何かとても凄まじいオーラを放つ男性に出会ったのです】

「まぁ、魔王サタンだからオーラはずごいだろうな…」

【そこで私の母親は心を奪われて…】

「一目ぼれかよ!」


 バンっと関西漫才ばりに突っ込みを入れたルナ。そして、その手は弾力のあるものに弾かれた。


【ルナ様…ええと…おさわりは話の後でお願いします…】


 バッと手を退けるルナ。


「ごめん。ついつい体が自然に反応してしまった…」というか、触ってもいいのかよ!


【大丈夫です。今の私はルナ様の眷属です。ようするにルナ様のもの。自由にしてかまいませんよ?】

「まるで心を読んだかのような返しはやめてくれぇぇぇ!」


 ルナが両手で顔を覆った。


 ―――そんなこんなで続きをどうぞ。


【父も母には人間ばなれしたオーラを感じたみたいで、ひと目で気に入ったみたいなのです】

「そりゃ、お前の母さんは天使だから人間ばなれしてるだろ? っていうか、人間じゃねぇし!」

【そんなこんなで…場の雰囲気に飲まれて…その夜…】


 ソルは力のない笑みを作った。


 大魔王サタン。魔界の王にして最強の魔族。

 その魔王サタンが天使とたった一夜の関係を持った。

 たった一夜の関係で…それでソルは誕生した。

 まさに…まさに奇蹟の子じゃないか…嘘じゃない。

 話のつづきを聞くと、二人ともこうなる事を予想はしていなかったみたいだった。

 魔族の子供を人間が宿す事は無い。人間の子供を天使が宿す事も無い。

 魔族の子供を天使が宿すはずもない。

 それが常識だった。当たり前だと思われていた。

 しかし…天使は魔界の王の子供を宿してしまった。


【宿した命を消すような事はお母様はしませんでした。ですが…生まれた私は天使からも魔族からも受け入れて貰えませんでした】

「何で? 今のお前は魔族の王女じゃないか? 受け入れて貰えたんじゃないのか? テラと一緒にお城に住んでいただろうが?」

【確かに…魔王サタンは私を自分の子供だと認めてはくれました】

「…それは受け入れて貰えたって事じゃないのか?」

【ルナ様】

「なんだよ…」

【ルナ様は、私とどこで出会ったか覚えていらっしゃらないのですか?】

「どこでって…」


 ソルと俺との出会い。それは…

 そう、テラの居城の…それも武器庫だった。

 そうか、武器庫だったんだ…魔界の王女の割りには扱いが酷いと言えば酷いな。


【でも…テラお兄様は王族全員から弾き者にされていた私を受け入れてくれたのです。お父様もお母様も私を不要だと思っているはずなのに】

「いやいや、実際の親が自分の子供を不要だとか無いだろ?」


 ソルは首を振る。


【私は不要なのです。容姿が魔族として生まれた私は父である魔王サタンに引き取られました。しかし、暴走して勝手に発動するあの能力が見つかると、父は私を人里はなれた塔の最上階に幽閉したのです】


 塔に幽閉とか、なんかファンタジーっぽい話になってきたな。


【私が幽閉されていた塔にはドルアーガという番人が住んでいて、私は最上階で石に変えられて勇者の登場を待っていました…】

「…」


 ちょっと待て…それって何かどこかで聞いたことのある。それもかなり古いマイナーなゲームの…

 いや、しかし他人のそら似がある位だ。名前のそら似とか、シチュエーションのそら似だってあるだろう!(ルナさぁーん)


【あの…ルナ様…ここは冗談なのですが…突っ込んで貰わなければ困ります】


 そう言いながら照れた表情を見せるソル。っていうか、何故ここで冗談を言う!


「真面目な話だったから突っ込めなかったじゃないか! それって確か…ドルアーガの塔ってゲームだろ?」

【もぅ…正解ですが、突っ込みが遅いですね】

「待て! だいたいそれは俺の年代のゲームじゃないし、どうしてこんな深刻な話の中でそんな過疎化されたようなゲームネタが出るんだよ!」

【たかが30年程度前のゲームでないですか】

「30年も前だよ! 俺は生まれてねぇよ!」

【ご、ごめんなさい…】

「ソル…お前は何歳なんだよ…」


 ルナが頭を抱えて思わず女性の年齢を聞いてしまった。が、ソルはニコリと微笑んで。


【23歳ですよ?】なんて答えやがった!


 おい待て! ソルって俺よりも年下じゃないか!

 それに何で30年前くらいのゲーム話題が出るんだよ!


 ☆★☆★☆★☆★


 そして部屋に戻ったルナ。

 ルナとソルは相変わらず先ほどまでの話の続きを話込んでいた。


「じゃあ何でテラの城にいたんだよ?」

【テラお兄様は私の事を可愛そうだと思ったのでしょうね。人里はなれた場所で私を軟禁するのを条件に引き取ってくれたのです】

「なるほど…テラのあの城は確かに孤立しているな。しかし…あんな奴でも人情っていうものがあるのか? いや、魔人情? って言うのか?」

【ルナ様。これだけは言っておきます。テラお兄様はルナ様には酷い事をしましたが、本当はとても優しい方なのです】

「俺を殺そうとしたけどな」

【それは…ルナ様が最強の魔法少女だという噂が魔界に入ったからです】

「まったく、何でそんな噂が立つんだよ」

【それは…ええと、ここだけの話なのですが…】


 ソルはそこまで離すと話すのを止めた。そして右手を拳にして口にあてると、悩ましい表情で下を向いてしまった。


「どうしたんだよ? 言いかけでやめんなよ」

【いえ…多分…違うと思うので…】

「何だよその気持ち悪い言い方は? 言いたい事は言えよ。いや言ってくれよ」


 ソルはちらりとルナを見た。そして小さい溜息を一つついてルナの顔を見ながら話を始めた。


【ルナ様が昔存在していた最強の魔法少女に似ているのです】

「最強の? 夜音じゃないのか? 最強は」

【今はそうです。しかし…昔はもっと強い魔法少女が存在していたらしいのです】

「……何だそれ?」

【詳しくは私の知りません。もうかれこれ50年も前の話ですし】

「50年!? っていうか、魔法少女っていつから存在してたんだよ?」

【もっと前からでは? 魔界と人間界と天界は遥か太古より存在していた訳ですし】


 江戸時代とか戦国時代の魔法少女とかあるのか?

 武者姿の魔法少女…いや武者少女だろそれ。


【私も直接見た訳ではないのでなんとも言えないのですが…】

「んっ? 見たことない? じゃあ、何で俺がその50年前にいた魔法少女と似てるとか知ってるんだ?」

【教科書に写真が載ってました】

「教科書って…何の教科書だよ」


 魔法少女が教科書? そうか、こっちの奴にとっては異世界の敵な訳だから教科書で習うのか。

 という事は…歴史か…または魔界にしかない教科か?


【数学です】

 《バシャン!》

 ルナは頭から湯船に突っ込んだ。そしてすぐに顔を上げる。

「何がどうなったら数学に魔法少女が出るんだよ! それも顔写真付きで!」

【えっ? えっと…最強の魔法少女の物理攻撃力の参考数値があり、それを参考にどうすればダメージが通るのかを計算するのですが…人間界にはダメージ計算式はなかったのですか?】


 なんという魔界の数学だ…ダメージ計算とか普通に習ってるのかよ…


「いや…ごめん…そういうのは人間世界にはない」


 ルナは頭を抱えて謝った。なぜか謝りたくなった。


【………も、もう、この話は終わりにしましょう。意味も無いですし…つまらないですし】

「あ、ああ…そうだな…」


 ソルは空気を読んだのか、話題を変える。


 しかし…俺がその昔の魔法少女に似ているとかあるのか?

 世界には三人ほど似てる奴がいるっていうし、まぁ、無くもないよな…

 まぁちょっと気になるから後で少年少女に聞いてみるか。


【という事で、テラお兄様はルナ様を倒そうとした訳です】

「まぁ、テラは敵なんだから俺を殺そうとするのも仕方ないよな。俺もテラを本気で倒そうとしてた訳だし」


 ソルはすくっと立ち様がると、窓辺に移動する。


【ルナ様…テラお兄様の事はお嫌いですか?】

「はぁ? 嫌いですかって、俺がテラを好きな訳がないだろ?」

【そうですか…ですが、テラお兄様はルナ様にベタぼれですよ?】

「…みたいだよなぁ」

【羨ましいです…】


 ルナはハッとしてソルを見た。

 するとソルが唇を噛んで俯いていた。


 何だ? えっ? まさか、こいつ…テラが好きなのか?

 いやいや、兄妹だよな? それはまずいだろ?


【どうかされましたか? ルナ様】

「えっ? あっ! そうだ! よく考えたらフィレオ達のバトルがとうなっているのか、まったく気にしてなかった!」

【ああ、そういう事もありましたね】

「いや、ありましたって過去形じゃなくって、今現在バトルしてるんだろ?」

【そうでしたっけ?】

「そうでした。のはずです」

【その割には静かですが…】


 確かに…何処かで戦っているのなら音くらい聞こえてきそうなものだよな…


「ちょっと見に行かないか?」

【フィレオ様をですか?】

「フィレオと…少年少女をだよ」

【のぞきですか?】

「ああ、のぞきにだな」

【えっち…】

「…………はい?」

【ええと…少年少女様のお隣の部屋が空室だったと思うので、そこで壁に穴をあければ…】

「いや…ええと…それは?」

【のぞきです】

「…犯罪的な?」

【いえ、ちょっとわくわく的な?】

「……えっと」

【わくわくと興奮の坩堝るつぼです!】

「どこの遊園地のキャッチフレーズだよ…」


 ソル、お前はそういうキャラだったっけ?


「いやいや、それはまずいし、そういうのぞきは良くない事だぞ?」

【なぜでしょうか? スパイ活動の一環として、情報を手に入れる為に、わざわざ部屋までゆく必要は無いのではないでしょうか? 隊長様】

「いや、俺たちはスパイじゃないし、俺は隊長じゃない!」


 そして、スパイ活動でわくわくと興奮の坩堝はないだろ…

 いかん…ソルが楽しそうすぎる。

 しかし、何かこう…ふつうにこいつといると俺も楽しいな。

 …もしかして…魔族でもありなのか?

 こいつ、俺が自由にしていいって言ってるしな…

 ……じゃない! 違う! 俺は馬鹿か! 何をまた考えてるんだよ!


【ルナ様。何を悶えていらっしゃるのですか?】

「な、何でもない…」

【私の事でも考えていらっしゃとか?】


 す、するどいな…こいつ。


「いやいや…少年少女とフィレオの事が心配でな」

【それで悶えていたと?】


 やだっ! そんな笑顔で見ないでくれ!

 その笑顔が痛いからやめてくれぇ!


 そして数分後。

 疲労困憊のルナと笑顔のソルは少年少女の部屋へと向かったのだった。

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