バトルⅠ-Ⅴ
こいつ何者なんだ?
この世界の現金を扱えるっていう事は、この世界にはこいつらの仲間がいるって事なのか?
でも何だ?この世界にいる仲間は、俺の所にこんなヘンテコな奴を一人で来させたのか?それもブラックカードを持たせて?
意味がわかんねー!
『どうしたんですか?そんな怪訝な表情で悩んじゃって』
って!そうだ!こんな事を考えてる場合じゃない!俺が知りたいのは…
「お前…もしかして女か?」
ルナにそう聞かれた少年はきょとんとした表情を浮かべた。
『僕ですか?僕はもしかしなくっても女ですよ?それがどうしたんですか?』
や、やっぱり!?あのぶにゅっていうのはおっぱいか!
「…そ、そっか?いや、あまりにも見た目が男っぽかったからずっと男だと思ってた」
そう言うと、少年、いや少女?いやあれ?えっと…少女と言うとルナが魔法少女だから…ああ、ルナはもうルナなんだから少年が少女でもいいのか?うわぁ、ややこしいなぁ…
えっと…少年少女は(結局こうなった)ちょっとむすっとした。
『僕もそこはちょっと気にしてるんです!僕だって女の子に見られたいんです!ルナさんみたいな可愛い女の子になりたいんです!』
「…え、えっと?じゃあ、なればいいだろ?なれよ?いっそお前が魔法少女になればいいじゃないか?」
『そんなに簡単にはなれないんです…』
「いや、簡単なんじゃないのか?お前ってよく見ればけっこう美形で可愛いと思うけど?それに羽根まで生えてるし、魔法少女っぽいだろ?」
ルナがそう言うと、少女は顔を赤くした。
『や、やだなぁ!いくら僕に一目惚れしたからって、そんなに褒めまくっちゃって…もうっ!でもそうだなぁ…僕は今は彼氏いないから…か、考えてあげてもいいよ?てへっ』
ルナは少年少女を可愛そうな人を見るような目で見た。
『な、何ですかその目は!まるで僕がかわいそうな人みたいじゃないですか』
「いや、みたいじゃなくてまんまだろ?」
『ガーン…』
少年少女はかなりショックを受けた様だ。
「だいたい、何で俺がお前に一目惚れしなきゃいけないんだよ?」
『そ、それは僕に魅力が無いって事ですか?』
ちょっと涙目な少年少女。
「馬鹿!泣くな!誰もそんな事は言ってないだろ?」
『酷いっ!酷いです!僕たちはパートナーなのに…』
「パートナー?おい待て、いつからそういう設定になったんだ?」
『えっ?ええと…僕がルナさんを魔法少女にしたから…だから僕はパートナーなんじゃ?』
「いや、それってどんなアニメだよ?確かにあるよ。漫画とかアニメとかじゃ、そういうのはある。だけど俺は漫画のキャラじゃない!」
『でも僕たちはパートナーですよね!』
「聞いて無いだろ…」
ルナは頭を抱えた。
『ルナさん?どうしたんですか?』
「お前の相手をしてちょっと疲れた…」
『あ…そっか!怪人を倒したしねっ!疲れてますよね!うん!』
「だから、お前を相手にしててって言ってるだろ!聞けよ!そのくらい聞いてくれよ!」
その時だった。その少女の持っているスマートホンから軽快な音楽が流れだす。
『あっ!』
「どうした!?」
『メールが来ました!』
「!?メ、メールだと?」
『はい…そして。どうやら新たな怪人が現れたらしいです…』
少年少女は真面目な表情でルナに向かって言った。
「怪人?っていうとさっきのゴキブリみたいなのか?」
『そうです!だから一緒に倒し…「嫌だ!」』
『ちょ、ちょっと!被せないで下さいよ!まだ僕の話の途中なのにっ!』
「言いたい事の予想がついたし、そして本気で嫌だ!」
『待ってください!だって怪人を倒す為に魔法少女になってくれたんでしょ?』
「待て!お前が強引にこんな姿にしたんだろうが!もう忘れたのかよ!」
『ひ、ひぃぃ…で、でも…ルナさんは魔法少女だから怪人を…』
「誰が行くか!馬鹿!」
ルナがそう言うと、少年少女はがっかりと肩を落とした。
『行って…くれないのですか?』
「ああ、行かない」
『聞いてください!今度の場所は久喜市の某モラージュの近くなんです!ここからも近いんですよ?それに終わったら某モラージュでお買い物もできるし…そうだ!モラージュの中の映画館で面白い映画をやってるかもしれないですよ?』
少年少女は何故か商用施設のパンフレットを持っている。
「おい!ちょっと待て!まったく某になってないじゃないか!せめて商用施設の名前は変えろ!最後なんて某すらなくなってるし…何か言われてもしらないからな?」
『わ、解りました…でも買い物をした後に一緒に映画を見てくれますよね?あ、そうだ!その後に時間があれば怪人を一緒に倒したいですね!』
「ちょっと待て!目的が入れ変わってる!映画が目的じゃないだろ!怪人を倒すのが目的だろ!」
ルナは真っ赤な顔で少年少女に向かって怒鳴った。
『はぅ…そ、そんなに怒らないでくださいよ…』
「怒ってるんじゃない!呆れてるんだよ…」
『ねぇ…ルナさん…一緒にいきませんか?』
「行かない」
少年少女は再びがっくりと肩を落とした。
『うぅ…仕方ないです…僕が一人で行きます…』
「ああ、勝手に行け!」
少年少女はとぼとぼと哀愁を漂わせて空き地の横の広い道へと歩いて向かう。
途中で本当についてきてくれないのですか?なんてアピールっぽく振り向きながら。
そんな少年少女を見ながらルナはちょっと心配そうな顔をしていたりした。
第二話に続く!