バトルⅡ-Ⅴ
ルナは座布団の上に正座をした。そして真剣は表情で少年少女の話を聞く。
『いいですか?話ますよ?』
ごくりと唾を飲むルナ。そして小さく頷いた。
「よし…いいぞ…話してくれ…」
『はい…では…』
もしかして、本気で一生戻れないとかないよな?
『まずは結論から申します』
「ああ…」
『男には戻れるみたいです』
「おお!おおおおお!」
ルナの表情が一気に明るくなる。
『まだ喜ぶのは早いです。続きがあります』
「あ、ああ…」
ルナは「ごほん」と咳払いをして再び真剣な表情になった。
『えっと…男に戻るには…怪人を100匹倒さなければいけないみたいです…うわぁ…100匹?なんて恐ろしい数字なんでしょうか…』
その台詞を聞いたルナの表情がふわっと柔らかくなる。
「おい、要するには、怪人をいっぱい倒せばそのうち戻れるのか?」
『まぁ、簡単に言えばそうですね』
「ほう…なるほど…」
『あれ?驚かないんですか?落ち込まないんですか?こう、泣きながら僕に抱き付いてきたり…そういう事は無いんですか?』
何でルナが落ち込まないのか不思議そうに見る少年少女。
「…お前は何を期待してるんだ?」
『…スキンシップ?とか?』
「ないから…ここでそれは無いからな?」
『えー』
「えーじゃない!」
『残念です…』
そう言った少年少女は本当に残念そうだ。
「まぁ、あれか…ともあれ、怪人を倒しまくればいいのか?今日が2匹だよな?という事は…1日2匹ペースだと、50日かぁ…結構かかるなぁ」
『ちょ、ちょっと待ってくださいルナさん!怪人を甘く見ない方がいいですって!』
「どうして?今日の怪人とかを見て、甘く見なくてどう見ればいいんだ?」
『…え、えっと…いや、だって…ほら…こっちだって多少は苦戦をしないとつまらないじゃないですか。怪我をしたヒロインを僕が癒すとかやってみたいですし…そしてそれを切っ掛けに愛を育むとかもありかなーって』
「…お前は本当に何をしにこの世界にきた?」
『えっ?彼氏を見つける為ですか?』
すくっと立ちあがるルナ。そしてルナの背景には火の(以下略)
(ここでルナが少年少女にお説教をしているシーンですが、割愛しますねっ!)
「わかったか?」
『はい…ごめんなさい…僕が悪かったです』
少年少女は正座をして涙目でルナを見上げた。
「こうなったら仕方無い!さっさと怪人を倒しまくって元に戻るようにするぞ?わかったか!」
『わ、わかりました…』
「怪人が出たらすぐに俺に知らせろよ?」
『はい…』
「やってやる!こうなったら意地だ!絶対にクリアして元に戻ってやるからな!」
ルナは右の拳に力を込めて突き上げた。
『すごいやる気ですね…』
「あたり前だろ!男に戻りたいからな!」
『でも、男に戻って良い事があるのですか?』
ルナの表情が引きつる。なかなか鋭い質問だ。
そう、俺は男に戻っても別に良い事なんてない…
彼女だって今回が初デートだったのにこれだ。もう駄目に決まってる。
だが!しかし!しかしだ!
「いや、そういう問題以前にリアルを、現実を考えるんだ!」
『えっ?それってどういう事ですか?』
ルナは腕組みをして真剣な表情で解説を始めた。
「まず考えろ。今の俺は何者なんだって事を」
「よく漫画とかライトノベルとかで俺みたいに変身するものがあるけど、あいつらの存在はどんなものなのかを考えた事があるか?」
『えっ?えっと?変身してもルナさんはルナさんですよね?』
「そうだよ!それで正解だよ!でもな?実際は、今の俺はルナであってルナじゃないんだよ?わかるか?」
『ど、どういう意味ですか?』
「例えばだ。今はこのアパートにまだ住めている。だが、もしもアパートの更新とになってみろ。とてもじゃないけど今の俺が月だって大家には認めて貰えないだろ?」
『まぁ…そうかもしれませんね?』
「新しくアパートを借りるにも、この姿じゃ身分を証明する住民票も取れないよな?いや、取れても駄目だ。俺の場合は戸籍上は男なんだ。それなのに今は女なんだぞ?ましてや…」
ルナはじっと自分の体を見た。
「どう見ても今の俺は女子中学生だよな?女子中学生に部屋を貸す奴なんていないだろ?」
『なるほど…』
ここでしいて年齢には触れないルナ。27歳の中学生ってどこのドラマのタイトルだって?
「まぁそれはお前も同じだ。お前はこの世界じゃ戸籍も住民票も健康保険すらないだろ?そう、今のお前は住所不定無職な存在なんだ!」
『な、何かその響はとても嫌ですね…』
「だろ?」
『はい…』
「だから、俺は男に戻るっていうよりは、元の自分に戻るって意味の方が強い。そしてお前も早く元の世界へ戻るっと…そういう事だ」
『なるほど…』
「解ったか?」
『はい…理解しました、ご主人様』
いきなり少年少女の態度が変化した。さっきまでおにゃのこ座りだったのに、いきなりピチッと正座になっている。そしてご主人様とキタ。
「…え?ご主人様?」
『要するに、私はメイドとして、一生貴方にお仕えするという事ですね?』
「えっと…どこをどう解釈するとそうなるんだ?それにお前って自分を私って言えるんだな…」
『あ、いえ、私と言ったのは作者のミスです』
「お、おい…」
(だから空気嫁よ!アドリブを効かせろって言ってるだろ!)
『えっ…あ…』
(だって、本当に最初の下書きの時に作者さんが間違ったから!)
「えっと…その話題はもう…終わろうか?」
『そうですね…』
こうして話も半端なまま、ルナと少年少女が怪人と戦う日々が始まるのでした。
果たして、二人の運命やいかに!
『で…私はメイドでOKですか?』
「却下!」
第三話に続く!