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俺が魔法少女ルナだ!  作者: みずきなな
第一話 魔法少女誕生?
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バトルⅠ-Ⅰ

正義の味方? 人間を守る?

俺はそんな理由で戦わない!

じゃあ何のために戦うのかだって?

そんなの決まってるだろ。俺のためだ! 自分のためだ!

俺は元の体に、そう、元の男に戻るために戦うんだ!

それが例え魔王や大天使を敵に回す事になってもな!

なんて言いすぎたかもしれない。

だけどな? それでも、俺は頑張るからな? 絶対にこの体をどうにかしてやる!


この小説は上記の様な意気込みを言っている、いきなり魔法少女にされた不幸な青年の世にも不思議な物語です。byナレーション

 某公園の広場で、ピンク色の可愛いフリル付き戦闘ドレスに身を包んだ少女が華麗に空中を舞った。

 その少女は空中でターンを決めると、まるで蜂が刺すような鋭い動きで地面に立っているゴキブリ怪人にとび蹴りを食らわせる。

 まるでライダーキックの様な蹴りが怪人に炸裂。

 辺りには《ガツン》と激しい音が響くと同時に、怪人がまるで空き缶のようにゴロゴロと激しく地面を転がった。


「おい? まだやる気か?」


 少女は転げた怪人に歩みよると睨みを効かせた。ガンをつけた。

 怪人は体を震わせながらズルズルと体を引きずるように後ずさりをする。

 怪人は虫の顔なので表情は伺えないが、ハッキリとわかる事がある。

 それは、この少女に恐怖しているという事だ。


【た、助けて下さい……ま、負けでいいですから】


 巨大なゴキブリの様な怪人は、なぜか日本語で魔法少女に助けを求めた。

 戦闘が開始されて僅かに十秒だった。

 それもたった一撃で敗北宣言をした怪人。

 私はナレーション担当ですが、こんなに弱い怪人さんだとちょっとこの先が心配です。

 私から一言いっておきましょう。


《それでいいのですか? 怪人さん? 怪人ってこんなに弱くってもいいのですか? 読者の皆様だってこんなんじゃ納得してくれませんよ?》


 なんて私が怪人を心配している間に魔法少女が怪人を足蹴にしました。


「何が負けでいいですっだ! そうじゃないだろ? お前の負けなんだよ! わかってんのかゴキブリ野郎!」


 可愛い容姿に似合わない台詞が周囲に響いた。

 ちなみに、そんな激しくもないバトルが繰り広げられているのは埼玉県久喜市の某場所、某公園。

 この公園は中央にはでっかい池があってそこではボートに乗る事ができて、周囲にはマラソンができるようなお散歩ロードなんてものもある。

 戦闘が繰り広げられた付近には噴水なんかもあった。

 ようするにデートをするには素晴らしく整った場所であった。

 そして今日は日曜日だ。

 天気も良いし、人もいっぱいいっぱい公園に来ていた。

 そんな中でのバトルだ。

 もちろん魔法少女たちの周囲は今や人だかりになっている。

 しかし、これが本物の怪人と魔法少女の戦いだと何人が理解してるのだろうか?

 まるでイベントを見るかのような周囲の人々。

 拍手まであがる始末だ。

 見ていた一人の少女が「あれってプリキュ○だよね!」と、嬉しそうにはしゃいでいる。

 しかし、残念でした。この少女はプリ○ュアじゃありません。

 そんな騒ぎになっている現状にまったく気がついていない魔法少女。


【は、はい! 私の負けです!】

「ふんっ! わかればいいんだよ! 負けを認めたならとっとといねよ!」(とっとと帰れ)


 若干方言をいれつつ魔法少女はイライラしながらゴキブリをまたしても蹴り上げた。

 もうここまでくれば弱い物虐めとしか思えない。


【ひぃぃ! お助けを~】


 怪人は両手を上げて、いや、両足を上げて?

 まぁどっちでもいいか?

 結果として、怪人は一目散に逃げ出したのだった。


「ふぅ」っと溜息をつく少女。そして鬼の形相で後ろを振り返る。

 怪人を倒したのにも関わらず、まったくもって嬉しさが感じられない。

 キメポーズもまったくない。

 ほら、ギャラリーが期待して待ってるよ?


「おい、出て来い! 終わったぞ!」


 結局少女はギャラリーなんて無視して、後ろに生えている直径50センチくらいの中木に向かって怒鳴った。

 すると、木の陰で何かが動く。


『は、はい……そんな感じですね』


 木陰に隠れていた少年がおどおどしながら姿を見せた。

 見たら解る。この少年も魔法少女に怯えていると。


「さて、怪人は倒したぞ? 約束通り説明をして貰おうか? 何で俺がこんな目にあってるのかをな!」


 可愛い容姿からは想像できないくらいの鋭い睨みを効かせる少女。


『い、いや……あの、その、だからほら……そ、そういう運命だったという事じゃ駄目ですか?』


 その一言で少女の背景に炎があがった!

 怒りに燃えている! いや、本当には燃えてないです。演出です。


「ふ・ざ・け・る・な・よ?」


 一語一句を丁寧にきっちりと少年に伝える笑顔の魔法少女。

 いや、これは怒りの笑顔ですね。

 怖い怖い……。


『ふ、ふざけてなんてないです!』


 そう言い返しつつも、びくっと少年は震え上がった。

 ちなみに、おどおどしている少年の身長は160センチ位。

 髪は白に近い銀色でショートカット。

 目の色は青く、そして背中には白い大きな羽根まで生えている。

 顔つきは中性的で美男子だ。

 なんとなく人間のようだが、どう見ても人間じゃない。

 その容姿はまるで天使だった。


「ほほう? ふざけてないって言うのか? なら、どうして俺がこんな姿にされたのかな? 俺が納得出来るように理由をきちんと教えてくれるよなぁ?」

『は、はい! 出来る限りのご説明はさせて頂きます!』


 少年は直立不動で即答した。


「ほう……じゃあ正座しろ」


 魔法少女は右人差し指で地面を指差す。


『えっ?』


 嘘ですよね? っといった表情で地面を見る少年少女。


「聞こえなかったのか? 俺はそこに正座しろって言ったんだ」

『あ、いや、ここは土ですし、痛そうだし』

「いちいち口答えすんな! 座れって言ってんだよ!」

『は、はい!』


 少年はチャキーンと背中を伸ばし、砂利だらけの地面に正座した。

 土のつぶつぶが痛いです。

 正座した少年にずんずんと近寄る魔法少女。

 見下すように少年を睨む。そして少年の左横にあったブロックに足をずんっと乗せた。


「さて、話してもらうか? 俺がこうなった理由を!」

『あ、あのぉ……』


 少年はもじもじと上目遣いで魔法少女を見る。


「あんっ? 何だよ?」

『えっと、話す前に……み、見えてます…』

「見えてる? 何がだよ?」

『し、白いパンツが……もう、なんていうか……おもいっきり見えてます』


 魔法少女は自分がミニスカートだといまごろ気が付いた。

 斜め下から見上げる少年少女の視界には、しっかりはっきりと白いパンツが入り込む。

 魔法少女はカーっと顔を赤くしてスカートを押さえた。


「お、お前はなに見てんだよ!」

『べ、別に見たくて見たんじゃ無くって、正座したら見えたんです!』

「言い訳してんじゃねえぇぇ! 見たのは確かだろ! 俺のパンツを見やがって! って待て! 待てぇぇぇ! 俺は27歳の成人男子だぞ? 何でこんな事で動揺しなきゃいけなんだよ!」


 赤い顔で思わず大声を張り上げる魔法少女。

 そして、その一言を発した瞬間だった。周囲から色々な声が聞こえて来る。

 少女はハッとして辺りを見渡す。人だかりになっていた事にいまさらになって気が付いた。

 まぁ、あれほどの激しい? バトルを繰り広げたのだ。人が集まらない訳がない。

 というか、公園の真ん中でフリフリのコスプレじみた格好の少女が、これまたコスプレじみた怪人をやっつけて、とどめにコスプレじみた少年を正座させている。

 これで人が集まらない訳がない。


「聞いた? あの子って男の子なんだって。どう見ても女の子だよね?」

「えっ? 嘘だろ? あの子って男なのか? って? じゃあ、あれって女装?」

「最近は手術であんなになれるのかな?」

「きっと赤ちゃんの頃から女だって育てられたんじゃないのかな?」

「いや、逆だろ? 男だって育てられた女の子だろ? どう見ても女だぞ?」

「待ってくれ。男とか女とかの前に、みんなよく考えるんだ! あれで27歳なんだぞ?」

「「「うわぁぁ…」」」


 周囲の視線が痛い…グサグサと突き刺さるような感覚がする…

 何だよこれ!


「くそーっ!」


 魔法少女は正座をしていた少年を抱きかかえると、真っ赤な顔のまま一目さんに逃げ出したのだった。


続く

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