第三話 手乗り文鳥 ピッチ ♂ 四ヶ月
この話を書くのが楽しくなってきました。
まじで筆が進むんですよ。
いやしかし、商店街の一件には参った。多くの通行人に見られてしまったからだ。危うく、警察に職質(職務質問)をうける所だった。
さて、商店街から徒歩十分。『ハイム小泉』が俺の友人の家だ。
「俺だ。松本だ」
「おお、まっちゃん。入りな」
友人の名は谷本。高校からの友人だ。
それにしても、相変わらず汚い部屋だ。
「今、お茶を入れるよ」
「すまない」
俺は谷本の部屋の中を見渡した。それにしても汚い。なんだかきな臭い。
一間の部屋には家財道具一式が置かれていた。テレビ、タンス、ベッド、パソコン、鳥かご……。
鳥かごだと。まずい。これでは俺の奇妙な力が。
「谷本! お前、いつの間にこんな鳥かごを……。前来たときは無かっただろう!」
俺の語気は自然と強くなっていた。
谷本はそんな俺に少し驚いたようだ。振り返るなり固まってしまっている。
「いや、それは、二週間前に……」
「何を飼ってる。言え!」
「て、手乗り文鳥」
くそう、早くここから逃げなくては。
「まっちゃん。何処行くんだよ」
気のせいか? 谷本の声が霞む。
しまった! またあの力が!?
ピピッ。ぼくの名まえは『ピッチ』だって。
ははは、かわいい名まえ。
それにしても、ぼくのかいぬしのおともだちのお兄ちゃん、なんだか、ぼくのおうちをみるなりおこっちゃった。ぼく、なにかわるいことしたかなあ? それにこんどはたおれちゃった。ぼくのせいかなあ?
まあ、いいや。そんなことより、ごはんごはん。
ああっ、まただ……。
ぼくのかいぬしのお兄ちゃん、いっつもごはんのカラを取ってくれてない……。これがあるとまずいのに……。ぼくのこときらいなの……?
まあ、いいや。ごはんがないならお水のも。
きゃあ、なにこれ。お水くさい! なんでまいにちかえてくれないの……? こんなお水のんだらおなかこわしちゃうよ……。ぼくのこときらいなの……?
きらわれたくないなあ。はじめてあったときは『かわいい』って言ってくれたのに……。あれはウソだったの……?
ぼくのおうち、なんだかきたないなあ……。あっちこっちのぼくのうんちがおっこちてる。たまにでいいからおそうじしてほしい。
おにいちゃんのおへやもきたないなあ。おにいちゃんのごはんのたべかすがいっぱいそのまんまになってて、ちっちゃい虫がわいてる……。こんなおへやにいたらびょうきになっちゃうよ。
おにいちゃん、おともだちのおにいちゃんの名まえをよんでる。あのお兄ちゃんだいじょうぶかなあ? ぼくのせいだったらどうしよう……。お兄ちゃん、だいじょうぶ?
「まっちゃん。おい。まっちゃん!」
ん。谷本が俺の事を……。
しまった。またあの力が現れたらしい。
「大丈夫かよ? いきなり倒れて」
くそ。この力、ハッキリ言って迷惑そのものだ。動物が近くにいると、すぐに目覚めてしまう。やっかいだ。
それにしても。この男、文鳥の世話をしてないようだな。あのきな臭さはそのせいか。ここは一つ、あの文鳥の為にも一つ注意してやらなければ。
「谷本! お前、文鳥の世話をしてるのか! 可哀想だろ!」
「あっ、そういやあ、ここのところ忙しくてあまりやってなかった。すまん」
谷本め、俺に言われて鳥かごの掃除を始めたな。これでは、飼い主失格……だ……。
おともだちのお兄ちゃん。ありがとう。
またか。しかし、今回は短かったな。
まあいいか。とりあえず、一つの小さな命を救えたのだから。
ふふ、今日は良いことをした。
今回はすっきりまとめてみました。
ひらがなばっかでよみにくくてごめんね。
『ハイム小泉』の名は、その時丁度、郵政民営化についてやってたからです。