VSグリフォン たった3ページのラスボス
フェイの飛行能力は前より格段に上がっていて、同じ飛び方をしたのにも関わらずまったく揺れを感じなかった。
成長したのは、戦闘能力だけではないということだ。ドラゴン末恐ろしい。
「さて。ここがグリフォンたちが根城にしているという名もなき北の地なわけだけれど」
辺りを見回しても、何もない。
もしかして、デマ情報だったのだろうか。
そんな不安が首をもたげ始めた、その時。
「うん? お前ら、見かけない顔だな」
目の前に、斧を持った大男が立っていた。
いつの間に――なんて思う暇もなく、大男は斧を振り回し始める。
ギリギリ回避したが、突然すぎてどうすれば良いかわからない――ピンチだ。
「夕霧! 落ち着いて、あんな奴夕霧の敵じゃない」
トーガだ。剣をしっかり装備して、しっかり敵を見据えている。
本当に成長しているじゃないか、と驚くと共に自分も負けていられないと俄然やる気になる夕霧。
「パンテーラ!」
稲妻豹は召喚され、一度大きな伸びをすると黄金の体を目にも止まらぬ速さで大男に突っ込ませる。
「グラキエース・ドラコ(氷龍召喚)……君は待機ね」
リヴィも氷の龍を召喚し、グリスにも命令を忘れない。確かに大男と言えど、あのサイズに三匹も突っ込んだらこちらにも被害が出てしまうだろう。
大男は氷龍の力でみるみる内に凍らせられてしまった。
「なっ……なんだこいつら……」
私たちにほぼダメージを与えることなく動けなくなってしまった大男の目には、恐怖の色が浮かんでいた。
「この調子なら、グリフォンを倒すのもあっさりいけるかもね」
リヴィが不敵に笑う。
夕霧も笑い返す。そんな気がしてきた。
「……お兄ちゃん! お姉ちゃん! いっぱい……いっぱい来るよ! 気をつけて!」
こんな時に役に立つのは、レオ―だ。
「トーガ、大丈夫。全体攻撃は任せて」
リヴィはグリスに再び待機命令を出し、手を出す気配をまったく見せない。レオ―の力を一度見ている彼は自分が働くまでもないと判断したのだろう。
良い判断である。
「レオ―!」
虐殺獅子の名は伊達ではない。一度大きく咆哮すると、体に濃い紫のオーラを帯びて駆け回る。
昔から、虐殺は毒でされると相場は決まっている、敵はどんどん溶けていき辺りには無残な死骸たちが残った。
すべて、ミノタウロスやキメラ、キュクプロスなど、良いイメージを持っていない幻獣ばかりだ。
「ほう、随分と力をつけてきたようだな、お前ら」
あまりにも部下を殺されたことに焦ったのか、早々に出てきたグリフォン。
しかしトーガですらも怯えることなくあいつに対峙している。夕霧の冒険は、無駄ではなかった。
「お前を倒すために、色々用意したんだ! 覚悟しろ!」
稲妻豹も、虐殺獅子も恐ろしい。ものすごく強い力だ。
それでも、彼女には叶わない。
「ファーチャ!」
魔人ファーチャは巨大で、グリフォンにもひけをとらない。
しかし、ファーチャを見てもグリフォンは焦る顔一つ見せなかった。
「この程度か! 俺はそんなんじゃ倒せないぜぇ!」
グリフォンが猛る。落ち着け、と自分を宥める夕霧。
「じゃあ、これでどう!」
上空から様子を見ていたフェイが回転しながら落ちてくる。
グリフォンはそのフェイの攻撃を避けもせず、その体で受け止めた。
「ははは! オレが負けるはずがないんだ、どんな攻撃も受け付けないというレディ・サタンの魔力が込もった鎧を着けているんだからなぁ!」
その話を聞き、夕霧の目に絶望の色が浮かぶ。グリフォンの絶対の自信の出所はここだったのか。
「夕霧! ハッタリだよ!」
リヴィが声をあげた。
そこでハッとする。敵の発言だけで諦めてどうする。ぴるぴるの顔を思い浮かべる。絶対仇を取ってやる!
「ファーチャ! パンテーラ! レオ―! 総攻撃!」
「氷龍、白虎! 手加減は、いらないよ!」
「みんな、フェイに当たらないようにね!」
六匹もの、総攻撃。
ここまですれば、少しは……!
しかし夕霧の考えは全く当たらなかった。
グリフォンに攻撃していた六匹はすべて吹き飛ばされ、具現化が解かれてしまった。
「うっ……くぅ……」
「っ……げほ、」
無理やり解かれた具現化は、そのダメージがすべて術者に――つまり、夕霧とリヴィに返ってくる。夕霧に至ってはは三匹分のダメージをくらい、まともに動くこともできない。
フェイも吹き飛ばされ、今動けるのはトーガのみ。しかし、そのトーガの姿が見えない。
もしかしたら、吹き飛ばされた召喚獣達に巻き込まれたのかもしれない……再び絶望が夕霧を襲う。
今度は活を入れてくれるリヴィも倒れている。ここで自分は死ぬのか、と自嘲する。
ぴるぴるの仇をとれなかった――
その時。
「ぐわぁあああああああっ!」
意識が遠のきかけたとき、突然グリフォンの断末魔の叫びが夕霧の耳に飛び込んできた。
強制的に呼びもどされた意識で、何があったのかを探る。
体の痛みよりも、驚きが勝った瞬間だった。
グリフォンの上に、トーガが立っている。
「忘れたの? オレの剣は、レディ・サタンを討った勇者の剣だよ!」
トーガの剣がグリフォンの眉間に深々と刺さり、グリフォンは苦しそうに呻いている。
どんな攻撃も受け付けないのではないのか。
リヴィはハッタリだと言っていたけれど、六匹の総攻撃をもってしても無傷だったのだ、本物だとしか思えない。
なるほど、と夕霧は笑う。
かつてレディ・サタンを貫いたらしい勇者の剣なら、確かに攻撃を受け付けないという効果を無効化できるのも納得できる。
フィナーレだ。トーガがグリフォンに止めを刺し、夕霧は元の世界に帰ることができる。
物語は、閉幕へ向かい始めた。
(大人の事情です)




