VSドラゴン! ドゥラーゴの戦い4
VSとか言いながら、まったく戦っていないドゥラーゴ編。
夕霧とぴるぴるが眠る部屋。
すぅすぅと寝息だけが響くその場所に、たたたた、という可愛らしい足音が近づいてくる。
「お姉ちゃん! 夕霧お姉ちゃん! ぴるぴるも、起きて!」
んー、と夕霧が気だるそうに寝返りを打つ。
そんな彼女の隣で、ばたばたとぴるぴるが慌てて逃げ出した。
「もー! 起きてー!」
ごぉ、と火を吐くフェイ。まだ制御が完全にできるわけではないらしく、怒ると出てきてしまうらしい。
ドラゴンの時の比ではないが、それでも火は火だ。
「熱っ」
夕霧は何事かと飛び起きる。そしてフェイを見るなり、
「うわー! フェイが燃えてるー!」
ベッドサイドに置いてあるコップ一杯の水(夕霧は寝起き一番水を飲む習慣がある) をぶっかけた。
「ひゃあ! 冷たい! もう、夕霧お姉ちゃんしっかりして! フェイはドレイク族なの、火はお友達なんだからー!」
なんだなんだ、と駆けつけたトーガとリヴィに一頻り大笑いされながら朝食を済ませた後、一行はドゥラーゴの村を出た。
「あー、おかしい。まだ思い出すと笑っちゃうよ、ねぇトーガ」
「リヴィは笑いすぎだよ。でも、フェイが燃えてるって……ぷぷっ」
トーガにまで笑われた夕霧は、いつか仕返しを誓いつつ結局焦げたぴるぴるの毛繕いを手伝っている。手足が短いので、届かないのだ。
「でも、お寝坊さんだから起こすのは大変だよってトーガお兄ちゃんから聞いてたのに、お姉ちゃん結構すぐ起きてくれたから、よかった」
すっかりトーガの肩車が気に入ったらしいフェイはとてもはしゃいでいる。
「今度から夕霧を起こすのはフェイにやってもらおうか」
リヴィが言うと、うん、任せて! と返事をしたフェイだが、すぐに渋い顔になり、
「でも、毎朝お水かけられるのは嫌かも……」
と言った。
その発言がまたツボに入ったらしいリヴィはまたしばらく爆笑していた。失礼な奴め、と愚痴る夕霧。
「わー、見て見て、おっきいね、鳥さんかなぁ」
フェイが空を指さす。
みんなでその指先を見ると、確かに大きな鳥のようなものが飛んでいる。
そんな感じでのほほんと一行はリオンに向かい始めた。
グリフォンを見つけだして戦うのはいいが、フェイを巻き込むわけにはいかないとトーガが言い張ったためだ。リオンなら安全に生活できる。
ヴィペールの方が近いので、そちらへ行ってソラニテの力で飛ばしてもらうことも考えたが、正直三人ともまたとんでもない場所へ飛ばされるのではないかと気が気ではなくなってしまうだろうと、その案は却下された。
「そうだ、少しリンクスの村が気になるからちょっと寄ってみようか」
リンクスの村はまた前のように戻ったのだろうか、なんて言う三人。フェイにも山猫との戦いの事を語った。ぴるぴるも初耳なので一生懸命聞いている。さすがに、夕霧がバットで山猫を打ったことを聞いたときはフェイもぴるぴるも引いていたが。