1、青白い光
プアーーーー!
そんな音をたててトラックが通りすぎてゆく、
その軽快な音を聞いて、少年は顔をしかめた。
今は午前零時を過ぎる頃、そんな夜中に少年が一人。
「ムカツク・・・っちたあ静かに走れねえのか?」
そう呟き、再び歩き出す。
・・・なぜこんな時間に出歩いているか、簡単だ。
家出。ささいな喧嘩からだった、それも本当にくだらない理由。
数時間前〜
「おい一樹!!テメエおれのアイス食ったろ!!」
「うるさいな光輝兄ちゃん、いいだろ?またかってくりゃ。」
「ああ!?んだとコラア!」
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ぱっぽー
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今いるのは光輝のほう、
家で散々暴れた挙句、親にしかられ出てきた。
そういった感じだ。
「クソッ!苛々する・・・。」
そういって突き当たりを曲がる、光輝にとってはまったく地理が分からず、唯々知らない道をふらふら歩いているだけだった。
「ん?」
曲がった先にあったのは公園。
今日の宿舎はココだ!!と、勝手に決める、が。
キイイイ、キイイ、キイイ。
ゆらゆらと、ブランコが揺れている、
不気味、と光輝は思ったが、幽霊、超常現象、そういった物に光輝は目がなかった。
ワクワクしながらちかずく、
するとフアッ、と一瞬寒気がした、
いや、そうではない、何かが空を切ったような音、そして風。
「なんだ?」
そちらに顔を向ける、だがやはり、なにもなかった。
不審に思った光輝はその方向に足を向ける。
ドン!
「うわ!?」
なにか、生暖かい物にぶつかった。
今までなにもなかったはず、だが、光輝の前には、『背中』が出現していた。
「え・・・?え?」
少し混乱する、おれってこんな目悪かった?一応Aのはず。
そんな事を考えていたら『背中』から声がした。
「・・逃げなさい。」
だが、いきなり言われてもよく分からない。光輝は「へ?」と答えた。
がその理由を知るのと同時に、「腰が抜ける」の意味を知る。
まず、『背中』、もとい中年のオッサンが青っぽい《斧》を持っている事。
そして、オッサンが向かい合っている相手。
その相手はまさに影、と呼ぶにふさわしかった。
漆黒の体、夜の闇に溶け込んでしまいそうだ。
そしてそのシルエット。
「な・・・・なんだ、コイツ・・・?」
およそ二メートル、巨大な爪、鋭利な歯。
どこぞのRPGを思わせる風格。
ソイツに、オッサンは飛びかかる。が、飛びかかり方が半端ない。
10メートルほど跳躍し斧を振りかざす。
「おおおおおおおおおおおお!!」
だが、その一撃は影の爪によってはじかれる。
「くっ!」
オッサンは空中で身を翻し、華麗に着地した、
「何してる!早く逃げろ!!」
オッサンが俺に罵声を浴びせる、だが、出来なかった。
「おい!」
オッサンがもう一度叫ぶ、がそのとき。
ズシャアア!
赤い生命の噴煙が、オッサンのからだから吹き出した。
「ガハアアアア!!」
影が爪で切り裂いた、
「オッサン!!」
光輝も叫ぶ。
だが、
ズギャアア!
「あがはあああっ!!!」
もう一度、断ち切られる。腕と足が千切れて転がる
「うっ!」
光輝は吐きそうになるのを必死でこらえ、彼の元へ駆け寄った。
「おっさあん!!返事しろ!!」
重そうなまぶたを力強くあけて、最後にもう一度
「逃げろ・・・」
と言った。
「おっさん!オイ!おっさん!!おっさん!」
体を揺さぶる。だが、もう目を開けようとはしなかった。
「クソお!」
目の前の影は此方を見据えていた。
光輝は転がっていた斧を持ち上げる。だが、
ギュウウウううん。
そう音を立て、斧はみるみる小さくなり、球体へと姿を変えた。
「ボール!?」
球体の戦士、どこかで聞いた事があったが、この状況じゃ思い出せなかった。
球はパリン、と音を立てて崩れ落ちた。
俺・・・ここでこんなヤツに殺されんのか、そう思った。
ちらとおっさんに目をやると彼はなんと、青白い光に包まれていた。
「おっさん・・・?」
その青白い光はみるみる眩しくなり、見ていられなくなった、と。
その光は先ほどの球体となり、少し発光しながらころころと転がってきた。
まるで、使ってくれ、と彼が言っているようだった。
それを光輝は手に取る。
影が、爪を振り上げた。
「・・さんを・・・」
消え入りそうな声で・・・・
「おっさんを!」
そう叫ぶ。手の中の球体が輝く。
「かええせええええええええええええええええええ!!!!」
有らん限りの大声でそう叫ぶ。
大地を揺るがす。
感情に任せて影に飛びかかる。
その『右手』を振りかざした。