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破壊者は絆を断ち切らない  作者: 唐紅 那智
『銀の少女』
29/53

1-27 隠されたもの


「魔人…?」

 魅入られたように、『魔人』と呼ばれたものを見上げて、ティアは呟いた。

 その言葉は、ティアの知識にはないものだ。しかし、ひとつだけ。『魔人』を見た瞬間から、ティアは確信していた。

 あれは、傷つけるものだと。あれは、奪い取るものだと。あれは…倒さなければならない、と。そんな、確信が。

 ティアは、一歩足を踏み出し……

「退くぞ、ティア」

 レヴィンに、止められた。

「何でですか!? あんなの、放っておけないでしょう!? なら、倒さないと…」

「無理だ。少なくとも、今は」

「そんなの、やってみないと解らないでしょう!!」

 らしくない、弱気なレヴィンに、何故かティアは苛立つ。その言葉を聴かず、とにかくその『魔人』とやらに立ち向かおうとして…

「ティア」

 すぐ後ろから聞こえた、レヴィンの声。ティアは、咄嗟に振り向いて…


  ドン…ッ

「か…はっ……」

 腹に、鈍い衝撃。

 鳩尾に埋まる、レヴィンの拳。

 見上げた先には、無駄に美形なレヴィンの、めったにない苦しそうな顔。

 うっすら届いた、その声。

「アレは、『あいつら』じゃないんだよ。

 …何とかしておけ、『夕凪』の」


 そして、ティアの意識は暗転する。



 ぐったりと力の抜けたティアを支えて、レヴィンはティアの髪を撫ぜる。

「…ご存知だったんですね、僕のこと」

 どこか諦めたような、感情の抜け落ちた声で、セフィは呟いた。

「はぐらかすかと思ったが…意外と往生際は悪くないようだな」

「答えてください。どうして、僕のことをご存知なんですか? 僕は、表に出た覚えはないのですが…」

 言うセフィの声には、どこか焦りのようなものが感じられる。レヴィンはティアを抱き上げると、なんでもないことのように言った。

「情報なんて、どこからでも手に入る。特に…お前らみたいなのの情報は、気をつけて集めているからな。とはいえ、お前のような存在がこいつと一緒にいるというのは、予想外だった」

「それは…ティアさんのため、ですか?」

 レヴィンは、無言。それが、何よりも雄弁な答えとなった。

「俺からも、一つ問おう。何故、こいつと一緒に行動していた? …こいつが終焉属性だと知っていながら。他ならぬお前が、何故?」

「それ、は……」

 セフィは、そのまま押し黙った。レヴィンはそれを見ると、ふと肩をすくめて踵を返す。

「ティアは、目を覚ませば必ずあれに立ち向かう。それまでに…できれば、片を付けろ」

 赤々と燃え、天を突くように伸び上がる焔。肌を刺す熱気を背に受けながら、レヴィンはゆっくりと歩き出す。

 その背後で、セフィが無言で杖を構えた。



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