花のシャネル
赤紙なんかなかったんじゃ・・・なかったんじゃ・・・なかったんじゃ・・・。
朴黎都は、遠くのギターの音が、ギーギーとなっているのがわかっていた。
ビートをきかす。その役目は、ドラムである。
音と言っても音階はない。
それは、時々シンバルの音を鳴らす。
史実という記録は嘘なり。
エレキギターとクラシックギター、アコースティックギター、この音は、ピアノとは全く違うのだが、いつしか共鳴する。
機械音は耳障りだが、CDの時代に入って、人々は慣れていった。
アンサンブルではない、エレキギターは、完全なる脇役であったのだが、それが気楽だったらいい。
だがしかし、主役はボーカルであるバンドという協力は、いつしか解散という終末を迎えるのだ。
ドレミを知らなくても、音楽は語れるし、人気を得られれば、つまりそれはキャラクター性であるのだが、ヘタウマであろうと、彼は堂々としている。
それを、朴黎都は苦々しい思いで見ていた。
どこまでも調子に乗るなら、平和とは害ではないかとすら思う。
母親に認められるために生きるなら、それを病的と言わず何と言おう。
朴黎都は、意識の中にいた。
名が売れるより、自分自身でいたいとしたが、インターネットのSNSが、いつしか狂わす。
それはまるで、容赦なく毒していくのだが、朴黎都は、必ずその本質に戻るとする、それは、わずかなピアノ線にも似たものであり、強固なものであったのにも関わらず、社会というOSにやられた。
朴黎都は、ギターを託し、これを、「SOS」とした。
思想にはやられないが、バズるという特別感が、それの代わりだ。
駐車場がわかりづらく、ようやく止めて降りると、なぜかじろじろと若い女たちに見られた。
(車のせいじゃろか?)と、花は思い、改めて車を見た。
年代物の黄色のワーゲンゴルフ社は、確かに目立っていた。
「やぁ、暑いわぁ」と、蛍が扇子を広げた。隣の黒のBMWから谷田が先に降りて来たあと、ルイヴィトンにサングラスをかけた皆伐が降りてくると、その女たちは目を丸くして皆伐の方を見た。
「皆伐さんのルイヴィトンが光ってるなぁ」
楠木がそう言って、バッグからサングラスを出して、「花、はい」と言った。
(黒いサングラス・・・)
花が戸惑っていると、蛍が言った。
「これも、ビトンじゃけ?」
楠木が、「花のシャネル」と言ったあと、自分は、ブルーのサングラスをした。
楠木が先頭切って歩き出した。
花がいつまでもサングラスを手に持っていると、後ろから歩いて来た谷田が、花のサングラスを黙って取ってかけた。
黒澤は、楠木と何やら話しながら先頭を歩いていた。
蛍が再び、「暑いわぁ」と言い、扇子でパタパタとあおいでいる。
「近頃流行りのファンは、持ち運びにはいいけど、実際のところ、札幌の人への試しじゃけ」
谷田が面白そうに言った。
皆伐が、「さて、お手並み拝見と行きますか」と、幾分苦々しく言い放った。




