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どうでもいい  作者: 中村ゆき


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本作はフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません。

 じっとりとした暑さが肌に気持ち悪い。梅雨明けのニュースはまだない。定刻より二分程遅れて到着した電車には、既に出入口いっぱいまで人が詰め込まれていた。白い丸印の内側には列が作られていたが、車内の人達は、当然詰める様子もなく、並んでいる人達も「すみません」の一言もなく乗り込んでいく。

 雨の日の通勤電車はいつもに増して不快だった。傘に付着した雨水がスカートの裾に、足の甲に、パンプスの先に、ぼたぼたと落ちていく。パーソナルスペースが消え失せた車内は、ただでさえムッとしているのに、乗車率と湿度が上がって余計に空気が淀んでいる気がした。斜め後ろのおじさんの苛立ちが、隣のお姉さんに感染して、その苛立ちが私に感染して、そしてイライラが車内全体に蔓延していくようだった。

 車内の窓ガラスに反射した私の顔に目をやると、前髪が横に不自然にはねていた。どうでもいい。どうせ車内でも社内でも、私の外見を気にする人なんていないのだから。入社当時は髪を巻き、簡単に化粧もしていたけれど、いつの間にか髪の毛は黒のゴムで一本結び、かろうじて眉毛を描いただけの顔が当たり前になっていた。だから今更前髪が発芽玄米になろうが、どうでもいい。どうでもいい。どうでもいいけど、なんだかやる気がさらに削がれた気がした。

 車体がのっそりと揺れ、会社の最寄り駅に着いた。ドアが開き切る前から、人人が我先にとホームへ足早に降り立っていく。まるで電車の吐瀉物のように吐き出された私たちは、今度は会社のエナジードリンクとして吸収されにいくのだった。


 駅からの道はさらに憂鬱だった。つぎはぎの歩道はそこここに水溜りをつくっていた。私は水溜りを避けるか、人を避けるか悩んで、いつも足元を濡らしていた。足の甲の部分が大きく開いたパンプス用の靴下に水が染み込み、ぐちゅぐちゅと小さな音を立てていた。はやく何もかも脱ぎ捨てたい気分だった。気持ち悪さを我慢して、会社までのまっすぐな道をただ無心で歩いた。「眺めの良い高層階のオフィス!」がウリの会社は、駅から少し遠いのが難点だった。

 会社に着くと真っ先に新しい靴下と社内用のスリッパに履き替えた。マイナスの気持ちをゼロにリセットするほどの力はないが、それでもいくらかはマシだった。雨水を吸い込んだ靴下は、ビニル袋に入れて鞄の奥底に押し込んだ。執務室の扉を開けながら、おはようございます、と控えめに声を出した。まだ人がまばらな社内からは、パソコンのキーボードを打つ音だけが小さく聞こえてくるばかりだった。

 郵便物の仕分け、執務室内の掃除機かけ、観葉植物の水やり、給湯室の掃除。毎日始業時間までにやるべきことは、わりにたくさんあった。朝のあれこれは、総務部の下っ端がやると決まっていた。会議室の机を拭いていると、後ろから「おはよう」と声がした。同期の芹沢結香子だ。黒いニット素材の半そでのポロシャツに、白いまだら模様が散らばった鮮やかな緑色のロングスカートを履いていて、結香子が動く度にスカートの細いプリーツがゆらゆらと揺れた。

 結香子は私よりも三ヶ月遅く入社してきたので、厳密に言うと同期というではないのだが、私たち中途採用組にとって三ヶ月という期間は誤差の範囲内だった。結香子は大学卒業後、就職はせずにフリーター生活を送っていた。がむしゃらに働いては海外旅行に行き、またシフトを詰めては海外へ、という生活を続けていたらしい。うちに正社員で入社したのは「親がせっつくから、まあとりあえず」ということだった。

 結香子と私の共通点は、フリーター上がりと入社時期が近いこと、あとは同い年ということくらいで、それ以外のことはたいてい異なっていた。私は理系科目はまるで駄目で、数学や物理と聞くだけで拒絶反応が出てしまうほどだったが、結香子は工学部の出身で、入学試験の数学や物理は満点じゃないから「よくない出来だった」と話すほどだった。性格もまるで違っていた。私は内向的で人と話すのは得意な方ではなかったが、結香子は誰とでも分け隔てなく話し、先輩社員ともすぐに打ちとけていた。一方で、特定の誰かと深い仲になる、贔屓にされる、ということはなく、社内の込み入った人間関係からはうまく距離を置いていた。それが彼女の人気を後押ししているようにも思えた。そんな彼女が、業務外で唯一ご飯に行く社員が、不思議なことに、この私だった。共通点はわずかだったが、この総従業員が五十人に満たない小さな会社で、距離を縮めるにはそれで十分だったのかもしれない。人気者の彼女が、それなりに親密にしてくれているというのは、私の密かな誇りだった。

「おはよう」

「今日って一日中雨なんかな。雨やと湿気で髪の毛まとまらんからいややわあ」

結香子は綺麗にカールした前髪の一筋を、艶々と光る薄緑色の指先でなぞった。

「ほんまにそれやな」

私は自分の前髪を手のひらでぎゅっと額に押し当てた。

「新しいヘアオイル買ったらから、うきうきで付けてきたけどなあ」

「そうなん、どんなやつ?」

「なんか最近よく見るやつ。えっとなー、どこのやったかな、名前出てこん。あ、これこれ」

結香子は鞄からスマホを取り出し、滑らかな動きで画面を何度かなぞると、その画面を私の方に向けて差し出した。近所のドラッグストアではまず見ないブランドのものだった。

「あー、なんか見たことあるかも」

「やろ。めっちゃいろんな人使ってるよな。まあ匂いはいい感じなんやけど」

「ほんまや」

確かに結香子からはいい匂いがした。バニラのような甘ったるいものではなく、爽やかですっきりとした、初夏を感じさせる植物のような香りだった。

「てか、魚住今日週次ミーティングちゃうん」

「せやねん。ほんま地獄」

「おつかれ。せめて部長がご機嫌やったらええな」

「せめてな」

結香子は気合入れてこ、ときゅっと口角を上げた。それにつられて、私も自然と口角が上がった。今日初めて顔の筋肉を動かしたような気がした。


 会議室の机を拭き終わり、給湯室のシンクを洗って、出しっぱなしになっていた社員のマグカップを食器棚に片づけて自席に戻ると、机の中央には赤や緑といった色とりどりの菓子の箱が積みあげられていた。積み上げた主は恐らく宮治さんだろう。入口すぐの「お誕生日席」に座る宮治さんに目をやると、いつも通りしれっとした表情で、軽く頬杖をつきながらパソコンの画面を見つめていた。画面の奥に宮治さんが自作したらしいパソコンの大きな箱がショッキングピンクの光を放っているのが見えた。パソコンのキーを叩き、社内のチャットツールを立ち上げ、宮治さんの名前を選択した。

『お菓子、いつもありがとうございます!』

少し考えて、にっこり笑った黄色い顔の絵文字を付け足して送信した。ちょっとの間もあかずに、相手が文字を入力していることを示すドットがちかちかと点滅した。数秒して、宮治さんの返事が表示された。

『はて、なんのことですか。僕はそんな優しい人間ではないですよ』

『またまた』

『僕は人ん家で借りたセガサターンを壊して返すような男ですから』

宮治さんのメッセージの下に笑い泣きの表情を浮かべた黄色い丸を付けて切り上げ、サイドデスクの二番目の引き出しに菓子を詰め込んだ。そこには以前もらった菓子の未開封の袋がまだいくつか残っていて、新しい菓子の山を押し込むと引出しの中のほとんどが菓子で埋まった。捨てる気にも食べる気にもなれず、とりあえずそのまま引き出しの中に閉まっておくことにした。

 爽やかな曲調の音楽が執務室内に響いた。何年か前に当時の新入社員が作った簡易チャイムだ。就業時間を知らせるためのもので、設定した時刻になれば、その時々に合わせた曲が流れる仕組みになっていた。始業時間を知らせる音楽はどこか外国の民謡らしい。どこでも聴くようなありふれた音楽じゃなくてよかったと心から思う。八時五十七分。少しはやいが、その時間の修正をする社員はいない。製作者の社員は、私が入社した頃にはもうすでに退職していて、私はその人の顔も知らなかった。


 総務部の週次ミーティングは毎週水曜日と決まっていた。ちょうど週の真ん中に実施すれば、「ミーティング前にはブーストをかけやすく、ミーティング後には確認しあった内容を即時実行しやすいから」という部長の考えから水曜日に決められたらしかった。月、火の疲労が確実に蓄積されている上、土日はまだ遠く、さらにミーティングまである水曜日は、私にとって一番憂鬱な曜日だった。

 たった二人しかいない総務部で、毎週きっちりとしたミーティングの場を設ける必要があるのかは、入社してからの疑問だったが、異議を申し立てて得られる成果と部長からくらう攻撃との釣り合いを考えると、天秤にかけるまでもなく答えは明白で、何も言いだす気にはなれなかった。準備を終えると、定刻にはまだ十分ほど余裕があった。業務用のノートパソコンを開き、画面を見るともなく見つめながら、頭の中で報告内容と想定されるそれに対する部長の指摘を何度も行き来させながら二人を待った。定刻五分前、脳内の部長ラリーが失敗したところで、渡辺さんが入ってきた。

「おつかれさまです」

「おつかれさまです」

少しの間、沈黙が流れ、パーテーション越しに電話の音が響いているのが聞こえた。一回、二回、三回。

「電話、鳴ってますね」

「基本私たちでとってますもんね」

「ですよね」

また少し沈黙が流れた。

「あ、部長、来そうな感じでした?」

「やー、普通にパソコン叩いてましたよ」

「呼んできた方がいいですかね」

「いつもだいたい時間ぴったり来ますし、十時まで待って、こなければ呼びに行ったらいいんじゃないですかね。五分前行動とかしない方じゃないですか」

「あ、そうですね」

渡辺さんのことは嫌いではなかったが、渡辺さんといる時は、つい何かを話さなければ、という切迫感に襲われた。


 渡辺さんの言った通り、定刻ちょうどに部長は席に着いた。私は小さく咳ばらいをした。

「それでは、週次ミーティングを始めます。まずは部長から、お話お願いします」

「はい、えー今日は、先週お邪魔したアクトクローバーでの話をしようと思います」

議事録担当の渡辺さんは、眼鏡の黒い縁の角を人差し指の第二関節で上げなおし、銀色のノートパソコンをカタカタと鳴らし始めた。ミーティングはいつも部長の「お話」から始まる。どんな「お話」になるかは、事前には聞かされない。ただの感想発表会になるか、それとも突拍子のない要望が飛んでくるのか。「お話」を聞いている間も気は抜けなかった。

「アクトクローバーの部長とは、高校が同じで、向こうが、確か三個下だから、同じ時期に学校に通ったことはないんだけど、高校の同窓会を通して知り合って、いろいろと仕事の相談を受けたり、こちらも意見を聞いたりしてるんだけど。この前は人事評価のやり方について、ちょっと相談を受けた関係で、社内にお邪魔したんだけど、そこで会った新入社員の子に非常に感動しました。まず、僕が事務所に入っていった瞬間にすぐに駆け寄ってきて、挨拶してくれて、それもこう、ハキハキした感じで。挨拶だけでなく、うちの会社の事業についても事前に調べてたみたいで、いろいろと良い質問をしてくれて。聞けば、社外のセミナーとかにも積極的に参加して、他業種にも人脈を作ってるみたいで、すごいなあと思いました。うちの社員は、まあ、良く言えば、静かで大人しい人が多くて、昼休みも自分の席で一人でご飯を食べてる人も少なくないですが、それは勿体ないなあと改めて思いましたね。ただ与えられた仕事をするだけではなく、ね、ぜひ積極的に外に出て、いろんな人と交流して、知見を広めてほしい、そしてうちの事業に還元してほしいなあと思います」

「ありがとうございます。では、次に渡辺さんから、ご報告事項お願いいたします」

比較的軽い内容で済んだことに、内心ほっとしながら、渡辺さんに報告を促した。

「はい。まず契約関係についてご報告いたします。スエナガ管理様との契約ですが、内容は合意いただいており、契約書の返送待ちになっております。次に、」

渡辺さんは淡々と業務の進捗について報告していく。

 真面目に、こつこつ、きっちりと、それが彼女の仕事ぶりを表す言葉だった。やるべきことや期限を全てリスト化し、進捗があるごとにリストの中身を一つずつ更新している。後でまとめて、なんてことはしない。フォルダも渡辺さんの担当のものは一目で分かった。三階層に分かれていて、通し番号がふられ、常に最新状態に更新されていて、余分なデータは一切ない。ほとんど同じファイル名で、違いと言えばファイル名の後ろにくっついている「最新版」だとか「ver.2」だとか三日違いの日付の羅列くらいしかないようなデータが三つも四つも混在している、なんてことは渡辺さんに限ってはあり得なかった。

「最後に、夏季インターンシップの課題についてですが、簡易なアプリ開発とプレゼンを予定しておりまして、」

渡辺さんが言葉を区切った隙に、部長が割って入ってきた。

「その内容って去年と同じだよね。毎年同じものやっててもおもしろみもないし、興味持ってもらえないと思うので、もっと新しいものを提案してほしいね」

「あの、こちらのインターンは応募ページの掲載内容について、先週部長にメールで確認いただいておりまして、その際に課題内容についても承認を、」

「いや。あのね、質問は、今言ったインターンの内容は、去年と同じですよね、ってことなんだけど。同じです、違います、どっち」

ほんの少し間が開いて、渡辺さんは「同じですね」と低い声で答えた。

「だったら新規性のあるものに変えてください。応募ページの文面なんて差し替えればいいだけの話でしょ。やらない言い訳を考えるんじゃなくて、どうやったらできるかを考えて」

「承知しました」

渡辺さんの眉間に小さく皺が寄ったのを、私は見逃さなかった。

「ありがとうございました。続いて、私から報告ですが、」

素知らぬ顔で、淡々と報告を続けようとした私の言葉を、部長が遮った。

「あ、その前に魚住さんね。澤田が残業代についていろいろ言ってきててね。まあ要するに、残業代の算出基準の時間が、切捨てになってるのはおかしいって言ってるんだけども。うちは就業規則で決まってて、ずっとこのやり方できてるから、ちゃんと間違ってないって説明しといてね。澤田も何年も在籍してて、何を今さら、って感じやけどね。車でも買い替えるんかな。あと有休の申請も。新人がギリギリに申請出して来てたけど、普通休暇って計画的にとるものだからね。基本的には一ヶ月前。それもちゃんと言っておいてね。えーっとね、あと何だったかな。あ、そうそう、フレックスの社員についてなんだけど、何の連絡もなく九時半とか十時とかに出勤してる社員がいて、それも注意しといてね。フレックスを遅刻の言い訳に使わないように」

「はい。承知しました」

報告前に想定していなかった話になり、私がペースを乱されてしまったのか、部長が勢いづいたのか、その後の進捗報告では、一つ話をする度に部長から長い指摘が入った。「承知しました」「改善します」「考えてみます」。通り一辺倒にも聞こえる返事を繰り返す私に、部長からさらに嫌味でも飛んでくるかと思ったが、

「あとで賞与データ送ってね。急がなくていいから。えーっと、二時までに送ってくれればいいよ。それまで会議で、終わるまで確認できないだろうから」

とだけ伝えられ、ミーティングは終わった。「無事」終わったとは言い難かったし、やるべきことは山ほど増えたが、また一週間分延命治療を施されたような気分だった。


 正午を過ぎ、雨足はさらに強まった。最寄りのコンビニエンスストアにお昼を買いに行くまでの数分間で、朝履き替えた靴下は、鞄の奥底のそれと、全く同じ状態になっていた。

 私はうんざりしながら、エレベーターを横切り、地下の喫煙所に向かった。喫煙所は四畳半ほどのスペースに、赤いスタンド灰皿と座席部分の革が破れた茶色のソファが置かれていた。照明は薄暗く、ゆったりできる場所ではないが、あまり人が寄り付かないところは気に入っていた。扉を開けると先客がいた。宮治さんだ。

「お疲れさまです」

と声をかけると、宮治さんはスマートフォンの画面から目線をあげ、

「おお」

と軽く返事した。声をかけられて初めて気づきました、という風を装っているが、多分私が扉に手をかけた時から気づいていたと思う。いつも上着替わりに羽織っている会社支給のブルゾンの胸元からは、トレードマークとも言えるファンシーなキャラクターもののTシャツがのぞいていた。拳三つ分スペースを空け、宮治さんの横に座った。煙草に火をつけて煙を吸いこむと、脳の中にまで毒が茶色く染み込んでいくようだった。

 喫煙者になってから数年経つが、いまだに煙草の良さは分からないままだった。大学時代、マッチングアプリで出会った男に勧められたのが始まりだった。就活が始まったばかりだというのに、すでにリクルートスーツに嫌気がさしていた私とは対照的に、社会人二年目に差し掛かろうとしていた男は、パーマをあてた黒い髪をツーブロックに刈り上げ、青色のスーツと明るい茶色の革靴を嬉しそうに身にまとっていた。その男の話は、あまり私には響かなかったが、「喫煙所のコミュニケーションって馬鹿にできへんから」という言葉だけは何故か聞いてみてもいいかもしれないという気になった。男にもらった煙草は、強いメンソールの味がした。

 宮治さんと初めてまともにしゃべったのはこの喫煙所だった。その時は今とは逆で、私が一人で煙草を吸っているところに宮治さんが入ってきた。最初は私のことなど見えていないような態度だったが、「お疲れさまです」と声をかけると少し間があってぼそっと「お疲れ」と返事があり、煙草が短くなるにつれ、口数は増えていった。そして、私が喫煙所を出る頃には宮治さんの好きな球団まで知るところになった。マッチングアプリの男は名前も思い出せないが、彼の言っていたことはそんなにも的外れではなかったのかもしれない、と思った。

 宮治さんが二本目に火をつけたところで、声をかけた。

「外、どしゃぶりでしたよ」

「ああ、そう。僕雨男やからね」

「どういうことですか」

「今日、石川が先発で投げる予定やったんよ。ソフトバンクぼこぼこにすんの楽しみにしとったんやけどね」

「ああ、なるほど。中止ですね、これは。どんまいです」

「君全然気持ちこもってないね。お母ちゃんのお腹の中に感情置き忘れてきたんちゃうの」

「そうかもしれませんわ。ちょっと宮治さんとってきてください」

「手間賃とるよ。高いよ」

「いくらですか」

「二万七千円」

「ぼったくりですやん」

「京都水族館の一番でっかいオオサンショウウオのぬいぐるみがちょうどそのくらいの値段なのよ」

根本まで燃え切った煙草を灰皿に捨て、

「ほな、戻りますね」

と宮治さんに声をかけると、宮治さんは「がんばって」と右手を軽く上げた。


 梅のおにぎり、カップの味噌汁、アロエヨーグル。昼食を机の上に取り出し、空になった袋をよけると、袋の外側についた雨水が机の上に小さな水溜りをつくった。一応休憩室も用意されてはいたが、部長の言う通り、利用率は低かった。抱えている業務量が多いため昼食をとりながら業務をこなす、苦手な先輩や上司に話かけられたくない、移動するのが面倒くさい、理由は様々だったが、自席で昼食をとる社員がほとんどだった。私も例にもれず、お昼は自分の席で食べた。一時間もゆっくり休憩をとっている暇はない、というのが主たる理由だった。

 お湯で味噌を伸ばしながら、社長に送る予定の賞与データを開いた。最終チェックを残すのみとなったデータには、社員の名前と賞与金額が並んでいた。髙橋さん。社歴十二年で、うちの会社ではかなりのベテラン枠だ。金額はタブレット一台分ほど。古田さん。部長に期待されているともっぱらの噂である若手社員。金額は自動車免許が辛うじてとれるくらいだろうか。松田さん。古田さんの直属の先輩にあたるが、金額はゼロ。賞与の支給がない社員は珍しくなかった。

 求人欄には「年間賞与額二ヶ月分以上」と書かれていたが、それが間違いであることは入社三日目に判明した。私の前任の社員が言うには「月給換算すればそういう社員がいないことはないよ」ということだった。膨大な量の業務の引継ぎを二ヵ月で終えた彼女は、清々しい顔で会社を去っていった。

 賞与というよりは、インセンティブに近い仕組みで、達成条件は複数あり、いずれもかなり厳しいように思う。ただ売上目標を達成すればいいというものでもなく、プライベートの時間を割かなければ到底達成できないだろうというような条件もあった。達成できていない社員が不真面目で怠けているというわけではない。むしろ、私からすれば、どの社員も勤勉で真面目な社員に見えた。

 社員の名前と、その横に並ぶ控えめな数字を交互に見ていると、この人は小さな子どもが二人いるのにだとか、この人は春に体を悪くしていたはずなのにだとか、そんなことが浮かんでは消え、浮かんでは消え、気が滅入った。私は昼ご飯のゴミを袋にまとめると、その余計な考えと一緒に机の横のゴミ箱に突っ込んだ。そしてこれは単に文字と数字の羅列だと思うように努めた。正しい数字が当てはまっているか、計算は間違っていないか、それだけをただ確認するだけのことだ。


 時間どおりに部長に明細データを送り終えると、チャットの通知が赤く灯った。送り主の名前だけ確認して、メッセージは確認せずに、お気に入りに登録してあるホテル予約サイトを開いた。来月には全社員が集まる全体会議がある。とりあえず出席確認が取れている人の分だけでも今のうちに、少しでも安い金額で予約しておかなければ、後々面倒なことになる。会社の最寄り駅の名前を空欄に入力し、検索ボタンを押すとホテルの名前がずらずらと並んだ。前回予約したところと同じホテルをとって終わりにしたいところだったが、以前に社員から「なんかあのホテルと相性悪いんだよねえ。悪いんだけど、他のとこも探してみてくんない?」と言われていたことを思い出し、仕方なく検索結果から別のホテルを探した。会社からも、会議終わりに予定されている宴会の会場からも近くて、きれいで、朝食がついていて、安いところ。ホイールをくるくると回していると再びチャットの通知が上がった。送信者の名前を確認すると先ほどと同じ藤井だった。少し悩んでメッセージを開いた。

『おつー』

『今忙しい?』

社内のチャットツールなのだから、要件だけ書き込んでくれれば適当なタイミングで対応するのだが。煩わしく思ったが、藤井は社外広報用の写真に快く映ってくれる貴重な社員なので、あまり邪険にもできない。

『おつかれさまです!

大丈夫ですよ。何かありましたか?』

とりあえずそれだけ打ち込み、また予約サイトに画面を移した。あわよくばこのまま一時間くらい返事がなければいいのにと思ったが、通知マークがちかちかと私をせっついた。

『賞与ってもう金額確定した?』

『一応確定しましたよ』

『俺何位だった?笑

 てか一位だれ?笑』

うざったいと思ったが、藤井は社内のネットワークトラブルに快く対応してくれる貴重な社員なので、あまり邪険にもできない。

『ご想像におまかせします笑

 藤井さんのは明細をお楽しみにしててください笑』

『楽しみにできる金額ではあるってこと?わら

 前より増えてたらご飯おごってあげるわ笑』

『太っ腹ですね笑』

藤井の入力中を意味する点滅を無視して、画面を予約サイトに戻した。数十文字打ち込んだだけなのに、なんだかどっと疲れた気がして、結局新しいホテル探しはやめにすることにした。予約履歴から前回予約したホテルの情報を呼び出し、日付とプランを選択した。数百円程度だが昨年よりも安くなっていた。空き部屋も人数分以上ありそうだ。部長にお伺いを立てる連絡を入れると、返事はすぐに返ってきた。『これで予約してください。』一ラリーで済んだことにほっとしながら、金額が変わらないうちに予約フォームに予約情報を打ち込んでいく。宿泊する社員の名前とメールアドレス、会社の代表番号、チェックイン時間を入れ、人差し指で画面を上から順に何度もなぞり、間違いがないか確認した。私生活でも宿泊や飲食店の予約をするのは好きでなかった。予約できていなかったらどうしよう、同行者に迷惑はかけまいだろうか、そんな不安や心配事が、旅の楽しみを上回ってくるからだ。だからといってその負担を人に押し付けるのも、罪悪感に襲われるのだが。

 予約し終わると、今度は会社のホームページのアクセス解析画面を開き、グラフや数字、カタカナの羅列がずらずらと並んでいる様を見つめた。先週うちのホームページが見られた回数と人数は。どこから入ってきてどこのページで離脱したのか。どんな言葉で検索されたのか。先週更新したブログからの流入はどのくらいか。最終的に問合せに繋がった割合は。何度見ても、どこをすくい取っても結果は芳しくなく、ぎゅっと眉間に皺が寄った。とにかく来週は少しでも数字を良くしなければならない。書き溜めていたブログの下書きのデータを開き、キーワードを修正し始めた。何をどこから手をつけたものかと悩んでいる暇もなかった。


二十時を少しまわったところで結香子からチャットがとんできた。

『今日はもう諦めたわ

 ご飯いかん?』

手で大きく丸をつくった絵文字だけで返事を返した。下書きに保存していた日報メールを書き上げて、文面を二度読みなおした後に送信し、全てのウィンドウを閉じた。念の為パソコンの電源はつけておいた。こうしておけば、帰宅後に何かあっても対応できる。もちろん、何もないに越したことはないが。私が席を立つとほぼ同じタイミングで結香子も席を立つのが見えた。執務室の外に出て「お疲れ」と短く言葉を交わし、店の相談をしながらビルの外に出ると、雨は上がっていたが、じっとりとした風が顔にまとわりついた。

 地下街を抜けて、何度か行ったことのある居酒屋へと向かった。道すがらにある店店の光やポスターが目に痛いほど明るかった。この時期の街は色めきだっているように見えた。そして同時に、昼間見た「賞与」の数字の羅列が頭を横切った。この華々しさは自分に向けられたものではないと感じた。


 目当ての居酒屋は、「ちょうどいい」店があると結香子に教わった店だった。たこわさ、水茄子みょうが煮、とり天チリソース、それから私にジンジャーエール、結香子に生ビールを注文した。下戸な私とは違い、結香子は日本酒も焼酎もウイスキーも、なんでもよく飲んだ。特にビールを好んで飲んでいるようで、締め間際にビールを頼むこともよくあった。結香子いわく、「ビールにはいつでも戻ってこれる」らしかった。店内は程よく空いていて、すぐに飲み物とお通しが運ばれてきた。今日のお通しはセロリの浅漬けだった。お通しにキャベツや枝豆が出てこないこの店がすきだった。

「もうほんまにいい加減にしてほしいわ」

そう言って結香子はセロリを一口齧った。結香子の最近の話題はもっぱら宮治さんの話だった。他部署で席も遠い私は、のらりくらりとした付き合いで済んでいるが、結香子にとって宮治さんは直属の上司で、会社にいる時間のほとんどを宮治さんと共有せざるをえず、それゆえに宮治さんの「毒」を避けきれないところがあるようで、それは彼女にとって相当なストレスになっているようだった。

「何のために逐一確認とってると思ってるん。提案書も見積もりの金額もあなたが直せって言って、あなたが最終オッケーも出したんですよね?って話やん。ほんまに意味が分からん」

結香子は水分補給をするみたいにビールをぐびぐびと飲んだ。そして右手の人差し指を立て、その指をこめかみの横あたりで左右にゆらゆらとゆらしながら、「はてなはてな、って感じやったけど、」と言葉を続けた。

「お客さんの前で言い合いしだす訳にもいかんし、肩書ついてるおじさんと新人の私やったら、そりゃお客さんもおじさんの話の方聞くし。いや、それはしゃあないねんけど。結局私がなんか全然分かってないやつみたいな空気になって終わったわ。ほんまあの準備の時間なんやったん」

怒気を含んだ言葉を続ける結香子の横に、店員が失礼します、と遠慮がちにたこわさを置いた。

「ていうか俺が責任とるから、って言うけど責任とるって何してくれんの、具体的に。責任って言葉でやるべきことあやふやにせんといてほしいわ」

相槌を打ちながら、たこわさを口に運ぶと、山葵の欠片がカリッと口の中ではじけて爽やかな苦味が広がった。お酒が飲めなくてもたこわさは美味しかった。


「え、てかミーティングどやったん。部長ご機嫌やった?」

宮治さんの話を一通り終えた結香子が、私の方を見遣った。

「全然あかん」

「うそ」

「いや、ある意味ご機嫌やったんかも」

「ご機嫌すぎた?」

「え、そう。そうかも」

「めっちゃいかれた?」

「いかれた。いかれた、けど、今日は渡辺さんの方がかわいそうやったかも」

「え、なになに」

私は渡辺さんがインターンシップの内容について再考を促された顛末を語ると、結香子は分かりやすく顔を歪めてみせた。

「えー。渡辺さんかわいそー。それはキレていいで」

「ここにちっちゃく皺寄ってたわ。部長気づいてなかったけど」

「いや、気づけよ。逆に」

結香子は店員がこちらに近づいて来ているのを見ながら、残り僅かになったビールを飲み干した。予想通り私たちの席までやってきた店員からとり天を受け取ると、結香子は剣菱を頼んだ。

「え、あれは、今日のお話は」

「なんか高校の後輩の会社の話。アクトクローバーってとこの」

「ああ、ちょいちょい聞くなあ。嵜本さんやろ。高校の後輩の」

「そうそう。そこの新入社員大絶賛話やった」

「めっちゃ陽キャなん?」

「まあ概ねそう」

「やっぱり。部長陽キャすきやもんなあ。自分陰キャやのに」

「でも言うてたで。うちの社員は、静かで大人しい人が多いですが、って」

私が身振り手振り部長の物まねをすると、結香子は「誰が言うてんねん」とゲラゲラと笑った。


 家に着くとすぐに風呂場に向かった。いつもなら真っ先に重い体をベッドに沈めるところだったが、今日は飲み会で高揚した心がうまく体を駆り立てた。軽く洗い流した浴槽に勢いよく湯をためながら座り込んだ。ほぼ正方形に近い浴槽は、足を三角形に折らなければ体がおさまらなかったが、それでも徐々に湯が体を飲み込んでいく感覚は気持ちがよかった。

 大学時代は銭湯にもよく行った。漫画が読める部屋やメニューが豊富なレストランがついているような銭湯ではなく、民家の中にぽつんとあるような銭湯だった。人気の少ない夜遅くに、広々とした浴槽を独り占めしていると、現実の嫌なこと全てから逃げられるような気になれた。高い天井をぼーっと眺めてながら、少し熱いくらいの湯に体をどっぷりと沈めていると、すきなバンドの音楽とすきな監督の映画のことだけを考えて生きていけるような、そんな気になれた。今住んでいる家の近くにある銭湯は外から覗いただけだった。その時は、五十代後半に見える浅黒い肌の男性が番台に立っていて、常連客らしき恰幅の良い男性と何かを親し気に話しながら、外まで聞こえるほど大きな声でガハガハと笑っていた。それからかなり経っているが、何となく行かずじまいになっていた。

 しばらく湯舟に使った後、じんわりと温まった体を浴槽から出し、頭からシャワーのお湯をかぶった。湯がシャワーヘッドから流れる音が、先ほどよりも大きく響いて、心地がよかった。シャンプーを泡立てていると、電話の鳴る音が微かに聞こえた。こんな時間にかけてくる人は、一人しか思い当たらない。当たっていてほしくはないけど、多分私の予感は当たっているだろう。先ほどまでの心地のよさは一気に失せ、居酒屋で食べたとり天の油が胃の中でぐるぐると渦巻いているような気持ち悪さを感じた。急いでシャンプーを流して脱衣所に出た。画面には予想通り「母」の一文字が表示されていた。水滴を拭うのもそこそこに、バスタオルを体に巻き付け、受話器マークをタップした。

「はい」

「あんた電話くらいすぐに出えや」

開口一番に母の口から出たのは、もしもし、でも、元気?でもなかった。

「ほんであんたいつ帰ってくんの」

いつも通りの刺々しい声。

「もうあたしお父さんの相手すんの嫌やで」

数年前に会ったきりだというのに、苛立った母の指先までが、詳細に思い浮かんだ。

「あんたもおばあちゃんの世話しいや。なんであんたの世話もしてお義母さんの世話もせんとあかんの。あたしばっかり」

母からの言葉に無視するでもなく、返すでもなくしていると、母は「聞いてんの」と一層声を荒げた。しまった、と思った。相槌らしきものでそれとなくやり過ごせる日と、何をしても手をつけられない日があった。今日はどうやら後者に近い日のようだった。

「最初の会社辞めたときに帰ってきてこっちで仕事探せばよかったやろ。仕送りもしてくれんと。白石さんとこは娘さんがボーナスで温泉旅行連れてってくれたって。もうあたしどんな顔して聞けばいいか分からんかったわ」

白石朱莉ちゃんと私は、小学一年生の時に同じクラスになっただけで、すれ違えば挨拶はしたが、とりわけ仲が良かったという訳ではなかった。が、どういういきさつがあってか、母親同士は仲が良く、母の口からはよく白石さんの名前が挙がった。そのおかげで、というべきか、朱莉ちゃんが私立の中学に行ってしまってから、私たちはすれ違うことすらなくなったのに、私は朱莉ちゃんの近況にうんざりするほど詳しかった。今は東京に本社がある某大手商社で働いていて、某大手銀行に勤める「爽やかな」彼氏と婚約中。休日は大学時代の友達と登山に励んでいるとのことだった。母が朱莉ちゃんのことを、まるで本当の娘のことのように嬉しそうに話して聞かせるたびに、私は性懲りもなく胸が痛んだ。もう母に愛されたいとは思わないけれど、一生叶わない願いを望み続ける母がかわいそうで、出来損なったことが分かっているのにどうすることもできない自分が情けなくて仕方がなかった。

「あんた今月なんぼもろてんの」

まるで早送りのような母の声が頭に響いて冷たい。あー。あー。あー。こういう時は脳内に自分の声を木霊させる。相殺なんてされてくれやしないけど、気休め程度にはなった。

「ほんまなんでこんな子に育ってもうたんやろなあ。お金もかけたったのに」

電話口でも母の大きなため息がはっきりと聞こえた。

「あーあ、生まれたばっかりの時は天使みたいやったのになあ」

母の決まり文句だった。その後、捨て台詞のように二、三言何か喚いて、電話はブチっと唐突に切れた。部屋は元の静寂を取り戻したはずなのに、心がチリチリとざわめき立っていた。どっと疲れがのしかかり、そのまま脱衣所に座り込んだ。体は冷え切っていたが、シャワーを浴びなおす気にはなれなかった。

 母は「帰ってこればよかった」と簡単に言ったが、私からしてみれば母に強く反対されたが、父に頼み込んで保証人になってもらい、やっとの思いで出た家で、戻る気はなかった。休みの日も含めて、ほとんど家にいることがなかった父は、私にとっていないも同然の人だったが、この時ばかりは父に感謝した。

 ドライヤーの音がうるさい、無許可で菓子を食べるな、目覚まし時計の音がうるさい、私の言動が母の機嫌を損ねる度に、母は私がいかに無能で、どれだけ母の迷惑になっているかを低い声で言い聞かせた。そして私の髪の毛を引っ掴み、家の中を引きずり回し、時々家の外へ放り出した。小学生だった私は、家から追い出された子だと気づかれるのが恥ずかしくて、誰か人が通る度に、私はちょうど家に帰ってきたところなんです、といった風を装って、自転車を定位置に戻すふりをしてみたり、インターホンに母が出てくるのを待っているふりをしてみたりした。あるいは、逆に、たった今家から出てきたところなんです、という顔で、この後扉から出てくる母を驚かそうとしているやんちゃな子のふりをしてみたり、駐車場の横にある小さな花壇の土を、種や球根など何も埋まってはいないのに、興味津々な表情でいじってみたりした。当時の私にとっては、そしてひょっとしたら母にとっても幸運なことに、実家は閑静な住宅街の中にあったので、私が外に放り出されている間、家の前を通る人はごくわずかだった。家から追い出される記憶を探ると、その季節は決まって冬で、どうやって家に戻してもらえたかは、いつも思い出せなかった。

 のそのそとTシャツを着て、パジャマの長ズボンに足を通していると、私用のスマートフォンに入れている社内チャットのアプリの通知が鳴った。

『このブログの日本語がおかしいです。これでは中国人が書いたような文章に見えるので、修正してください』

絡まり合った髪に無理矢理ブラシを通しながら、メッセージと一緒に送られてきたURLを開いた。それは先週の水曜日に更新したブログ記事だった。三週間後に開催予定の展示会への出店を告知する内容で、更新前に部長の確認を受けたものだった。

 うねった状態で乾いた前髪は、何度ブラシを通したところでなおらないままで、何もかも投げ出したくなったが、大きなため息をついてその気持ちを誤魔化し、私用のパソコンを開いた。やっぱり電源をつけたまま出てきてよかった、と思いながら、会社のパソコンのデスクトップを呼び出した。

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