EP115
339:次はどこへ行こうか
冒険者ギルドの石段を駆け下りた私たちを待っていたのは、真上から容赦なく照りつける太陽の熱と、通りを埋め尽くす人々の途切れることのない喧騒だった。先ほどまでギルドの中で感じていた、血の匂いと張り詰めたような緊張感は嘘のように消え去り、代わりに、香ばしく焼かれた肉の脂が焦げる暴力的なまでの匂いが、熱風に乗って私たちの鼻腔を力強く打ち据えた。
「おいリゼ、あそこだ!あそこの角にある店から、とんでもなく美味そうな匂いがする!オレの鼻は絶対に誤魔化されないぞ!」
ガブは、まるで獲物を見つけた飢えた獣のように目を輝かせ、広場の端にある大きな天幕を張った大衆食堂を指差した。幻影の魔法で人間の大男の姿になっているとはいえ、そのはち切れんばかりの期待に満ちた足取りは、まぎれもなく私の知る不器用で真っ直ぐなゴブリンの相棒そのものだった。
「ふふっ、分かったわ。急がなくても、お肉は逃げたりしないから」
私は彼の大きな背中を小走りで追いかけながら、先ほど受け取ったばかりの革袋の重みをローブの懐で確かめた。大銀貨三枚と銀貨五枚。私たちが自らの手で森を歩き、命を懸けて得た素材が形を変えた、正真正銘、私たち自身の力で稼ぎ出したお金だ。アカデミーにいた頃、実家から送られてくる金貨の詰まった袋を受け取っても、私の心は少しも動かなかった。それは私に向けられた期待という名の重圧であり、決して私が自由に使えるものではなかったからだ。しかしこの数枚の銀貨は違う。これは私たちの自由の証であり、明日を生きるための希望の重さだった。
食堂の天幕をくぐると、中はむせ返るような熱気と、ジョッキを傾ける商人や労働者たちの笑い声で満ちていた。ガブは迷うことなく一番奥の大きな木テーブルに陣取ると、愛想のいい恰幅の良い女将に向かって、大声で注文を叩きつけた。
「女将!この店で一番デカくて、一番分厚い肉の塊を焼いてくれ!それから、腹にたまる芋の塩茹でを山盛りだ!」
「あいよ!景気のいいお客さんだね!お嬢ちゃんは何にするんだい?」
「私は……そうですね、お野菜がたっぷり入った温かいスープと、焼きたての黒パンをお願いします。それから、冷たいお水も」
注文を終え、女将が厨房へと消えていくと、ガブはテーブルの上に両肘を突き、まだ見ぬ肉を想像してしきりに喉を鳴らしていた。私は懐から、先ほどギルドで受け取った真新しい二つの銅板――冒険者の証であるタグを取り出し、木テーブルの上にそっと並べた。鈍い赤銅色の表面には、『リゼ』と『ガブ』という私たちの名前が、荒々しいが力強い字体で深く打刻されている。
「ねぇガブ。これを見て。私たちが、この世界に確かに存在しているっていう証明よ」
私が指先で銅板の冷たい感触を撫でながら言うと、ガブは鼻を鳴らした。
「ただの銅の板切れじゃないか。そんなもんがなくても、オレはここにいるし、お前もここにいる。誰かに証明してもらう必要なんてない」
「そうね。でもこの板切れのおかげで、私たちはこれから堂々と街道を歩けるし、どこの街の宿屋にも泊まることができる。つまりね、私たちはもう、暗い森の奥や、湿った洞窟に隠れ住まなくてもよくなったのよ」
私の言葉に、ガブは少しだけ目を丸くした。追手から逃れ、人間社会から完全に孤立していた私たちにとって、「どこへでも行ける」という事実は、あまりにも巨大すぎて、まだうまく現実として飲み込めていない部分があったのだ。
やがて、テーブルの上に私たちの待ち望んだ料理が運ばれてきた。ガブの前には、顔の大きさほどもある骨付きの巨大な肉の塊が、ジュージューと音を立てながら木の皿に乗せられている。私の前には、湯気を立てる具沢山のスープと、香ばしい匂いを放つ丸い黒パン。そして木製のコップに注がれた水。
「いただきます」
私が両手を合わせて小さな声で呟くが早いか、ガブは両手で巨大な骨を掴み、猛然と肉の塊に噛み付いた。
「がっ!うおおおおっ!美味い!なんだこれ、口の中で肉汁が爆発する!あの楽園の、味のしない光の果実なんかとは次元が違うぞ!これだ、オレが求めていたのは、この命を削るような暴力的な美味さだ!」
ガブは顔中を脂だらけにしながら、言葉を喋るのももどかしいといった様子で、次々と肉を胃袋へと流し込んでいく。そのあまりにも豪快な食べっぷりに、私は思わず声を出して笑ってしまった。私も木のスプーンでスープをすくい、ゆっくりと口に運んだ。美味しい。よく煮込まれた野菜の甘みと、ほんの少し効いた香辛料のピリッとした刺激が、冷え切っていた胃の腑をじわじわと温め、身体の隅々の細胞まで染み渡っていくのを感じた。一口食べるごとに、生きているという実感が身体の奥底から力強く湧き上がってくる。
ふと手元の木コップに注がれた水を見ると、少しだけ白く濁っているのが見えた。井戸の底の砂が混じってしまったのだろう。私はスプーンを置き、コップの縁にそっと指先を添え、大気と水脈を巡る精霊たちへ、心の中で静かに語りかけた。
(清らかなるせせらぎの精霊たちよ。そして浄化の眷属よ。今、私の手元にあるこのささやかな水は、少しばかり地の塵を帯びてしまっています。どうかこの小さな杯の中を満たす水を清め、本来の澄み切った冷たさと輝きを取り戻してはいただけないでしょうか。私たちの乾いた喉を潤すための、静かなる恩恵をお与えください……)
私の指先から微かな魔力の波紋が水面へと伝わると、一瞬のうちに白濁していた水は透き通り、まるで湧き出したばかりの泉の水のように、澄み切った美しい輝きを取り戻した。無理やり不純物を消し去るような強引な魔術ではない。水の中に宿る精霊たちにお願いし、彼ら自身の力で淀みを沈めてもらったのだ。
「またそんな細かい魔法を使って。水くらい少々泥が混じってたって死にはしないのに、相変わらずお上品なこった」
口の周りを肉の脂でギトギトにしたガブが、呆れたように笑いながら言った。
「いいじゃない。魔法は、力を見せつけるためのものじゃなくて、日々の生活をほんの少しだけ豊かに、幸せにするためのものなんだから。いまなら胸を張ってそう言えるわ」
私は透き通った冷たい水を一口飲み、心地よい満足感と共に息をついた。
「ねぇガブ。お腹がいっぱいになったら、次はどこへ行こうか。冒険者ギルドの依頼を受けるのもいいし、ただ地図の空白を埋めるために、見たこともない街を目指して歩くのもいい。北の雪山でも、南の青い海でも、どこへだって行けるわ」
私の問いかけに、ガブは最後の骨についた肉を綺麗にしゃぶり尽くすと、満足げに大きくゲップをしてから、力強く歯を見せて笑った。
「どこだっていい。オレはお前の護衛で、オレたちのパーティ名は『旅の友』だ。お前が進む道が、オレの行く道だ。まぁ強いて言うなら、次も美味い肉が食える場所がいいな」
満腹になったお腹を抱え、私たちは顔を見合わせて笑い合った。あの日、絶望の中で始まった私たちの逃避行は、今、果てしない自由と希望に満ちた、本当の『旅』へと変わったのだ。
340:終わらない旅路
遅めの昼食を終えて大衆食堂を出る頃には、空はすでに茜色に染まり始めていた。通りには、一日の労働を終えて帰路につく人々の安堵の溜息と、夕餉の支度をする家々から漂う煙の匂いが満ちている。石畳の上に長く伸びた私たちの影が、夕日を背にして、街の奥へとゆっくりと進んでいく。
「もうすぐ夜が来るな。なんだか空が燃えているみたいだ」
ガブは、見上げるほど高い街の防壁の向こうに沈みゆく太陽を眩しそうに細めた。幻影の魔法に包まれた彼の顔にも、夕日の赤い光が柔らかく落ちている。
「ええ。美しいわね……」
私は空をキャンバスにして刻一刻と色を変えていく、その圧倒的な夕焼けの色彩に見惚れていた。世界の果てにあるという「楽園」の空は、いつ見ても雲一つない完璧な青空だった。そこには朝も夜もなく、ただ永遠に変わらない穏やかな光だけが満ちていた。確かにそれは快適で、一切の不安を感じさせない場所だったかもしれない。しかし、永遠に変わらないということは、何も始まらず、何も終わらないということだ。
今、私の目の前で沈んでいくこの太陽は、今日という一日が確実に終わりを迎えることを告げている。人々は夜の暗闇を恐れ、身を寄せ合い、そして明日という新しい日がやってくることを切実に祈るのだ。失われるからこそ、美しい。終わりがあるからこそ、次の一歩を踏み出そうと思える。この世界の不完全さが生み出す、痛切なまでの美しさを、私は心の底から愛おしいと感じていた。
「おいリゼ。宿屋を探す前に、少し買い出しをしておこう。あのギルドで受け取った金が、まだたっぷり残ってるんだ。これからの長旅に向けて、装備を整えないとな」
ガブの現実的な提案に、私は夕空から視線を戻して小さく頷いた。
「そうね。私のこのローブも、あちこち擦り切れて泥だらけだもの。丈夫な旅用の外套と、歩きやすい革のブーツが欲しいわ。それから、あなたのナイフを研ぐための砥石や、野営のための水袋も必要ね」
私たちは、まだ活気を残している市場の区画へと足を向けた。日暮れ前で少しだけ安くなった商品を狙って、露店を冷やかして歩く。ガブは幻影の姿のまま、愛想の悪い武具屋の親父と身振り手振りを交えて砥石の値段交渉を行い、私は裁縫屋で、地味だが生地の厚い、深い緑色の新しい外套を手に入れた。
「ふふっ。なんだか、本当に普通の旅人になったみたいね」
私は新しい外套を羽織り、足元の真新しい革ブーツの感触を確かめながら、嬉しくて自然と笑みがこぼれてしまった。これまでの私たちは、常に何かに追われ、生き延びることだけで精一杯だった。明日何を着るか、どんな道具を使うかを選ぶ余裕なんて、ほんの少しもなかったのだ。
「馬鹿言え。オレたちは普通なんかじゃない。アカデミーから逃げ出したお尋ね者の魔術師と、人間の街をうろつくゴブリンのコンビだぞ。普通に考えたら、明日の朝には衛兵の槍の餌食になってるのが関の山だ」
ガブは、両手に抱えた買い出しの荷物を重そうにする素振りも見せず、私の浮かれた様子に釘を刺すように言った。しかしその声色には全く悲観的な響きはなく、むしろこの特異な状況を楽しんでいるような、不敵な響きが含まれていた。
「でも誰も私たちに気づいていないわ。あなたの正体も、私の過去も。私たちは、この大きな世界の中では、ただのちっぽけな砂粒の一つに過ぎないのよ。それが今はとっても心地いいの」
私は通りを行き交う名もなき人々を見つめながら言った。アカデミーという狭い鳥籠の中にいた頃は、周囲の期待と失望の目が常に私を縛り付け、息をするのも苦しかった。しかし外の世界はあまりにも広大で、誰も私の過去になんて興味を持たない。その圧倒的な無関心こそが、私に真の自由を与えてくれたのだ。
日が完全に落ち、街のあちこちで魔石の街灯や松明に火が灯り始めた。夜の帳が下りると共に、吹き抜ける風が急に冷たさを増し、私の新しい外套の裾をバサバサと揺らした。
「暗くなってきたな。足元が見えない」
ガブが周囲を警戒するように顔を巡らせた。彼のゴブリンとしての夜目は利くはずだが、幻影の魔法を通して人間の目線に合わせているため、少し見えづらくなっているのだろう。
「大丈夫、私が道を照らすわ」
私は足を止め、杖の先端を軽く石畳に打ち鳴らした。そして、夜の静寂の中に微かに揺らめく、小さな炎と光の精霊たちへ、優しく呼びかけた。
(温かなる灯火の精霊たちよ。そして光芒の眷属よ。私たちは今、宿屋へと向かうためのわずかな明かりを必要としています。どうか、あなたたちの持つ小さな輝きを私の杖の先に集め、私たちの足元を照らす、柔らかなランタンの代わりとなってはいただけないでしょうか。決して闇を焼き払うような強い光ではなく、ただ道を見失わぬための、ささやかな導きをお願いいたします……)
私の静かな祈りと共に、杖の先端に、ふわりと手のひらほどの大きさの、暖かなオレンジ色の光の球が浮かび上がった。それは熱を持たず、ただ周囲数メートルの石畳を、優しく、そして頼もしく照らし出している。力任せの魔術で生み出す眩い光球とは違う、精霊たちが自らの意志で集まってくれた、命の温もりを感じる光だ。
「へへっ。やっぱりお前の魔法はいいな。冷たくない。見ているだけで、腹の底から温かくなってくる気がする」
ガブは杖の先の光を眩しそうに、そしてどこか誇らしげに見つめた。
「ありがとう。さぁ行きましょう。この道をまっすぐ行けば、旅人向けの宿屋が並ぶ通りに出るはずよ」
私たちは小さな光の精霊たちに導かれながら、夜の街を歩き続けた。楽園の扉を背にしてから、どれほどの距離を歩いてきただろうか。しかし私たちの旅はまだ終わらない。むしろ恐怖と逃亡の道のりが終わり、本当の意味での「私たちの旅路」が、今この夜から始まるのだ。明日はどんな景色が見えるだろう。どんな困難が待ち受けているだろう。期待と、ほんの少しの不安を胸に抱きながら、私たちは宿屋の温かい灯りを目指して、並んで歩を進めていった。
341:旅の友に選んだのは、やっぱりゴブリンでした
翌朝。街を囲む巨大な防壁の東側、外の世界へと続く大門の前に、私たちは立っていた。朝靄がうっすらと立ち込める中、門の周辺はすでに、荷馬車を引く商人たちや、早朝から依頼に向かう冒険者たちの熱気で溢れかえっている。朝日が地平線の彼方から昇り始め、遠く広がる荒野と、そのさらに奥に連なる山々を、黄金色に染め上げていた。
私は新しい深い緑色の外套をすっぽりと被り、背中には野営の道具を詰め込んだ真新しい革の鞄を背負っていた。ローブの裏地には、昨日手に入れたばかりの銅の冒険者タグが、私の鼓動に合わせるように小さく鳴っている。隣には、私と同じように旅の装備を身に固めたガブが立っている。
「いよいよだなリゼ。準備はいいか?」
ガブが、門の向こう側に広がる果てしない荒野を見据えながら、低い声で尋ねた。
「ええ、完璧よ」
私は大きく息を吸い込み、肺の奥深くまでこの世界の朝の冷たい空気を満たした。あの逃げ出した夜、私はただ恐怖に怯え、自分の無力さを呪いながら、暗闇の中をがむしゃらに走っていた。私には何の価値もなく、誰からも必要とされず、ただ世界の片隅で惨めに死んでいく運命なのだと、本気で思い込んでいた。
でもあの森の中で、彼に出会った。人間にとっての敵であり、忌むべき魔物とされている、一匹の不器用なゴブリンに。彼は、魔法の才能がどうだとか、家柄がどうだとか、そんな人間のつまらない物差しで私を測ることはしなかった。ただ私が私であるというだけで、背中を守り、不器用な優しさで私を勇気づけ、共に泥まみれになって歩いてくれた。彼が隣にいてくれたから、私は精霊たちの声を聞く余裕を取り戻し、自分自身の魔法の本当の形を見つけることができたのだ。
ふと周囲を見回すと、朝早くのせいか、大門の少し外れたこの場所には、衛兵の目も人々の視線も届いていなかった。私は立ち止まり、ガブの顔を見上げて、そっと杖の先を彼の胸元に向けた。
「ガブ。少しだけ、息を止めていて」
「あぁ?なんだいきなり」
訝しげに首を傾げるガブに向けて、私は彼を覆っていた光と影の精霊たちへ、静かな感謝と解呪の祈りを捧げた。
(これまで私たちの旅路を隠し、人々の視線から友を守ってくれた、優しき幻影の精霊たちよ。あなたたちの働きに、心からの感謝を捧げます。今、私たちは新しい世界の入り口に立ちました。ほんの短い間だけ、彼を覆うそのヴェールを解き、彼が彼自身の姿で、この朝の空気を胸いっぱいに吸い込めるよう、その束縛を解いてはいただけないでしょうか。私たちの嘘を、ほんの一瞬だけ、真実へと還してください……)
風がふわりと吹き抜け、ガブの全身を包んでいた屈強な人間の男の幻影が、朝靄に溶けるようにしてサラサラと崩れ去っていった。現れたのは、ごつごつとした緑色の肌、尖った長い耳、そして鋭い牙を持った、私が一番よく知る、見慣れたゴブリンの姿だった。
「おわっ!?おいリゼ、何する!こんな街のすぐ近くで魔法を解いたら、誰かに見つかって大騒ぎになるだろうが!」
ガブは慌てて自分の顔を触り、周囲をキョロキョロと見回しながら低い声で怒鳴った。
「誰も見ていないわよ。それに、いざ旅立つっていう一番大切な瞬間に、あなたがあなた自身の姿じゃないなんて、なんだかすごく寂しかったから」
私がクスクスと笑いながら言うと、ガブは呆れたように大きなため息をつき、そして諦めたように両腕をぐっと伸ばして、朝の冷たい空気を思い切り吸い込んだ。
「まぁ確かに。あの薄皮一枚被ったような状態は、ずっと息苦しかったからな。やっぱり、自分の素肌に当たる風が一番気持ちいい」
ガブは鋭い牙を剥き出しにして、心底スッキリしたような、悪党じみた最高の笑顔を見せた。
「さぁ、行こうガブ。地図の空白は、まだまだたくさん残っているわ。私たちのパーティ『旅の友』の、本当の初任務よ」
私は彼に向かって右手を差し出した。ガブはその私の小さな手を、彼のごつごつとした大きな緑色の手でしっかりと握り返し、力強く頷いた。
「おうよ。どこまででも付き合ってやるぜ、オレのへっぽこ魔術師さん。けど昼飯の時間には、絶対に美味い肉が食える街に着くように案内してくれよ」
「もう、相変わらず食い意地が張ってるんだから。任せておいて、私の魔法と勘に狂いはないわ」
私たちは手を離し、肩を並べて、大門の向こうへと続く土の街道へと第一歩を踏み出した。
私、リゼ。元・アカデミーの落ちこぼれ魔術師で、現在はお尋ね者の逃亡者。そして私の隣を歩くのは、人間の社会では決して受け入れられることのない、緑色の肌をした魔物。
世界の果ての完璧な楽園を捨ててまで、私が選んだこの騒がしく、痛みに満ちた世界。そして、その果てしない旅の友に選んだのは――美しく気高い騎士でもなく、強大な力を持つ大魔術師でもなく、不器用で、大食らいで、誰よりも優しい、一匹のゴブリンでした。
朝の風が私たちの背中を押し、新しい外套が希望のようにはためく。物語はここで一つの区切りを迎えるけれど、私とガブの、地図の空白を埋める終わらない旅路は、今この瞬間から、どこまでも、どこまでも続いていく。
ー完ー
最後までお読み頂き感謝いたします。
長い間お付き合い頂き本当にありがとうございましたm(_ _)m




