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瑠璃の姫は夢合う  作者: 西埜水彩
どうしようもない未来と現実
9/12

 お正月だからと言っても、瑠璃島から出ることはない。そういうわけで年末年始図書館を休む理由もないので、大晦日と三が日は通常営業をしていた。冬休み中の子が来ていたから、仕事は多かったし。


 ということでお正月明けの月火を挟んで、水曜日の今日。お正月って何だっけと思いながら、働いている。とはいえ冬休みが終わったからか早い時間に子供がいないこともあって、年末年始よりも楽だ。


「こんにちは」


 この前私が市場からもらったぬいぐるみを持って行った子ことひよこさんが入ってきた。


 ひよこさんはぬいぐるみを持って行ってから、図書館へ来ることが増えた。ひよこさんくらいの年の子は図書館へはほとんど来ないので、ぶっちゃけ目立っている。


「こんにちはです」


 ひよこさんは私に挨拶をすると、読書を始めた。 


 ひよこさんくらいの年の子向けの本はほとんどないけど、大丈夫なのかな?


「こんにちは~」


 ひよこさんの少し後に瑠璃(るり)さんもやってきた。いつもよりも時間が早いので、何があったのか気になる。


「こんにちは。今日は早いですね」


「始業式だったんです、3学期の。だから早めに学校が終わりました」


「へーそうなのですか。冬休みが終わったのですね」


「冬休みといっても講習があるので、他校よりも休みは少ないかもしれません」


 瑠璃さんは私との会話を終わらせて、本棚へと向かった。


 それにしても私が通っていた学校は講習がなかったので、そういうのがこういう島の学校にあるなんて意外だった。


「こんにちはです」


 海都(みと)さんも図書館へやってきてた。そして軽く挨拶をした後は、最近入れた本のコーナーへ向かう。


 海都さんは新しく図書館へいれた本や物に興味があるらしく、いつもこんな感じだ。


「こんにちはです」


 (すずめ)さんはあいさつすると同時に、私の手をにぎる。


 なんていうか雀さんはスキンシップが過剰だ。他の人はこういうことをしないのに、雀さんだけしている。


「こんにちはです。今日は手が温かいです」


 冬に入ってから雀さんの手はひんやりしていることが多かったけど、今日は違う。


「それはさっきまで他人の手を握っていたので、まだ手が暖かいのです」


 雀さんは手を離した。どうやら雀さんは私だけじゃなくて、色々な人の手を握っているらしい。


「そうそう雀さん、何か分かりましたか?」


 瑠璃さんは雀さんの近くに行き、質問を始めた。


「瑠璃さんの言うとおり、海近くの森です。そこの名前がよく分からないのですが・・・・・・」


三緒(みむろ)さんはこの島で、海近くの森についてご存じですか?」


「海近くにある森は『うたかたの森』です。入り口が港に近くて、何かイベントもあります」


 瑠璃さんの質問にさらっと答える。確か市場のある『うたかたの森』だけが海に面していたはずだ、多分。よくは分からないけど。


「図書館にある町に行く大人は、大体『うたかたの森』に行きますね・・・・・・」


 雀さんがややどん引いたように私を見る。いや別に森へ行くことに問題はないから、雀さんが引く要素はないはずだ。


「でも1月12日に『うたかたの森』へ行っちゃ駄目ですよ。なんならその日外出しない方が良いです」


 瑠璃さんはとーとつにそんなことを言い出した。


「瑠璃先輩もご存じでしたら、そうなのでしょう。でも序列2位の先輩の事なんて瑠璃先輩や私にはよく読めないので、警戒はもっとしたほうがいいです。1月12日以外にも何かありそうです」


 ひよこさんは瑠璃さんの言うことを疑っていないらしい。さらに言うなら、私の知らない話もしている。


「序列なんて学校内の話だから、学外では無関係ですよ。それに私は瑠璃姫です、特別な夢を見る存在です。だからきっと当たり、それを実現させないようにできます」


 瑠璃さんはあおるように、笑顔で話し続ける。


 とはいえ私は1月12日に『うたかたの森』へ行かない、なんなら外出しないことが正しいのか分からない。


「そもそも1月12日に何が起きるのですか? 月曜日だから生徒の皆さんは学校から出ないでしょうし、お店もあんまりやっていないはずの日ですよ」


 そこで私はストレートに聞いてみた。


「1月12日に起きることはあやふやなんです。でも最悪の場合、人が死にます」


 ひよこさんが断言する。人が死ぬようなことが1月12日に起きる。それがまだ私には信じられない。


「ひよこさんが言うようなことにはさせません。でも瑠璃姫の夢からすると、こうなるかもしれません」


 瑠璃さんは淡々と告げる。


「瑠璃先輩の言うことは事実です。さっき触って確かめました」


 自信満々なのは雀さんだ。どうやって触るだけで瑠璃さんの言うことについて分かるのか? そんなわけないのに。


「瑠璃さんはいい加減なこと言いませんから」


 海都さんが冷静に答える。


 ぬいぐるみの件もそうだったけど、雀さんと海都さんは瑠璃さんの突拍子もない未来の話を信じている。ひよこさんだって、瑠璃さんの話を疑っていない。


 私だけが瑠璃さんの話を信じていない。


「そうそうこの前起きた12月のことよりも非情ですから、1月12日には絶対家から出ては駄目ですよ」


 コロナ禍を彷彿させるほど、強い引きこもりを瑠璃さんに私は勧められている。


 何が起きるのかよく分からない。そして瑠璃さんの話を信じる根拠もない。


「じゃあ1月12日は家で休もうかな。その日仕事も休みだし」


 元々1月12日には休みなんだから、だらだらするのも悪くない。別に1月12日に何が起きるのか、何が何でも知りたいわけじゃない。


「それがいいですよ~」


「そうですね。めんどくさいことからは逃げましょう」


 ひよこさんと瑠璃さんが前向きに語っている。


 こうなると1月12日に何があるのか気になるけど、私は親戚すら関わらないタイプなので、スルーする。



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