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瑠璃の姫は夢合う  作者: 西埜水彩
不確定な未来に振り回される
7/12

 ぬいぐるみを置いた日、誰も持っていかなった。


 瑠璃さん達が盗まれる予定のぬいぐるみだって話していたくらいで、他の人はどうでもよさそうだった。


 盗みたくなるほどぬいぐるみがほしい人がいるはずなのに、一体どうしてかな?


 そう疑問に思いつつ、次の日である今日もぬいぐるみを飾る。


「このぬいぐるみもらっていいのですか?」


 だからこう聞かれたときは、びっくりした。


 小三か小四くらいの小さな女の子が、いつもの生徒達よりも少し早めに時間に来て、ぬいぐるみを手にしていた。


「いいですよ」


「ありがとうございます。こういうぬいぐるみがほしくてほしくて、うまく見えなかったんですが、今回あってうれしいです」


 その子はぬいぐるみをうきうきとした表情で持っていた鞄にしまい、図書館から出て行った。


 まさか図書館を利用するよりも、ぬいぐるみ目当てだったのか?


 昨日このぬいぐるみが図書館にあるのを知った人が、この子に教えたかもしれない。


 でもこの子の知り合いみたいな小学生っぽいこの子が図書館に昨日来たわけでもない。中一に見える小六とかいそうだし、中高生が小学生に話すことだってあるのだし、別に問題はないかもしれないけど気になる。


「こんにちは。ぬいぐるみはどうしましたか?」


 瑠璃さんがぬいぐるみを探している。


「さっき小学生の子が持って行きました」


「もしかして持って行った子って、赤っぽい茶色のショートカット、キャネル系のブレザー制服にオレンジのカーディガンとピンクのリボンでした?」


「そうですね。そんな感じでした」


 さっき来た子は瑠璃さんが言ったことに当てはまっていた。


 そこで瑠璃さんやさっきの子にぬいぐるみがあることを教えたかもしれない。そこでさっきの子が図書館に着いてから真っ先にぬいぐるみを手にしたのか。


「放課後の合同授業でなんか色々言っていたので、気になったのです。盗まれなかったのでOKですか?」


「問題ありません」


 さっきの子はぬいぐるみをもらっていいのか聞いていた。それならただ私がさっきの子にぬいぐるみをあげただけなので、問題ない。


「それはよかったです。こうやって事前に知って適切に対処すれば、いい風になる。その事実がうれしいです」


 瑠璃さんがにこにこ笑顔で話している。


「まあね、たまたまだと思います」


 なんせ未来を知ることは、基本的にできない。


 そこで瑠璃さんが言った『図書館でぬいぐるみが盗まれること』が起きないように私が何かしたのではなく、ただ私がいらないぬいぐるみを他人にあげただけかもしれない。


「未来はあやふやで不安定ですから、それでも今回はうまくいったほうです。ところで平日の昼間、月曜日と火曜日の午前にだけ港近くの『うたかたの森』で行われるイベントってありますか?」


「月曜日と火曜日はこの町のお店や港のお店はほとんどお休みですし、何よりも瑠璃さん達は学校で忙しいのではないでしょうか? その日に何かあるのですか?」


 多分瑠璃さんが知りたいのは市場のことだ。でも市場のことを学校の生徒に言っていいのか分からないので、ごまかす。


 月曜日と火曜日は、図書館のある町や港などで子供の姿を見ない。学校のある時間はもちろん、他の平日なら放課後で子供が多くなる時間なのに、大人以外いないって感じなのだ。


 それもあって生徒は月曜日や火曜日は、学校から出ないのかと思っている。


「水曜日から日曜日までどんな感じかは知っています。でも月曜日や火曜日は放課後忙しいのもあって町へ行きませんから、どういうことがあるのか知らないのです」


 瑠璃さんは今までに見たことがないくらい、落ち着いて話す。


「多分瑠璃さん達が参加したら駄目なやつですよ」


 学校で禁止されている物の取引だから、生徒は参加禁止である。


 そこで別に瑠璃さんが知らなくていい。


「私はあやふやなことしか知らないです。何かをきっかけとして変わるか分からないことですが、それでもこの世界のために大事です。そこでそのあやふやさを減らすために、月と火にうたかたの森で行われていることを知りたいんです。確か『市場』でしたっけ? なんか早くてかっこいい曲が流れた場所ですよね」


 ゆっくりと思い出しているのか、目を閉じて話している瑠璃さん。


 この分だと瑠璃さんは市場のことを知っている。全部というわけじゃなくて一部だけだろうけど、全く知らないってわけじゃないみたい。


「月とかの港近くのうたかたの森で行われているのは、市場と呼ばれるイベントです。学校で禁止されているものが取引されています」


「外からきた大人向けのイベントですね。でも新鮮そうです」


「島の外での当たり前が、この島では通用しませんから」


 島の外では当たり前に買えるものが、校則違反かなんかのため森でこっそり取引している。


 でもそれがこの島の現実なんだ。


「多分12月15日の市場は開かれないはずです。なぜならそういう風にこれからなるからです。そこで12月15日に市場へは行かない方が良いです」


 ゆっくりと一文字一文字区切るような雰囲気で、瑠璃さんが伝える。


「なんで開かれないのが分かるのですか?」


 さっきまでよく知らないようだった市場が、来週ないと断言できるのはなぜだろうか?


 私の話を聞くだけでは、そういうことは分からないはずだ。


「私のあやふやな記憶をたどると、それしか手段はありません。だから12月15日には市場へは行かない方が良いですよ」


 瑠璃さんは少し声を大きくして、感情的みたいだ。


 別に私は市場へ何が何でも行きたいわけじゃない。ていうことで1日くらい市場へ行かなくても大丈夫だ。


 それに何があったとしても、後日知ることができるだろうし。


「分かりました。12月15日は市場へは行きません」


「そうそう行かない方がいいです。では失礼します」


 瑠璃さんは図書館から去って行った。


 12月15日に市場へ行かない方が良いらしい。その理由はしっかりと分からなかった。


 本当何でだろうね?



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