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瑠璃の姫は夢合う  作者: 西埜水彩
不確定な未来に振り回される
6/11

 記憶があやふやだからあんまり覚えていないけど、この島に来るまで楽しい生活を私は送っていなかった。


 むしろストレスフルな生活を送っていたはず。


 だから今の生活があまりにも穏やかで、幸せだ。


 図書館で来客対応をして、それ以外の細々とした作業を行う。そこには難しいこともないし、死にたくなるほどのストレスもない、


 そんなわけでたまに市場へ向かうのだ。島で禁止されている外由来の物が取り扱われている場所は、今のところ私にとって一番刺激が強い場所だ。


 とはいえ欲しいものがないので、買い物はしない。フラフラ見て回るだけで、何もしないのがいつもだった。


「うーんどうしよう」


 それなのになぜかくじ引きに参加してしまった。


 1回100円という安さについひかれてしまい、普段とは違い参加してしまったのだ。


 くじ引きの景品はシールがメインだった。別に自分では使わないので図書館の備品にすればいいやという、軽い気持ちでもあった。


 それで手に入れたのが、ぬいぐるみである。


 くじ引きが抽選などで良い物が当たるなんてこと、あまりない。今まで私は参加賞以外、もらったことがない。


 そこで100円以上絶対にするぬいぐるみがあたったのがびっくりだ。


「とはいえどうしよう」


 今は開館前の図書館にいる。


 このぬいぐるみ家に置きたくなくて、つい連れてきてしまった。そこでカウンターの中に置いてある。


 そういえばこういうぬいぐるみがはやっているって島に来る前、インターネットで見た記憶がある。


 でも私はこのぬいぐるみが好きじゃない。どっちかというと嫌いだ。


 かわいさよりも不気味さが強いし、何よりもかわいくないと断言できる。


 このぬいぐるみ、絶対家に置きたくない。飾らないのは当たり前として、家に存在してほしくない。


 とはいえ図書館でも飾りたくない。ぬいぐるみは図書館に飾らないって、この前話したし。


 それにこの島ではこういうぬいぐるみを見かけることがないから、ここに置かなければ私は一切見なくて済む。そりゃあ市場に置いてあるような、この島の生徒が手に入れてはいけないぬいぐるみっぽいから。


 そこで図書館に置いておいても私のストレスになるだけだ。このぬいぐるみが視界に入るたび、イライラしそう。


 そうだそうだ。この島へ来る前にこのぬいぐるみを鞄につけた人を見かけたことがある。そのときもイライラしたんだ。


 となるとこのぬいぐるみ、私とは関係ないところへ行ってほしい、まじで。


 捨てるのはもったいないし、フリーマーケットとかで売るのも駄目っぽい。じゃあどうしたらいいのだろう?


「そうだ、ぬいぐるみが盗まれるって瑠璃さんが言っていた」


 確かこういううさぎの着ぐるみを着たぬいぐるみが盗まれるんだった。


 まあこのぬいぐるみはいらないから、盗まれてもいいや。


 いっそだれかに持って帰ってもらおう。カウンターの上に『ほしい人は持って行ってください』というチラシをつけて、置いておく。


 そして図書館を開けて、気がつけば放課後になる。すると常連の子達がぞろぞろやってきた。


「あーこのぬいぐるみが盗まれるのです。あれっ自由に持って帰って良いのですか?」


 瑠璃さんがじっとぬいぐるみを見つめる。


「うん、いらないですから」


「このぬいぐるみよりもかわいいのはいっぱいありますしね。でもこれだと自由に持って行っていいから、盗んでも良いって事ですよね」


「どうせ盗まれるんでしょ? だから持って帰りやすいようにしたのです」


 盗むのは犯罪だけど、もらうのは犯罪じゃない。


 そこでいらないものでもあるので、持って行きやすいようにしてみた。


「そうですね。こっちの方が問題は少なそうです」


 瑠璃さんが納得したような顔で、ぬいぐるみを見つめる。


「あっこのぬいぐるみ、珍しいです」


 海都さんがぬいぐるみを手に取る。


 そりゃそうだ。これは生徒が近づいたらいけない市場で取引されている。そこでこのぬいぐるみを実際に見るのは難しい。


 私は島の外で、たまに見かけたけど。


「うーんなんでしょう? 何か知らない世界です」


 首をかしげて、海都さんはカウンターの上にぬいぐるみを戻した。


「海都先輩にとって、びっくりするようなことでした?」


 瑠璃さんは不思議そうに、海都さんを見る。


「うーんそう。このぬいぐるみ、なんかこの島ではありえない」


 海都さんはぬいぐるみから離れて、本棚へと向かう。


「かわいーぬいぐるみです。これが例のぬいぐるみですね」


 雀さんがぬいぐるみを持つ。


「他のキャラクターの方がいいと思いますけど。でも珍しさは一番です」


 雀さんはぬいぐるみをそっと、カウンターの上に戻す。


「みんなぬいぐるみが好きですか? というよりもぬいぐるみがこの島ではやっているのですか?」


 なんせ盗まれるかもしれないって予想できるって事は、ぬいぐるみが人気だって事だろう。


 盗みたいと思う人がいるほど、ぬいぐるみのファンがいるとか。


「いやーべつにそんなわけではないです。でもこのぬいぐるみが盗まれるのはもう決まっているのです。そこで誰か取りに来ますよ。黙ってか声かけしてかは分からないですが」


 瑠璃さんが断言する。


「瑠璃先輩が言うならそうなのでしょう」


 雀さんも同意する。


 瑠璃さんはぬいぐるみがないときからずっと盗まれるかもしれないと、話していた。


 それはきっと何か理由があるのだろうか?



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