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図書館を開ける、というのは想像以上に大変だった。
そのため休み明けの水曜日になっても、図書館を開けるのは無理だった。そのために準備を日曜日に頑張ったけど、流石に無理だったのだ。
マニュアル通りの作業は終わったけど、でも図書館の中が想像よりもあれていて、片付けるのに時間がかかった。そこで水曜日の今日も片付けをしている。
図書館で前働いていた人、掃除をしなかったのかな? いや図書館のあちらこちらに本が置かれているなんてイメージができないから、嫌がらせって可能性もありそう。
というわけでよくやく片付けも終わったし、マニュアル通りに準備もしたし、これで明日から図書館を開けられそう。
「トントントントントントン」
ノックが何度も続いた。
私がドアを開けると、そこには鈴木さんがいた。
「明日から図書館を開けるんですね」
なんで予定が分かるのだろう? 鈴木さんは笑顔なので、カマをかけたのかどうかは分からない。
「そうですけど、なんで分かるのですか?」
「なんとなーく分かるのです。ところで今から出かけませんか? そうしたらいいことがありますよ。もう準備することはないでしょう」
図書館の中をぐるっと見渡す鈴木さん。いやいやしっかり見ても良いことはないですよ、殺風景な図書館ですし。
というよりもなんで図書館の準備が終わったことが分かったのだろうか?
「そうですね、準備は終わりました。ところでどこに行くんですか?」
「多分三緒さんが昨日行った場所です」
私の行動まで鈴木さんは把握している。本当に何でだろう? その理由を探るのがとても怖い。
もしかしなくても鈴木さんは私のストーカーじゃないか?
「分かりました。行ってみましょう」
そこで図書館から出ることにした。鈴木さんが私のことをどこまで知っているのも気になる。この際聞いちゃお。
図書館を戸締まりして、鈴木さんと一緒に歩く。
「ここの暮らしにはなれましたか?」
鈴木さんがさりげなく質問をしてくる。
「なれました。KPOP禁止なのには驚きました」
「KPOPというよりも外国の影響をなるべく受けないようにしないといけないのです。私達は日本を守るために存在していますから」
鈴木さんはすらすらと難しい話をする。
まだまだ子供の鈴木さんが日本を守るってことを意識するのが以外だし、こんな島の学校でどうやって日本を守る教育をするのだろうか。
「日本を守るですか、だから外国の物と距離を置くのですか?」
「そうです。そもそも待雪草町へ行ってはいけない生徒もいるほど、厳しい学校なんです。そこで学校で音楽の話もできませんよ。ということでそもそもKPOPのことを知らない人が多いです」
「閉鎖的な環境なら、そうでしょうね」
「そうでしょう。ところでこの待雪草町や港近くの町って、東京並みの都会に見えますか?」
「うーん生駒市の駅前レベルです」
10階よりもうーんと高いビルがないので、東京並みの都会には遠い。せいぜい生駒駅前レベルだ。
「そうですか、あっここです」
「確かにここは昨日来ました」
昨日市場が行われていた場所だ。
とはいえ今日はKPOPが流れているなんてことがなくて、鈴木さんと同っぽい子供がうろうろしている。
「ここの学校は制服ないですか?」
様々な種類のブレザーやシャツなので、制服風ファッションかもしれない。ということはここの学校は制服がないのかな?
「実は制服あります。でも待雪草町へ来れる子達はブレザーであれば、種類はなんでもいいのです」
「自由な学校ですね」
大体ブレザーの種類を同じにするのが、制服じゃない?
とはいいつつ閉鎖的な島だからこそ、服装は自由かもしれない。KPOPを禁止にするけど制服の自由度は高いって、緩い学校が厳しい学校なのかよく分からない。
「あっいますよ、あの人。歌が上手なんです」
鈴木さんがある子を指さした。
ピンクのブラウスにキャメルのブレザーという明るい格好、赤いパーカーでかなり明るさをプラスしている。
そんな子が歌っていた。
「ねむりにつくの えいえんに」
歌声を少し聞いて、絶句する。今まで聞いたどんな曲よりも、きれいで澄んでいる。
「この曲を聴くと、他の曲なんて価値がなくなります。それほど特別な曲、この島で作られました」
鈴木さんは楽しそうに歌っている人を見ている。
その人は私が知らないけどきれいな曲を歌った後、私の好きな歌い手グループの曲を歌い始めた。
「この人、この歌い手グループの曲をメインに歌っているんですよ、なぜかは分からないですが」
鈴木さんはややあきれた顔で、今歌っている子を見る。
問題は何もない気がする。すきな曲を歌うのは楽しいだろうし、何よりもここは市場が行われるほど寂れて周囲に建物もないから、歌っても問題はないはず。
「私もこの歌い手グループは好きですし、いいです」
「お好きならよかったです。いい曲ですから。というよりもこの人が歌えば、なんでも素敵な曲なり、みんなこの歌い手グループのことが好きになります」
「それほど魅力的なのでしょう」
この歌声が普通じゃないってことは分かっている。それでも歌い手グループに対する愛が薄れるわけではなくて、むしろ歌い手グループのことがますます好きになる。
でもそんなこと言えるわけがなくて、私はぼんやりと歌っているところを見続ける。
「この人の歌さえあれば、他の歌じゃあ満足できなくなるんです」
「そうかもしれません」
とはいえ私は歌い手グループが別で好きだ。その気持ちは変わらない。
でもKPOP禁止なほど厳しい環境で暮らす子達にとっては、この人の歌で満足するしかない。そんな気がする。




