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瑠璃の姫は夢合う  作者: 西埜水彩
瑠璃島での暮らしがスタート
2/11

 鈴木さんのおかげで仕事場所である図書館、そしてこれから暮らす家の確認ができた。


 そこで鈴木さんが早く図書館を利用したいと言っていたので、私はこれから準備をすることにした。昨日は図書館と家の確認だけで終わったので、開館準備は今日から頑張ろう。


 昨日島に来たばっかりだから、何をしたら良いのか分からない。そもそも図書館には私以外働いている人はいないらしい。1人でできるかどうか分からないけど、頑張ろう。


「こんにちは。ここ図書館なの?」


 いきなりため口で話しかけてきた人にびびり、思わず後ずさりをする。


 どうやら年が近そうな人だから、私のことを年下だと思っているんだろう、多分。


「そうです。今準備中で、まだ始まっていません」


「私は向紗子(むかいすずこ)。CDショップで働いている。この島じゃあ禁止されているKPOPが好きだから、ちょっと居心地が悪い。KPOP好き?」


「私は藤浪三緒です。KPOPが禁止とは意外です」


 別に私はKPOPが好きってわけでもない。それでもKPOPが世界ではやっていることくらい知っているので、この島で禁止されているとは思いもしなかった。


「この島の学校でKPOP禁止なのもあって、子供が買い物する店でKPOPのCD売るのが禁止なんだ。完全に日本人の歌ならVTuberでもいいけど、KPOPが駄目なのは納得いかない」


「ということはこの図書館にもKPOP関連の物はないですね」


 KPOP好きという風な感じの、派手で華やかな顔立ちとメイクをしている向さん。KPOP聞けないと愚痴を言いつつ、向さんがこの島で働いているのかは謎だ。


「ないよ~。そうだ月と火の午前中に市場をやっているんだ。たしか『うたたかの森』の入り口付近、つーか港付近でやっているから見に来てよ。素敵な音楽もかかっているし」


 目を輝かせて、向さんは語る。


 KPOP好きな人の語る素敵な音楽は、私にとっていいものとは思えない。


 それでも今いる島のことを知るためにも、市場へ行くことはいいはず。


「いいですよ。月と火の午前ですね」


 ちょうど図書館が休みの日だ。図書館は土日も営業しているので、かわりに月と火が休みなのだ。


 そこで市場がある時間はフリーなので、そのイベントへ行くことはできる。


「本当? 絶対に来てね。この島で唯一価値のあることなんだから」


 どういう市場か分からないけど、期待できないような気がする。そもそも昔からKPOP好きな華やか女子が好きなイベントなんて、私のような落ち着いた子にとって楽しい物とは思えない。


 とはいえ向さんが去ったことにほっとして、図書館の準備を始める。まずはバックヤードを掃除しようっと。あっ机の上にマニュアルを発見。これを見て準備したら良いか。


「トントントントン」


 マニュアルに書かれていた準備が終わりそうな時、図書館のドアがノックされた。


 誰だろう? 私はドアを開ける。


「どうしましたか? 図書館はまだあいていないです」


「この図書館が開くっていうのは、本当だったんですね」


 整った顔立ちで、制服姿っぽい男子がいた。


 鈴木さんほど特別感じではないけど、どことなく普通や平凡とは遠い雰囲気がする。そして何よりもイケメンだ、テレビで見たイケメンアイドルと同じくらいの。


「そうです。水曜日に開館したいです」


「ああ月曜日と火曜日が休みなので、水曜日なんですね。きっと図書館が好きな人は喜びますよ」


 イケメン男子は笑顔で、部屋を見る。


 片付けがまだ終わっていないので、図書館の中はごちゃごちゃしている。今は客がこれないくらい。


「水曜日は難しそうですが・・・・・・。ところでこの島のメインはなんだと思いますか?」


「分からないです」


 島というには都会にあるような建物が多い。27階建てのビルなんてないけど、地方都市に多そうな10階建て程度のビルならよくある。


「学校がメインなんですよ。島の中心部に全寮制学校があるのです。そこで待雪草町に住むのは学園の卒業生、もしくは仕事のために外から来た人だけです。そして子供はみんな全寮制学校にいますよ」


「学校ですか。この島で学校を見たことはないです」


 この島全部行ったわけじゃないけど、学校らしき場所を見た記憶はない。とはいえブレザーの子はよく見かけたから、学校があってもおかしくはないけど。


「それは待雪草町と学校の間に露命の森があるからです。森が邪魔で、学校が見えないのです」


「そうですか。だから学校中心の島なんですね」


 だから子供が行きそうな店で、KPOP禁止になるんだ。


 子供のためにセンシティブじゃないものを規制するなんてやりすぎだ。でもこの島が学校のためにあるのなら、それが当たり前になるんだろう。


「そうなんです。この島の学校にいる子は、みんな何かに縛られているんです。だから普通にはなりません。ところでこの本、あの棚ですよ」


 その辺に置いてあった本を持ち、イケメン男子は本棚を指さす。


 いやいやなんで図書館の本がどこにあるのか分かるのだ?


「もしかしてその本がどこにあるのか、見たことがありますか?」


「いえ今日初めてこの本を見ました。でも物のことなら人と違って、持ったらなんでも分かるのです」


「ありがとうございます。片付けていただけませんか?」


 煙に巻かれた、その気持ちが残る。


 だけど昨日話した鈴木さん、今話しているイケメン男子は油断できない。


 私は島のことはよく知らない。でも昨日と今日会った子供達は、島のことをよく知っている。そして子供達は、私に島のことを直接教えようとしない。


「片付けました。では門限もあるのでまたきます」


「ありがとうございました」


 イケメン男子は本を棚になおしてから、帰って行った。


 分からないことがあるようなないような気がするけど、この島でこれから生きていく。普通にはならない子供達と、これから私は関わらなきゃいけないけど、そもそも普通の人なんていないのだから、なんとかなるでしょ。


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