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瑠璃の姫は夢合う  作者: 西埜水彩
どうしようもない未来と現実
12/12

 この島は学校が一番大事だと言うことを一番実感したのは、卒業式の日だったかもしれない。


 見慣れた多種多様なブレザーを着た子、そして初めて見るセーラー服や学ラン、それからワンピースやスーツのような制服の子達。


 全員みなとから船へ乗り、島から離れていった。何よりも卒業式が一大行事で、できることなら島に住んでいる人全員で見送るなんて、あんまりないことかもしれない。


 学校を卒業すると、島から出る。以前学校にいるときは島の外へ出れないという話を聞いたから、それはとてもいいことかもしれない。


 そして学校は春休みへと入り、図書館には朝から常連が来るようになった。


「どの歌にしようかな?」


 動画サイトを見ながら、歌歩さんが悩んでいる。どうやら次に歌う曲を考えているらしい。


「今年は全然うまくできていないので、序列が下がるかもしれません」


 ひよこさんが本棚の前にある、テーブルでため息をついている。


「大丈夫じゃない? そんなためになることができた人、多くないよ」


 海都さんが慰めるように話しつつ、本棚から本を取り出した。


「私達役立つことなかったよ、まずーい」


 雀さんがひよこさんに同意している。


 3人の話が私には意味が分からないけど、何か大事なことでもあるのだろうな・・・・・・。


 今日は4月1日、エイプリルフールの日。そして今日から新しい学年になったって事かな?


 とはいえ昨日までと大きく変わるわけじゃない。まだ新学期にもなっていないし新しい学年として扱われたこともなさそうだから、むしろ昨日までと大きく変わるわけがない。


「まあまあこれだと自由に将来決めれるからいいよ。今だって大して能力がないから、図書館へ来れるし」


「そうですね。待雪草町やみなとにいけるのは、強いと無理ですから」


「制服を変えるほどの厳しいルールですから。むしろ私達」


 海都さん、雀さん、ひよこさんの3人がわいわいと話している。話の半分以上私は理解できないけど、楽しそうな感じはする。


「お久しぶりです」


 そんなとき、図書館に人が入ってきた。瑠璃さんだ。


 瑠璃色っぽい髪をハーフアップにしている美人。こんな人、瑠璃さん以外にいるわけがない。


 この間1月12日に外へは出ない方が言い切ったあの日から、瑠璃さんは図書館へは来なかった。そこで本当に久しぶりとなる。


「お久しぶりです。最近来ませんでしたね」


「いろいろあって忙しくて、図書館へは来れなかったのです。それにしても図書館は変わりません」


 図書館の中をじっくりと見る、瑠璃さん。とっても穏やかそうな雰囲気がある。


「そうですね。変えるほどの余裕がありませんから」


 新しい本を入れることもめったになくて、飾りに凝ることもない。そんなわけで瑠璃さんが最後に来たときから今まで、図書館は大して変わっていない。


「変わっていますよ。少しずつこめられた心はです」


 それにたいして海都さんが反論する。瑠璃さんや私には分からない変化が、海都さんには分かるのだろうか?


「海都先輩が言うのならそうでしょう。とはいえ私には海都先輩の見ている世界は分かりませんから、変わっていないように見えます。世の中変わることがほとんどなのですが」


 確かに瑠璃さんが最後に来たときは冬で、とても寒かった。今は春になって、少しずつ暖かくなっている。


 変わらない物なんてないのだ。それこそこの図書館も変わっていないように私は見えるけど、海都さんの言うとおり変わっているかもしれない。


「瑠璃先輩が来るなんて予想外でした」


 ひよこさんは驚いたように、瑠璃さんを見る。


「私はひよこさんの予測を変えることは簡単なのです。何があっても、ひよこさんよりも私の序列は高いですから」


「いつか抜かします」


 ひよこさんはなぜか瑠璃さんに強気だ。あと当然どんな話をしているのか、私にはよく分からない。


「失礼します」


 雀さんはひよこさんに気を取られている瑠璃さんの手を、ぎゅっと握った。


「瑠璃先輩も大変ですね。世の中うまくいくわけではありませんから」


 何かを感じ取ったのか、不満げに話す雀さん。


「仕方ないでしょ、世の中うまくいかないことだらけ、知っていても未来の事なんてどうでもできないのです」


 雀さんの手を振り払って、私の方を見る瑠璃さん。


 今までのこと。例えばぬいぐるみが盗まれる話だったり市場が封鎖されるようなことだったり、この前の死ぬ話だったり。よく考えたら、どうにもならないことではないかもしれない。


「どうもできないわけではないと思いますよ。たとえ少しでも想定と違う風になれば、そこから良い未来になるかもしれません」


 瑠璃さんは私が想像するよりも、未来のことを知っている。でも瑠璃さんは知ったことを参考にして、未来を変えることができていない。


 ぬいぐるみは図書館に飾られていないし、他二つもよく私は知らないけどうまくはいっていないかもしれない。


 そう瑠璃さんは未来をたとえ知ることができたとしても、うまく対処することはできないのだ。でもぬいぐるみは盗まれていなくて、誰かがもらっただけという未来がある。それだけで瑠璃さんのおかげで、良い未来ができているって言ってもいいはずなのだ。


「そうですね、うまくいかないです、本当に」


 ためいきを押し込んだように、明るく話す瑠璃さん。


 世の中うまくいかない。私だって過去を捨ててこの島へ来たのだから、島の外で嫌な目にたくさんあったかもしれない。


 でもなんとかしなきゃいけないのだ。 


 何もしないでいるわけにはない。


 そこで今日も仕事を頑張るのでした。




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