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瑠璃の姫は夢合う  作者: 西埜水彩
どうしようもない未来と現実
10/11

 1月12日は成人の日だって事に気づいた。18歳で成人式に出る人もいるし20歳で二十歳のつどいに出る人もいるという今、何もないのがここ瑠璃島だけかもしれない。


 そんなわけで成人の日特有のことがないまま1日が過ぎてしまった、その次の日である13日も引きこもったまま過ぎていく。


 島の外にいるときは軽い外出すらしんどく感じてしまうほどの辛さが常にあった。そこで島へやってきてからも、外出したくなるときはたまにある。


 そんなわけで14日に外へと出かけるのは久しぶりの感じがする。図書館の仕事があるので、外出しなきゃいけない。それが辛い。でも島外で仕事をしていたときよりもましだから、我慢する。


「静かなだ」 


 アパートから図書館までの道には人がほとんどいない。


 開店準備がいつもならされているけど今日はないし、ビルの入り口もがらんとしている。午前の早い時間から開いているお店もあるのに、今日はしまっているみたい。


「とりあえず図書館開けよう」


 ということでいつものように図書館を開ける。今日は学校がある日なのもあってか、大人のお客さんが少ない図書館は今ガラガラだ。


「はー人来ない」


 放課後になっても、誰も来ない。


 大人はほとんど来ないから今いなくても問題はない。でも学校に通っている子達は、いつもなら来ているはずだ。


「やっぱり人が少ない」


 図書館の入り口から、外を見てみる。そしたら町は人がほとんど歩いていなくて、いつもよりもがらんとした道は何か異常さがある。


 まあこういうこともあるでしょう。今日は何か用事があって、たまたま生徒が来られないだけ。そこには何も理由はない。


 そういえば1月12日はどうなったのだろうか? 1月14日に外出するなとは聞いていないし、1月12日に大事件が起きたとは聞いていない。


 昨日と今日の朝刊にも、瑠璃島で何か起きたということは書いていない。そこに別に何も問題がなくて、平凡な月曜日だったかもしれない。


 とはいえ1月12日がどんな感じだったか、私は知らない。


 これからも知ることがない、それがいい。


「こんにちは。1月12日に何があったのか知ってる?」


 (むかい)さんが図書館へやってきた、それはとても珍しい。


 向さんは今までほとんど図書館へやってこなかった。向さんは子供じゃなくて大人なので、この時間帯は仕事もあるし。そう考えると、異常事態かもしれない。


 何よりも1月12日のことと、向さんは言っている。


「私は知らないです。1月12日に何があったのですか?」


 どうやら向さんは私と違って、1月12日に何があったのか知っているらしい。そこで聞いてみた。


「何があったって、結構な大騒ぎになっていたけど」


 向さんは驚いたように、私を見ている。


「1月12日と1月13日、家から出ていないのです」


「あーそれなら納得。1月12日は急に市場がなくなったの。というよりも市場の行われる森が封鎖されたの」


 それならこの前もあった。確か瑠璃さんが森へ行ってはいけないと言っていた日だ。その日も市場がなかった。


 今回も瑠璃さんが外出してはいけない日に、森が封鎖されている。そこで前と同じく、今日も森であったかもしれない。


「市場がなくなったから、大騒ぎになったのですか?」


「市場がなくなったのも大変だけど、大変なのはその後。仕方ないから待雪草町へ戻ってきたの、それで待ちのメインストリートを歩いていたら変な音楽が聞こえたの」


 待雪草町は図書館や私の住んでいるアパートのあるこの町で、メインストリートは図書館が面している大きな道。


 私の住んでいるアパートにもメインストリートは近く。そこでメインストリートで何があったら、アパートでも分かりそう。でも私は外から音楽が聞こえた記憶がない。


「私もメインストリート近くで住んでいるのですが、何も気づきませんでした」


「うっそー。人が関わっていないほど奇妙な音が聞こえたのに、気づかなかったなんて幸運だ。私はその音楽を聞いて気を失っちゃって、道に倒れたの。気づいたら学校の体育館にいてさ、時間は夕方6時。昼前にメインストリートを歩いていたから、休日のかなりの時間、無駄にしちゃった」


「それは大変です・・・・・・」


 気を失って、気がつけば学校の体育館にいるなんて、あるはずがないって。でも向さんが嘘でこういう話をできるほどの想像力はなさそうだし、事実なのだろう。


「学校って待雪草町から行くのは難しいはずです。本当に学校でしたか?」


「でしょー。でも体育館にはたくさんの人がいたら、そこ以外無理だったかもしれない。だって昼前のメインストリートにはたくさん大人がいたんだよ。それで学校の生徒が同じ日に入水自殺している」


 海辺といえば『うたかたの森』だけど、実は待雪草町も海辺だ。そんなわけで待雪草町でも入水自殺はできる。


「要するに向さんをはじめとしたたくさんの人が気を失って、学校の図書館へつれていかれて、その日に学校の生徒が自殺しているのですね」


「そんな感じー」


 向さんの説明が分かりづらかったので本当はどうか分からないけど、この考えで良いらしい。


 瑠璃さんが外出してはいけないと言った日に起きた事件。それはきっと偶然だ。瑠璃さんがこの事件に関することをあらかじめ知っていたとは思えない。


「よく考えたら気を失う前に、学校の男子生徒を見たような気もする。かなりのイケメンだったから印象に残っているんだ。それにしても謎が多い事件だったな。気を失った人が多くいるけど、誰も何で気を失ったのか教えてくれない」


「そりゃそうでしょう。この島でも起きない事件ですか?」


「普通じゃないよ。そりゃこの島は超能力者がいて、現実的ではないことが起きてもおかしくない。でもまさかこんな大きな事件が起きるとは思えない」


「そうですね」


 少なくとも瑠璃さんは1月12日に外出してはいけないと話していたので、もしかしたら学校関係者はこの事件が起きることを知っていたかもしれない。


 うんそれが本当かどうか分からないけど。


「でも仮に超能力があったとしても、どうやってこの事件を起こしたんですか?」


「分からない。でもここは超能力の島なんだから、何があったのでしょう」


 向さんは早口で言い切った。うーんすべてがうさんくさい。


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