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「リリリンリリリン。瑠璃島につきました」
目覚まし時計のような大きな音に気づいて、目が覚める。
膝の上にはそこそこ大きなリュックがあり、リュックと体の間には小さな肩掛け鞄がある。どうやらこれらの鞄を抱きしめながら、私は寝ていたみたい。
遠くには人の姿を見るけど、私の周りにはだれもいない。だからこそ、ゆっくりとすわって寝ることができたみたい。
ていうかここはどこだ? 寝心地の良さそうなふわふわとした椅子は、交通機関に椅子よりも映画館の座席のような高級感がある。
甘く優しい香りが漂っていて、なんかいるだけで落ち着いてくる。そして今までぐっすり寝ていたから、疲れも取れている。
部屋も暖かく、いつまでもここにいたくなる。とはいえいつまでもここでいては駄目だ。
ここから降りなきゃ。私は席から立ち上がり、歩き始める。そのとき始めてここは船であることに気づいた。窓の外から見えるのは海や港、そしてときどき揺れる地面。私は今まで船に乗っていたみたい。
船にいつまでも乗っているわけにはいかない。船からおりないと。
「島だ」
今までいた船から下りるとき、なぜかそう思った。ここは港であり、まだ島かどうかは分からないのに。
いやさっき放送で『瑠璃島』と言っていたのだから、ここは目的の島だ。
でもなんで私はここの島へとやってきたのだろうか? うーん、そうだ私はこの島へ働くためにやってきたのだ。でもどんな仕事をするためなんだろうか?
しっかり船で寝たはずなのに、記憶がぼんやりしている。そのためにうまく思い出せない。
この船に乗る前、何をしていたのかも思い出せない。なんならわざわざこの島へ来て働くようになったのかも、覚えていない。
とりあえず職場か住宅かに行こう。そうしたっら何か思い出すでしょう。
私は他の人に続いて、港についた。当然のように始めてきた島だ。そこでどこに何があるのか、分からない。
『ようこそ、不思議なことが多い瑠璃島へ』
白いブレザーの女子が、こんなことが書かれた横断幕を持って立っているのが見える。
島にきたお客さんを歓迎しているのかな? きっとお客さんが来るのがまれなのだろう。
どこへ行けばいいのかよく分からない。私は何らかの目的を持ってこの島へ来たのは分かる。でもそれが何の目的で、どこへ行けばいいのか分からない。
「島へ来た方は、こちらで休んでください」
そこでそんな声のする方向へ向かうことにした。
駅の待合室みたいに、外からでも椅子がたくさんあることが分かる簡易的な建物。入り口付近には自動販売機もあって、ちょっとした休みにはもってこいだ。
そこで自動販売機でココアを買って、入り口から遠いところの椅子に座る。
ココアを飲みながら、ゆっくり休む。カロリーと甘い物を取ったから、少しずつ思い出してきた。
そうだこの島で私は働くのだ。今から確か住まいと職場へ向かわなくちゃ。
「藤浪三緒さん、はじめまして。私は鈴木瑠璃です。この島に来たばかりなんですね」
黒のブレザーに同じ色のスカート、それに白のブラウスを合わせている中高生っぽい服装。でもハーフアップにしている青っぽい髪がキラキラしていて、顔も整っているから、なんだか特別な女の子って感じがする。
「私は藤浪三緒です。さっきの船で、島に来ました」
「藤浪さんは待雪草の図書館で働くから、そこへ行くのでしょう。私も一緒に行っていいですか? 図書館に興味があるんです」
どうして鈴木さんは私が図書館へ行くと思ったのか? 私は職場が図書館で、今から図書館へ行くとは思っていないのに。
「うーんうまくどこへ行けばいいのか思い出せないんです。そこで図書館へ行けばいいのかも分からないです」
正直に私は答える。今のところ待雪草の図書館に私が何の関係があるのかも、よく分かっていない。
「島へ来たばかりの方はそうでしょうね。でもこの島は狭いですし、とりあえず歩いてみましょう。そうしたら何か思い出せるかもしれません」
鈴木さんは目をキラキラさせて、笑顔で話している。
「そうですね。行ってみます」
どうしたら分からないのは事実だし、私はココアの缶をゴミ箱に捨ててから、鈴木さんについて歩く。
「ここは港です。港の近くには郵便局や銀行などいろいろあるんですよ。なんとチェーンの飲食店もあるので、人気です」
「そういえば栄えた駅前って感じがします」
慣れたように歩く鈴木さんの後ろを、私は周りを見つつ歩く。
ここは港の近くで、色々な建物がある。ここだけ見ると地方都市の駅前みたいで、小さな島って感じがしない。
「ここからが待雪草町です」
10階よりも少し低いアパートが道路の両側にある。島の家は一戸建てが多いから、これも予想外だ。
「藤浪さんの家もこのアパートのうちの一つです」
「へーそうなんですね」
どのアパートに私の家があるのかも思い出せない。図書館へ行ってから、後で探そう。
それにしてもなんで鈴木さんは私がアパート暮らしだって思うのか? 島へ来た人は大抵アパートに住んでいるってわけじゃなければ、私のことを鈴木さんが知っているということになる。そんな今日初めて会う鈴木さんが、私のことをあらかじめ知っているなんてありえないでしょう。
「ここが図書館ですよ。確か肩掛け鞄の中に鍵があるはずです」
なんでこの子、私が図書館の鍵を持っているのを知っているのか? 分からないけど言われたままに鍵を取り出すけど、いくつか種類がある。どれなんだ?
「これです」
鈴木さんは迷いもせず鍵を選び、図書館のドアを開ける。
図書館はビルの1階で、本が多く殺風景な感じがする。本があちこちに置いてあって乱雑な感じがするけど、それであっても殺風景な感じがするほど、つまらない。
「これからよろしくお願いします、三緒さん」
鈴木さんは図書館の中で、にこにこと笑う。
どうしたらいいのか分からないけど、ここでこれから私は生きていく。
そう改めて思ったのでした。




