お前らいつからソープ嬢になった
「ちょっと男子! 先週の大浴場のあれ、なんなの!? 待ち伏せして浴場に入った私たちに襲いかかる! 散々身体を弄んだ後、精液をかけて逃走する! これ、挿入されてないだけで完全にレイプだから!」
女子たちの怒声が教室に響き渡った。
アヤメを筆頭に、ハイレグTバックのパイロットスーツ姿の女子たちが、男子たちを睨みつける。
彼女らが話題にしているのは、先週の夜間行動訓練で宿泊した施設の大浴場での一件だ。
男子のリーダー、タカシが即座に立ち上がって反撃に出る。
「男子の入浴時間中に勝手に入ってきたのはお前らだろ!」
彼の声に、他の男子たちが「そうだそうだ!」と賛同する。
「追い返そうとすれば、ソープ嬢みたいに俺たちに抱きついて胸や股間、尻を擦り付けてきて、勝手に俺たちの身体を洗い始める! 俺たちが射精したら『さっさと出ろ』って追い出すんだぞ! 俺たちの方が被害者だろ!」
確かに、先週の大浴場での出来事は異常だった。
男子たちが入浴していると、突然女子たちが乱入。追い出そうとする男子たちに抱きつき、豊満な胸や尻を擦り付けながら「効率よく洗おうよ!」と笑顔で身体を洗い始めたのだ。
結果、男子たちは耐えきれず射精し、その隙に浴場から追い出された。
女子たちは負けじと反論する。
「連絡の行き違いで男子の時間に入っちゃっただけだよ。わざとじゃない!」
アヤメが髪をかき上げながら続ける。
「それに宇宙戦争時代じゃ、限られた時間で全員が入浴を済ませるために、男女が互いに身体を擦り付けあって洗うことで時間を節約して、まだ入れない仲間と交代するのが一般的だったんだから! ソープ嬢なんて言われるのは心外だよ。擦り付け合ううちに射精しちゃった男は率先して浴場を上がるのがルールだったって、訓練教官のミサト先生から聞いてる。ちなみに担任の山崎先生とミサト先生は今でも一緒にお風呂に入ってこの方法で身体洗ってるらしいよ?」
担任の山崎は内心で盛大に頭を抱えた。
(確かに戦争中は入浴時間が限られてて、男女まとめて入ってさっさと交代してたが、身体を擦り付けあって洗うなんて聞いたことねえよ……)
彼の脳裏には、妻であるミサトにソープ嬢プレイを頼んだ記憶が蘇る。あれは夫婦の性生活の一環でしかない。
(ミサト、夫婦のプライベートを生徒にバラすなって……)
自分の性癖を暴露したくない山崎は、苦笑いを浮かべつつ口を噤んだ。
男子たちはさらに反論を続ける。
「絶対それ嘘だろ! 先に俺たちが入ってた時点で出直せよ!」
タカシが声を荒げて言う。
「そもそもお前らが勝手に入ってきたのが悪いんだよ!」
女子たちは涼しい顔で反撃に出る。
「服脱いじゃってたし、出直すのは時間の無駄だし風邪引くかもしれないじゃん!」
アヤメがニヤリと笑って続ける。
「身体洗ってあげた上に射精までさせてあげたんだから、文句言わないでよ!」
教室が一瞬静まり返り、次の瞬間、男女のバトルがさらに加熱した。
「エロいことすればなんでも許されると思うな!」
タカシが拳を握り潰す勢いで叫ぶ。
「実際喜んでるじゃない、スケベ!」
アヤメが挑発的に胸を突き出して言い返す。
「勝手に入ってくるな!」
「効率のためだよ!」
「射精させんな!」
「率先して上がれってルールでしょ!」
騒ぎは収まるどころかエスカレートし、教室はまるで戦場のような混乱状態に。山崎は疲れた目でその光景を見つめる。
(エイリアンよりこいつらの相手の方がキツいな……)
彼の脳裏には、ミサトに笑いながら身体を擦り付けられた昨夜の記憶が蘇る。あの時は夫婦の愛だったが、生徒たちにまで影響を及ぼすとは。
そして今日も、女子と男子のバトルは平行線をたどる。
この過激で奇妙な日常が、このクラスの常態だった。
だが、そんな彼らの知らないところで、宇宙の深淵から新たな脅威が迫りつつあった。次なる戦いの日、大浴場での「効率」が戦場でどう試されるのか、彼らはまだ知らない。