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動けない俺達に何をする


「ちょっと男子! 訓練のスコア勝負で負けた腹いせか知らないけど、私たちをシミュレーターに連れ込んでお尻に勃起したものを押し当てた挙句射精するとか、本当になんなの? セックスの真似事でもしてるつもり?」


 女子たちの怒声が訓練棟に響き渡った。

 アヤメを筆頭に、ハイレグTバックのパイロットスーツに身を包んだ女子たちが、シミュレーターの前で男子たちを睨みつける。

 その姿は、訓練の緊張感とは裏腹に妙に扇情的だった。


 男子のリーダー、タカシが即座に立ち上がって反撃に出る。


「お前らが勝手にシミュレーターに乗り込んできた挙句、狭い中で身動き取れない俺たちに尻コキしたのが原因だろ!」


 彼の声に、他の男子たちが「そうだそうだ!」と賛同する。


「あれ、シミュレーターでのスコア勝負に負けそうだったから妨害するつもりでやったんだろ? 俺たちが押し当てたんじゃなくて、お前らが擦り付けてきたんだよ!」


 確かに、事の発端はシミュレーターでの訓練中だった。

 狭いコックピット内で、女子たちが突然乗り込んできて尻を押し付けてきたのだ。

 男子たちは身動きが取れず、スコアどころか理性まで崩壊寸前だった。


 女子たちは負けじと反論する。


「実戦じゃ、機体を失った仲間を自機に収容してそのまま戦闘するなんて日常茶飯事だったんだよ!」


 アヤメが胸を張って続ける。


「訓練教官のミサト先生もそう言ってた。ちなみに昨日、ミサト先生と担任の山崎先生はシミュレーター内で尻コキどころかセックスしてたってさ。実戦意識の高い訓練ってそういうもんだよ!」


 担任の山崎は内心で盛大に頭を抱えた。


(確かに宇宙戦争時代、機体を失った仲間を収容して戦ったことはあるが、尻コキとか考えてる暇なんてなかったぞ……)


 そして、昨日のミサトとのシミュレーター内での行為は、訓練とは関係なく単なる夫婦の情事だ。


(ミサト、夫婦のセックス事情を生徒にバラすなよ……)


 山崎は妻の奔放さに呆れつつ、自分の名誉のために黙ることにした。


 男子たちはさらに反論を続ける。


「あの時、シミュレーターの合計スコアが高い方が一ヶ月間、全ての当番を代わるって勝負してたろ!」


 タカシが声を荒げて言う。


「女子は明らかに負けが見えてた。だから急にシミュレーターに入ってきて妨害してきたんだろ! 俺たちがリードしてたのに、スコア以前に集中力ぶっ壊されたよ!」


 女子たちは涼しい顔で反撃に出る。


「より実戦を意識した訓練をするためにやったことで、勝負なんて関係ないよ!」

 アヤメがニヤリと笑って続ける。


「負け惜しみを言うのは男としてみっともないんじゃない?尻コキして射精させてあげたんだから、お礼の一つでも言ってみなよ!」


 教室、いや訓練棟が一瞬静まり返り、次の瞬間、男女のバトルがさらに加熱した。


「妨害されなきゃスコア勝負はこっちの勝ちだったんだよ!」


 タカシが拳を握り潰す勢いで叫ぶ。


「結果は結果、負けたのはそっち! せめてものお情けで尻コキしてあげたんだから感謝しろ!」


 アヤメが挑発的に尻を振って言い返す。


「実戦意識とか関係ねえだろ!」

「戦場じゃ仲間を助けるのが当たり前だよ!」

「射精させんな!」

「射精させていただきありがとうございます、でしょ!」


 騒ぎは収まるどころかエスカレートし、シミュレーターのモニターまでが警告音を鳴らし始めた。

 山崎は疲れた目でその光景を見つめる。


(宇宙戦争よりこいつらの言い争いが過酷だな……)


 彼の脳裏には、ミサトに「昔を思い出すね!」と笑いながらシミュレーター内で尻を押し付けられた昨日の記憶が蘇る。夫婦だけの遊びみたいなものだが、生徒たちにまで波及するとは。


 そして今日も、女子と男子のバトルは平行線をたどる。

 この過激で奇妙な日常が、このクラスの常態だった。

 だが、そんな彼らの知らないところで、宇宙の深淵から新たな敵が迫りつつあった。次なる戦いの日、シミュレーターでの「実戦訓練」が真の試練に直面する時が来ることを、彼らはまだ知らない。


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