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いろんな意味で実戦を体験した


「さて、男子も病院から戻ってきたところで、お前らなんで今日集められたのか、分かってるよな。そう、病院内でのクラス全員による不純異性交遊だ」


 担任・山崎の重々しい声が教室に響き渡った。普段なら男女のバトルで騒がしいこの教室も、今日は異様な静けさに包まれている。

 生徒たちは全員俯き、恥ずかしさと嬉しさと申し訳なさが混じった複雑な表情を浮かべていた。


 話は一週間前に遡る。

 その日、戦闘機動訓練の最中、宇宙戦争時代のエイリアンが残した無人兵器群が突如スリープ状態から覚醒。訓練中のクラスを襲撃したのだ。

 敵の数は膨大で、学校の防衛力だけでは対処しきれず、軍の即応部隊の出動が要請された。だが、到着は間に合わない。救出は絶望的かと思われた。


 しかし、負傷した訓練教官ミサトと女子たちを守るため、男子たちが自ら盾となって奮戦。

 そこに、教え子と妻を救うため急遽出撃した山崎が加わり、無人機群を全滅させた。

 奇跡的に死者はゼロ。山崎がほぼ全機を撃墜したが、男子たちの決死の抵抗がなければ、彼の到着前に全滅していたかもしれない。まさに紙一重の戦闘だった。


 問題はその後だ。


 戦闘後、治療のために病院に収容された男子たちの元へ、女子たちがお見舞いに訪れた。

 自分たちを守るために戦った男子たちに礼を言うだけのつもりだったが、初の実戦の興奮が冷めやらぬ中、感情が溢れてしまったのか、全員が病院のベッドで激しく交わってしまった。

 狭い病室は熱気と喘ぎ声に包まれ、看護師が駆けつけた時にはすでに手遅れ。

 当然、大問題となり、今こうして担任から説教を受けているわけだ。


 男子のリーダー、タカシが口を開く。


「あれは俺たちが強引に頼んだことだ。女子は悪くない。責任は全部俺たちにある」


 彼の声は震えていたが、目を逸らさず山崎を見つめた。


 すると、女子のリーダー、アヤメが即座に反論する。


「違うよ! 私たちの方から迫ったんだ。私、もし男子が戦死したらどうしようって不安で怖くて仕方なかった。生きてるって実感したくて、抱いてもらったの!」


 彼女の目には涙が浮かんでいた。


 山崎は呆れつつも、互いを庇い合う男子と女子に一抹の誇らしさを感じていた。


(こいつら……戦場でも絆は変わらねえんだな)


 彼は深く息を吐き、罰として訓練場の整備を命じた。それで終わりだ。そして男子たちに向かって一言だけ告げた。


「英雄になろうとするな。生き残ることだけ考えろ」


 職員室に戻った山崎は、負傷が癒えていない妻・ミサトに会った。


「お前も頼むから無茶すんなよ」


 ミサトは笑って答えた。


「教え子を見殺しには出来ないよ。でも、あなたが必ず来てくれるって信じてた」


 二人は抱き合い、キスを交わした。宇宙戦争時代、戦闘を生き残った後にいつもしたように。


 その頃、訓練場の整備に取り掛かる男子と女子。

 タカシが汗を拭いながら呟く。


「正直、実戦はこりごりだな」


 アヤメがニヤリと笑って返す。


「でもベッドの上の実戦はまたやりたいね」


 二人は顔を見合わせて笑った。


 この過激で熱い日常が、このクラスの常態だった。

 だが、そんな彼らの知らないところで、宇宙の深淵から新たな敵が蠢き始めていた。次なる戦いの日、戦場とベッドでの絆が再び試される時が来ることを、彼らはまだ知らない。


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