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いやらしい目で見るなとか、無理言うな

「ちょっと男子、いやらしい目で見ないでよ!」


 女子たちの鋭い声が教室に響き渡った。

男子たちは一瞬ムッとした顔を見せつつ、即座に反撃に出る。


「いやらしいって言うけどさ、実際いやらしいんだよお前ら! なんだよそのエロすぎる格好!」


 確かに、女子たちの服装は目を引くものだった。

 全員がピッチリとしたハイレグとTバックのレオタードを着用し、体のラインがくっきりと浮かび上がっている。布面積は極端に少なく、まるで挑発するかのように肌を露出していた。

 男子たちの視線が泳ぐのも無理はない。


「この格好やめろよ、まず!」

と男子の一人が声を荒げた。

 すると女子のリーダー格であるアヤメが、腕を組んで冷たく言い返す。


「これはレオタードじゃないよ。『人型兵器エクス・フレーム』の操縦訓練時に着るパイロットスーツだよ。どうせ訓練になったら着替えるし、このスーツが高性能で快適だから日常的に着てるだけ。文句ある?」


 男子たちは顔を見合わせ、ため息をつく。確かにそれは事実だ。

 宇宙戦争が終結して数年、政府は次なる危機に備え、全国の高校生に人型兵器の操縦訓練を義務づけていた。

 特に女子用のパイロットスーツは、機体との神経接続を最適化するため、極端に露出度の高いデザインが採用されている。アヤメたちの言い分は正しいと言えば正しい。


 担任教師の山崎は、頭を抱えながらそのやり取りを聞いていた。

 彼自身、宇宙戦争時代に最前線でエクス・フレームを操縦していた元パイロットだ。

 女子たちの言い分が正しいことは身に染みて理解している。

 あの戦争中、パイロットたちはこんなスーツを日常的に着て、時には敵の襲撃に備えてそのまま寝泊まりしていたのだ。

 だが、今は平和な時代だ。いくらなんでも、この状況は違うだろ、と内心で毒づく。


 それでも山崎が何も言えないのは、規則が規則だからだ。

 スーツの着用は訓練の一環として認められている。文句を言う権限が彼にはない。


 男子たちはさらに声を上げた。


「だったらさ、いちいちその際どいハイレグやTバックを見せつけてくるのやめろよ! 胸とか尻とか押し付けてきたり、ひどい時には目の前で制服からスーツに着替えるとか何!?」


 教室の後ろで、実際に今その場で着替え始めた女子がいた。制服のスカートを脱ぎ捨て、ハイレグスーツに足を通す姿に、男子たちの顔が真っ赤になる。

「やめろって言ってるだろ!」

 男子が叫ぶが、アヤメは平然と肩をすくめた。

「これは宇宙戦争時代のパイロットたちにとっては日常だよ。変なこと考える方が悪いんじゃない? 私たち、訓練で鍛えたこの体に誇り持ってるし?」


 その言葉に、男子たちはぐうの音も出ない。

 確かに女子たちは訓練で鍛え上げられた引き締まった体型を誇らしげに披露している。筋肉と柔らかさの絶妙なバランス、スーツ越しに見えるその曲線美は、まるで芸術作品のようだった。

 だが、それが男子たちにとっては悩みの種なのだ。


 山崎は内心で苦笑する。

(確かに戦争中はこんな感じだった。だがな、今は戦場じゃないんだぞ……)

 それでも彼は黙って見守るしかない。


 そして今日も、教室では女子と男子のバトルが平行線をたどる。


「エロすぎる!」

「訓練のためだよ!」

「見せつけるな!」

「見るなよ!」


 この騒がしいやり取りが、このクラスの日常だった。

 だが、この平穏な日常の裏では、再び宇宙の闇が動き始めていることを、彼らはまだ知らない――。

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