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異世界の勇者

「本当に帰ってしまわれるのですね、ハルヒロ様…」


「あぁ。もうこの世界に、勇者は必要ないだろう?それに、残してきた家族や友人が俺を待ってるはずだ。あいつらを忘れるなんて、出来ないんだ」


地球とは異なる世界、ナルドム。追い詰められた人族の召喚術によって呼び出された俺はここの勇者として、目の前にいるナターシャ姫を含め仲間と一緒に6年間戦った。

ナルドムには魔力や闘気と呼ばれる力が存在し、最初はこの力を扱うのに戸惑ったが、どうやら俺には魔法と闘気両方に才能があったらしくすぐに習得することが出来た。

そこから地道に力をつけ、俺は遂に魔族の王を打倒した。


「私は、ハルヒロ様の1番にはなれなかったのですね…」


辛く長い6年間だった。死んでしまった仲間もいた。だが俺は地球に帰ることを、残してきたあいつらにまた会うことを目標に戦い続けた。

それが遂に、叶う日が来たんだ。

そう思うと身体が震えてくる。


「ん?何か言ったか?」


「い、いえ!何も!」


目の前には国が用意してくれた魔法陣がある。これは俺が元いた世界に送還してくれるという代物だ。

息を吸い、大きく1歩踏み出して召喚魔法陣に乗る。

魔法技師に目で合図を送ると、魔法陣が起動した。


「じゃあ、ナターシャ。元気でな。お前のことは忘れない」


「…!はい!わた、私も!ハルヒロ様のこと、絶対、絶対に忘れません!だから、あっ………ハルヒロ……様…」


ナターシャが最後まで言い切る前に晴弘はナルドムから消えた。

ナターシャの頬を1滴の涙が伝う。




晴弘は自分が世界と世界の狭間で移動している感覚を味わっていた。6年前、地球からナルドムに移動した際もこの景色を見た。


そういえば、6年前俺は富士山の頂上で写真を撮っていた時に召喚されたんだったな。大学2年生の、夏休みでもなんでもないただの土日に日帰りで登山したんだったっけ。

確かメンツは俺と泰樹の2人だな。泰樹、元気にしてんのかな。もう就職してんだろうな。

ってか、戻ったら俺どうなるんだ?神隠し扱いにでもなってるのかな。泰樹の目の前で消えた訳だし。テレビで有名になったりして!

あ、あとナルドムで覚えた魔法とか闘気は流石に地球じゃ使えないのかなぁ。使えないとしたら、富士山から降りるの面倒すぎるなあー。


取り留めもないことを考えているうちに、目の前が白く輝き始めた。


「そろそろ地球か」


視界が白で埋め尽くされる。眩しさに目を瞑り、そして再び目を開けるとそこは6年前に最後に見た地球の景色。富士山の頂上だった。

辺りには誰もおらず、静かだった。


「あっちが富士宮市かな?懐かし……くないな。あんなだったか?」


南側には富士宮市の街並みが見えるはずだが、そこには巨大な工場のような施設があるだけだった。


「は、え?デカすぎだろ…高さだけでも富士山と同じくらいあるぞ…」


どれだけ大きいのかもわからない極太の配管や、晴弘の目線ほどまで高く聳え立ち煙を吐き続ける煙突。さらには地面に大穴を開けている掘削機のようなものまであった。


そんな光景に呆然と立っていた晴弘だが、左側から突如轟音が連続して鳴り響き、反射的に障壁魔法をドーム状に展開。即座に身の安全を確保した。

いつ何が起こるかわからないナルドムの魔境で会得した最速の魔法展開技術だ。


音の発生源に目をやると富士山の東側、横浜からミサイルが発射されていた。

真っ直ぐ空に昇って行ったミサイルは徐々に角度を変え、富士宮市へと標的を定める。


そしてそのまま富士宮市の巨大プラントに炸裂する…かに思われたが、巨大プラントからレーザーが一閃。富士宮市に飛来したミサイルは全て空中で爆発し工場にダメージを与えることは無かった。


「なんだったんだ………ってか魔法使えてるな、俺。」


ドーム状に展開した障壁魔法を解除し、立ち上がる。


「まずは山を降りなきゃな」


とにかく情報が欲しい。富士宮市か横浜に向かいたいが、どっちがいいのだろうか。

状況から考えるに、俺のいない間に日本は戦争状態に突入したのだろう。だが、俺の知る限り日本はあんなトンデモレーザー兵器なんて持ってなかったはずだ。きっと横浜が日本陣営だろう。

と言っても、世界のどこにもあんなレーザー兵器持ってるところなんて無かったはずなんだけどな。


突然、俺の第六感が警鐘を鳴らした。

反射的に抜剣しながら振り返ると俺目掛けて1発のミサイルが飛んできていた。

着弾までのこり500m程。引き伸ばされた時間の中、俺は魔法を構築する。

イメージするのはさっき巨大プラントから発射されたレーザー。ちょうどあんな魔法をナルドムで習得していた。

魔力を練り上げ、指先に集めて放出する。細い光線がミサイルを貫き、ミサイルは空中で爆発。爆風が俺の髪を揺らした。


「俺の存在がバレてるな。早めに移動しよう」


今ミサイルが飛んできたのは富士宮市の巨大プラントからだ。富士山の頂上にいるたった一人の人間を補足するなんて、さっきのレーザー兵器といい凄まじい技術力だな。

俺は闘気で強化された脚力で富士山から駆け足で飛ぶように降りた。

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