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2/5

 その扉は何故か物置の中で、とても邪魔になりそうなど真ん中に置かれていた。

 父さんや義母さんに聞いても、そんな扉は知らないという。

 なので見せてみたのだが——2人には扉が見えなかった。

 何故俺にだけ見えるのかも謎だが、誰の記憶にも無いものが何故物置に入っているのかも謎だ。

 誰かが置いたのか?


 しかも俺はさわれるのに、父さんも義母さんもその扉にれる事は出来ずに、すり抜けてしまう。

 俺が持ち上げて物置の壁に軽く当てると、コンッという音が物置内に響いた。

 つまり物理的に壁に衝突するのに、両親はすり抜けるという謎仕様なのである。

 でもその時の当たった音は2人にも聞こえたらしい。

 特定の人間だけが不可視で接触も出来ないなんて、どんな仕組みなんだろう?


 とりあえず、この扉の事については誰にも言わないで欲しいと両親にお願いしておいた。

 超常現象研究家とか来たら面倒だからな。

 そして、そんな物に興味津々であろう妹にも知られないように、内緒にしてもらう事にした。

 多感なお年頃で、そんな奇怪な物が家にあると知ったら——嬉々として大騒ぎしそうだし。


 そんな訳でその扉は俺の部屋に置く事にした。

 外に設置してある物置では、誰かに持って行かれてしまう可能性もあると思う。

 いや、俺にしか見えないし触れないんなら何処にあってもいいとは思うんだが、何となく気分の問題で家の中に置いておきたかった。

 それに色々検証したかったというのもある。

 そもそもこの扉は何の為にあるのか。

 ファンタジー小説大好きな俺としては、異世界に繋がる扉だったらいいなと密かに期待していた。


 自分の部屋から入れるスペース——ウォークインクローゼットの奥に扉を置いた。

 俺の身長より少し大きい程度なので、なんとか入れる事が出来た。

 で、さっそく検証してみる事に。


 俺しか触れられないのであれば、この扉は俺にしか開けられないという事だと思う。

 扉は、木で出来た上部が丸くなっている洋風の扉だ。

 取っ手部分は金色の丸ノブ。

 そこに手を掛けて軽くひねると、カチャリと音を立てて扉が……開かない?

 あ、押すんじゃなくて引くのか?

 引いてみた。

 開かない。

 どうなっとんねん。

 そしてそのままガチャガチャやってたら、横にスライドして開いた。

 いや、なんで明らかにドアみたいな丸ノブが付いてるのに、スライド式なんだよ!

 まぁ開いたのでそこはもうどうでも良かったのだが。

 というか、ドアの向こう側の景色を見たら、本当にドアがスライドした事なんてどうでも良くなってしまった。


 俺の部屋のウォークインクローゼットの先に、明らかに空間的におかしい部屋が広がっていた。

 我が家にこんな広いスペースがあるはずが無いのだ。

 ざっと見ただけで、広さ 30㎡以上の洋室が扉の先にあった。

 しかも何やら豪華な家具まで設置されている。

 どこかのお宅に繋がってしまっているとしか思えなかった。


 勝手に入ると怒られるかも知れないし、不法侵入という事にもなりかねない。

 っていうか、よく考えたら、向こう側から勝手にこっちの部屋に入ってくる事も出来るんじゃないだろうか?

 そう考えたら、自分の部屋に扉を置くのがちょっと怖くなった……。

 一先ず扉を閉めると、向こう側からこっちの部屋に勝手に入って来れないように、ドアノブに縄を引っ掛けるようにして、ドア全体をロープでグルグル巻きにした。

 これで俺が不在の時にドアの向こう側から誰か入って来ようとしても大丈夫だろう。


 とりあえず、検証する時にだけ縄を外す事にしよう……と考えた時、突然ウォークインクローゼットの扉がガラリと開かれた。


「お兄ちゃん、クローゼットで何してるの?」


 何してるの?じゃないよ。

 何で勝手に俺の部屋入ってくるわけ?


「あい、ノックもせずに勝手に俺の部屋入って来ちゃダメだろ」

「え? お兄ちゃんの部屋はあいの部屋でもあるよね?」


 ないよね?

 あいの部屋はあいの部屋でちゃんとあるでしょうが。

 なんで俺の部屋まであいの部屋になっちゃってるの?

 何なのそのジャイ○ニズムは……。


 俺は部屋のドアに、鍵を付ける事にした。

 そうだ、ついでにこの奇妙な扉にもロック出来る鍵を取り付けよう。

 いちいち縄を解いたりするの面倒だし。


 なんて考えてたら、あいが扉の置いてある方を凝視していた。

 ……まさか、見えてるのか?


「お兄ちゃん、そこに何かいない?」


 怖い事言うな。

 夜ウォークインクローゼットに入れなくなるだろうが。


「うーん、何か変な感じがするんだよねぇ……封印してた右目で見たら分かるかなぁ?」


 眼帯を外して右目で見ていたが、どうやら扉自体は全く見えていないようだった。

 でも何らかの野生的な勘で、そこにあるものを感じ取ってるのかも知れない。

 恐るべし我が妹……。

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