闇属性な妹と元闇属性な兄
−−−Side.妹−−−
私のお兄ちゃん、黒羽悠一はとてもかっこいい。
ちょっと抜けてるとこもあるけど、マジイケメンなのである。
自分では「俺はフツメンの中のフツメンだぞ」なんて言ってるが、私の目は誤魔化せないのだ。
中学の時もお兄ちゃんの周りにはいつも多くの人がいた。
しかし、私が中学二年になったと同時に、大好きなお兄ちゃんは高校生になってしまった。
一緒に通えなくなる事に号泣したら、中学に近い高校に行く事にするとお兄ちゃんが言ってくれた。
お兄ちゃんマジ優しい! 神!
あっ、神じゃなくて闇の貴公子だった。
でも最近は、あんまり『闇』の話をしてくれなくなったんだよなぁ……。
以前は私と一晩中語り合ってくれたのに。
受験で忙しかったから、闇の力が弱まってるのかな?
今日も朝からお兄ちゃんと一緒に登校する。
相変わらずチラチラとこちらを見てくる視線が多いんだけど……。
お兄ちゃんが格好いいから、告白しようと機会を覗っているんだと思う。
何故か男子の視線が多い気もするけど、私は別にそういう趣味の人がいる事もちゃんと理解している。
でも、お兄ちゃんの人気が凄すぎて、私にかまってくれなくなるのは嫌だなぁ。
「くっ、私の中の闇封印が解き放たれそう……」
「俺は今すぐ、お前のその設定を封印してやりたいよ」
設定?
お兄ちゃんが何を言ってるのかよく分からない。
それにしても、やっぱりお兄ちゃんは封印を使えない程闇の力が弱まっているみたいだ。
なんとかお兄ちゃんの闇の力を取り戻してあげたいんだけど……。
もう一度、儀式を執り行うべきだろうか?
そういえば、この前お家の倉庫でやった、異界の扉召喚の儀式は楽しかったなぁ。
魔法陣が描かれてる布に呪文唱えたら、なんかピカッって光ってたし。
結局何も召喚されなかったんだけどね。
「あ、おばあちゃん、信号渡るんなら手を引いてあげるよ」
「おや、お嬢ちゃんありがとうね」
「ふっふっふ、闇の眷属としては当然の事だからね」
信号待ちしてるおばあちゃんがいたので、手を引いてあげたらお兄ちゃんに頭を撫でてもらった。
むふふ、闇の力が高まっていく。
中学の校門に差し掛かると、お兄ちゃんは高校の方へ行ってしまった。
一抹の寂しさが過ぎる。
お兄ちゃんが卒業してから、学校が酷くつまらないものに思えるようになってしまった。
お兄ちゃんの心が離れてしまったような気がして、私の闇の力が弱まった。
このままでは、私の中の封印が解けてしまう。
右目の封印だけじゃ足りない。
でも、左目にも封印を使うと前が見えなくなっちゃうから、今度は腕に封印を施す事にしよう。
帰りに、リストバンドに使う刺繍糸買いに行こっと。
−−−Side.兄−−−
俺の妹、黒羽あいは超絶美少女なのだが……。
現在空想的な事に夢中になるお年頃という事もあって、右目を覆うように、自作した魔法陣の描かれている黒い眼帯を常に付けている。
もちろん学校に行く時もだ。
そして、何故かそれを先生は注意してくれない。
「おっ、今日の封印は新しい文様になってるな」
「ふふふ、先生見る目があるね」
先生と妹の会話の一部を抜粋するとこんな感じである。
おっじゃねーよ、注意しろよ先生。
いや、別に校則違反じゃないから、いいんだろうけどさ。
まぁそれも妹の容姿がとても整っているから許されている事なのだろう。
金髪碧眼の美少女という、どこの漫画のヒロインだと言わんばかりの可愛さなのである。
決して俺がシスコンだからそう見えている訳ではない。
いや、シスコンではあるのだが……。
客観的に見てもうちの妹は、絶世の美少女と言っても過言ではない程に可愛いという事だ。
しかも困った人を助けたりと、優しい心も持ち合わせているマジ天使。
黒髪黒目のフツメンで全くモテない俺とは大違いである。
まぁ血が繋がってないんだから、顔立ちに差があるのはしょうが無い事なんだけどな。
父さんと義母さんは互いに再婚で、それぞれの連れ子として俺と妹が出会ったのはもう10年も前の事だ。
義母さんが海外の人で、これまた金髪碧眼の超絶美人。
何故平々凡々なうちの父さんと結婚しようと思ったのかは、世界七不思議の一つに数えられてもいいぐらいである。
妹は幼かった事もあり、どうやら両親が再婚した時の事は殆ど覚えていないようだった。
そんな妹が、最近可愛さに磨きが掛かってきて、兄としては少々心配になってる。
妹は学校の成績も良く地頭は悪くないと思うんだが、時々理解出来ないような行動をする事もあるからだ。
学校へ行く時も、男からだけでなく女からの視線も多くて辟易する。
密かに学校で行われた『妹にしたいランキング』で、2位以下が存在せずに1位に妹が君臨しただけのランキングになってしまった程だ。
幸い、妹の言動について来れる奴がいないので、男と仲良くなる事は無いようだが……。
ちなみに妹は俺の影響で、現在『闇』属性にはまっている。
まぁ中学二年生ってそういう時期だよな……。
昔も俺は——おっと、封印した記憶にアクセスしてしまうところだったぜ。
16歳にもなると、記憶を呼び起こしてしまった時の反動が凄まじいのだ。
闇の貴公子? なんだそれ?
そんなものは無かった。
封印したのだ。
しかし、その封印はある日突然破られる事となった。
家の物置で、俺が異世界に繋がる扉を発見してしまったから……。
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