魔法使いと王子様
人の不幸が蜜の味なのか、休憩時間のたびにクラスの外では人集りが出来ていた。
アレクは私たちに「ごめんね、僕のせいで」って申し訳なさそうに頭を下げようとしてミリアムに止められてた。
特に男子の視線。
このスタイルが仇になるとは思わなかった。
なんか廊下から舐める様な視線を感じる。
今までルキアスが私のことを公表してなかったのは無理矢理の婚約だから。って令嬢が睨んでたり。
婚約者になったのは寝たから。あの体型だからなぁとかいう目で見られたり。
令嬢からの暴言は慣れてるけど、男性からの視線はほぼほぼ身体目的で辛い。
違うと否定しても、でも公にしなかったのはねぇ?訳ありなんでしょ?みたいな、ニュアンスで言いくるめられる。
オマケにミリアムとの関係も匂わされてミリアムが「ないです!僕は(好み以下略)」を話して納得されてた。ちょっと意味わからない。
ルキアスとライアンが迎えにきた時も、あまり近づいてはいけないと思って、アリアとカーラを連れて逃げる様に寮に帰っていった。
一日目でこれとかハードゲーじゃん!!
寮に帰り、アリアの部屋を訪ねた。
「ちょっと、殿下とお茶会の日何があったのよ!」
渡されたって何を?そのことだけでも確かめたい。
あー、うん。と、歯切れ悪くアリアは言うと、持ってきていた小物ケースの中から一枚紙を取り出した。ちなみに小物ケースはメリィさんからの贈り物で私と色違いだ。
「地図?」
簡単な地図。
庭と図書室と医務室ここ!と書かれていてほんと、手書きの大まかな地図だった。
「笑いすぎててね、俯いてたら具合悪いって勘違いされて医務室の場所書いてあるからって渡されたの。自分は動けないからって」
「何で笑ってたのよ?」
「だってライアン様が…」
笑わせてきたのか?!あのライアンが?!
思い出したのかアリアは口元を隠して何でもないの!と話を終えた。
右手の小指に指輪が見えた。あんなの持ってたっけ?
「その指輪可愛いわね」
「…貰ったの。ちゃんと、意味があるのよ」
誰から?と、突っ込むのは野暮かな。
「良かったわね。おめでとう」
「…まだ伝えてないわよ」
そう言うと机に置かれていた瓶を持ってきて蓋を開ける。星の形のお菓子、金平糖を一つ摘み口に入れてくれた。うん、美味しい。
「私ね、昔読んだ絵本の中で、魔法使いさんが好きだったの。金平糖って、あの時の絵本の魔法使う時のエフェクトにそっくりでしょ。魔法使いさんも杖を、ぐるぐる回しながら呪文を唱えるの」
確か、王子様とかお姫様とか、魔法使いとか出てくるありきたりな話だったかな。元ネタ、シンデレラに近いなぁ〜って思いながら読み終えたら消えてた本。
アリア、アンタ借りパクしてたんかい!
「ぐるぐるぐるって」
人差し指で、宙に渦巻き模様を描いていく。
ピタリと止めると、金平糖をひとつまみして。
「そしたらね、お姫様は綺麗になって王子様の元へ向かうんだよ。綺麗にしてくれて勇気をつけてくれたのは…お姫様を変えてくれたのは魔法使いさんなのにって…」
消えそうな声で。
私は、と聞こえた気がした。
「…王子様じゃなくてね、魔法使いさんが好きなのにね」
って悲しく笑って、水色の金平糖を口に運んで。




