ライアンとナルシス
父は魔法使いだった。
ナイショだよ?と言って手から水の花を作り出した。
お前の力も、ナイショだからね。
父は頭を撫でてくれた。
必要とされたいの。
少女はあの日言った。
その言葉が。
愛されたいの。
と、聞こえたのは間違いだろうか?
ライアン・ミハエルは宿舎のベットから起き伸びをする。
近衛兵団に入隊したのに、気が付いたら騎士団にスカウトされていた。
近衛兵団でまだ成果を出していないので。と辞退し、城下に降りる。
見回りルートを先輩が気を遣ってくれたのか、母の居るクレイン公爵家や父が会長を務めるラビリアル商会を通る日が多かった。
たまたま。
本当にたまたまなのだ。
ラビリアル商会の前を横切った時、父に遭遇した。
再会、などではなく。遭遇。
歳を重ねるごとに奔放すぎる父の態度が目に見えてしまう。
まだまだ自分が子供なのだ。わかっている。これは生理現象なのだ、と言い聞かせて近寄ってきた実父を前に顔を顰める。
「ライアン!久しぶり〜」
「ご無沙汰しております、父上」
「相変わらず眉間に皺よってるねぇ〜!若いのに!」
ピエロの様な口調で笑う。
何故この父から自分が生まれてきたのだろう?
自分は心底母似だと実感できた。
「ねぇ、ライアン。聖火祭の日ね、夕方ちょっとここによってほしいなぁ〜」
そう言ってメモを渡された。
「見回りしてるよね?大体18時に行けばいいから」
勝手である。
「お父さんから可愛い息子にプレゼントだよ〜」
胡散くさい笑顔を撒き散らしている。
「ライアンが今一番知りたい事だよ」
父の何でもわかっている顔が、嫌だった。
反抗期なのだから仕方がない。
眉間の皺が宿舎に帰るまで治らなかった。




