ルキアスと(前編)
彼女を見るまで世界が色褪せて見えていた。
自分の育てた母代わりが見覚えのある人だったり、親族の集まりに【あの子】の友人だった人がいたり。
【あの子】に関係する人はいるのに本人がいない世界だった。
今回の自分は王族の次に偉い貴族の息子だった。
なんでも与えられる環境で、1番ほしいものが手に入らない。
【あの子】が欲しいのに、ここにはいない。
王家のお茶会で彼女を見つけた。
初めて会った【あの子】と同じ姿の彼女。
違う点は彼女は愛されていた。
綺麗なドレス、整えられた艶のある赤いイチゴみたいな髪の毛。程よく血色の良い肌。翡翠色の瞳が真っ直ぐ自分を見ていた。
記憶の中の【あの子】はいつも居場所がないようだった。使用人と同じワンピースを着て手足は同世代の子供達よりも細く、髪は傷んでいた。それでもあの子は翡翠色の瞳をいつもキラキラさせていて。まるで、宝石みたいだな、と思っていた。
そうだ、彼女が欲しい。
彼女を【あの子】の代わりにしよう。
隣にいた父親を一瞥し、前世の【あの子】を苦しめていた男だと確認する。
この男は彼女を【あの子】にしたら苦しむのかな?
大切な娘を殺して【あの子】の依代にしよう。
幸いな事にあの男との接触機会はある。今度話してみよう。
前回の儀式は失敗したのだから。
今回は違う方法で試そう。
多少強引ではあったが、彼女との婚約を勝ち取った。
迷惑そうに見ていた彼女の表情に、あの子はそんな顔しなかったのにな、と感情もなく淡々と思った。
彼女の妹がわずらわしい。その一点さえ除けば彼女とはそれなりに穏やかな日々が通り過ぎていた。
知識や教養があり、気遣いも忘れず、自分を立ててくれる。
他人行儀と言えば答えが出てきた。自分に向き合ってくれない。それでよかった。君はあの子の代わりなんだから。
そう思っていたのに。
あの子の親友だった、自分の身内。ミナリーから何か言われたのだろう。
彼女のソックリさんの恋人が死んだ。
その言葉に痛く悲痛な声を漏らし泣き始めた。
名前も知らない誰か。
前世の自分のためを思って泣いてくれている彼女がとても可愛く感じた。
やっぱり【あの子】の依代は彼女じゃないといけない。
彼女が【あの子】だったら幸せだ、と。
その日を境に彼女は距離を置いてくるようになった。




