ナルシー2
ナルサスからナルシスに変更しました。本編、ナルシスに気がついたら変わってました、なんてこったい笑
使用人の服に裸足。雨が降り始め夏だというのに肌寒かった。
ナナは1人見慣れた家の前に立っていた。数年前まで住んでいた家には灯りが照らされており、ここはもう帰る家ではないんだと改めて実感させられた。
王都暮らしのお嬢様だった。平民に落ちても大切なものを守りたい一心でアミリアに仕えてきていた。あっという間に居場所がなくなるどころか大切なお嬢様を手放した。
どうにでもなれという気持ちで走った。ただがむしゃらに。周りの目なんか気にしなかった。
気がつくと被服店の前にいた。数年前まで着ていたドレス。ショーケースに飾られているのは流行のスタイルだろうか。自分は着る機会がもう無いのだと眺めた。ふと、ガラスに映る自分は出会った頃のナルシスにそっくりだとおかしくて笑った。
「裸足ですよね?寒くないですか?大丈夫ですか?」
後ろを振り返り、声の主を見、感嘆した。
肩まで切り揃えられた水色に灰色の瞳。綺麗な身なりをした成長したナルシスがいた。
ナルシスもナナを見、勢いよく覆いかぶさるように抱きついた。
よく頑張ったね
その言葉を聞いて安心した。何故か疑問は浮かばなかった。
22歳、ある日の出来事。
別れた後、ナルシスは商人としての基盤を固め、成果を出した後ナナと再会。ナナが25歳の時に結婚。軌道に乗り爵位を買い上げた。成り上がりではあったが、ミハエル男爵と名乗り、数年後、子爵を名乗るまでになった。
子宝にも恵まれナルシスの色に似たナナそっくりの女児が産まれたある日。
新聞の片隅で、小さくアミリアの事故が取り上げられた。17歳、まだ若い命だった。
夫であるナルシスから新聞社へ問い合わせた所、死因は夫人を庇ったボート転落事故であった。
キリィは結婚していたのか、とナナはため息をついた。よく、あの性格で結婚出来たな、という意味の。まぁ、貴族だからあの先代が選んできた女だろう。
娘の育児と寝不足が祟り考えがまとまらない。アミリアが、いなくなった。この事実は変わらない。
心のどこかでお嬢様は政略結婚でも、あの家から出られて幸せに暮らしているのだろうと思っていた。間違いだった。
ナナは乳飲み子の娘のミミを抱きしめて嗚咽を漏らす。私だけ救われた。お嬢様は救われなかった、と。
同じ王都にいながら貴族としての敷居や格が違いすぎてエイデン家には近寄れなかった。噂でエイデン兄妹は学園に通い始めたと聞いていたため安心しきっていた。
気がつくと支えるように夫が寄り添っていた。耳元で甘美な言葉を囁きながら…
「大切なお嬢様にもう一度会いたくない?」
ナナは首を微かに動かした。




