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ナルシー1


ナルサスと書いてましたが、ナルシスに変更しました。と、言うか気がついたらナルシスになってました、本編。なんてこったい!笑


教えていただきましてありがとうございました!

ナルシー・ミハエルは子爵家の一人娘だった。


歴史ある子爵家、学者肌の者が多く本人の父も王城にて学者になっていた。

堅実な考え方で質素な暮らし。使用人は執事とメイド長夫婦、料理人が2人、メイドが3人、衛兵が1人と貴族の暮らしにしては慎ましかった。

別にお金が全てではない。子爵はその分ナルシーに学を授けた。



王都貴族と言うこともあり領地は持たなかった。ナルシーには王都の暮らしが全てだった。



ナルシーが13歳の春。

メイドを1人連れての散歩の帰り道に[ソレ]は倒れていた。

みずぼらしいぼろぼろの肌着に、痛んだ長髪。背はナルシーより高く痩せこけていた。

スラムのないここには相応しくない[ソレ]を街行く者たちは見知らぬフリをして通り過ぎていた。



助けなきゃ!




気がつくとナルシーはメイドに頼み家から馬車を呼び寄せた。

自宅へ着くと直ぐに湯を沸かし[ソレ]をお風呂に入れ休養した。


少年だった。


髪の毛は切り揃えられナルシーの前に現れた[ソレ]は灰色の瞳でつぶやいた。






「なんで生かしたのか」と。





人を助けるのに理由はいらない。住む場所がないならここに住めばいい。




ナルシーは少年にそう告げた。







少年はナルシーの自己紹介を終えた後に「ナルシス」と自己紹介した。















予兆はなかった。



父と母が馬車事故で亡くなった。



ナルシー15歳の冬だった。


気がつくとナルシーの周りには、ナルシスしか居なかった。













ナルシーはナナと名前を変え伯爵家のメイドになった。当代は亡き妻を愛しており、双子の兄妹を可愛がっていた。訳があり妹の方を表立って支えれないと言うことで、ナナは娘のお抱え侍女にされた。


一平民となったナナにナルシスは一緒にいよう、と告白してくれた。同情だったかもしれない。出会った頃と変わってナルシスはとても綺麗になった。平民でも貴族の愛人になれそうな顔立ち。灰色の瞳は本人が嫌がっているがナナは珍しい色なのでとても好んでいた。

ナルシスは強いからどこでもやっていけるわ。


ナナはそう言ってナルシスを突き放したーーー







ナナが仕えるアミリアはとても可愛かった。

齢3歳の少女はいつもニコニコしていた。お庭で花を摘み冠を作る少女らしい一面がある反面、年頃の子供が読まないような本や座学を行い、邸の使用人に対しても感謝や挨拶を忘れない。愛されるべき存在だと思った。

対して双子の兄キリィは我儘かつ乱暴な、一言で言えば 年相応の子。アミリアが神童だと判断すればキリィは尤も子供らしい子だった。アミリアに対するイジメはまだ微笑ましい子供のじゃれあいにもとれる程度で、使用人に対する我儘は、「まぁ、この頃の子はみんなこんな感じだよね」の反抗期に似た癇癪持ちだった。


歳をとるに連れてキリィのアミリアへの行いがエスカレートしていった。原因は先代の影響だ、と。使用人達の中でまことしやかに囁かれた。

先代は当主の父。前伯爵は長子を可愛がり、男が女より優れていると信じて疑わない頑固な男だった。当代がひとえに誠実な性格なのは先代が女を見下す割には女遊びが激しい男だからだと昔から邸を支えているキッチン長は言う。先代は言葉の通り、男の長子であるキリィを甘やかし続け、アミリアを蔑ろにし続けた。生かす殺さず、利益のための政略結婚の駒として最低限の施しを行っていたのだ。

本人はアミリアを嫌悪し近寄らないので若いメイドはアミリア担当になると教えられたのは雇われた後からである。


そんな話を聞いたら若いメイドは頬を引き攣らせ気がつくと辞めている、なんて事は日常茶飯だった。


ナナはアミリアの未来を過去のナルシスに重ねていた。

光のないどんよりとした目で死ぬように生きていた彼。日々を重ねていくうちに光を取り戻し、本来の陽気な性格になっていったナルシス。彼の誘いを振り払ってここまで来たのだ。今更後戻りは出来ないと気持ち半面、純粋にアミリアを支えたかった。









アミリア6歳の梅雨明けの日。キリィの過度ないじめにあい、アミリアは高熱を出した。梅雨明けということもあり少しジメジメした日が続き、アミリアは三日間高熱にうなされ二日間、目を覚さなかった。それからだ。





アミリアが神童から少女に変化した。何か憑き物が落ちたかのように幼くなり、言葉遣いも辿々しくなった。そして自身に自信がなくなり口をつぐむようになった。

医者は記憶障害だと判断し、日常生活に支障が出るわけでないと言うことで、政略結婚の駒としての役割を果たせる為、修道院行きは免れた。


アミリアは変わった。としても、中身はそのままなのだろう。使用人達には優しく、自ら進んで図書室に通い独学で座学に励む。失った記憶を取り戻す努力をするかのように昔の様に笑いかけてくる。それだけで、ナナは十分だった。








事件は当代の流行病からの他界からだった。

普通なら風邪をこじらせただけの軽症ですむが、当代は身内のストレスのせいで胃が弱っていたらしい。気管支にも影響が及び重症化。夜中に悪化し明け方には冷たくなっていたらしい。


葬儀を終えた後、ナナは先代に呼び出された。




ナナ個人の契約者が当代だったため契約更新を理由に。過去を知った先代はナナを当代の愛人と罵り、挙句、自身の妾に拵えようとしたらしい。襲われそうになった所を窓を破り逃げるように邸から飛び出した。


アミリアに別れの挨拶を告げなかった後悔を胸に秘めて。


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