VSクソジジイ
目上の方に対して、口悪いです。
馬車の中で何を話したかとかもはや覚えていない。ただ頬や髪へのキスはされた気がした。心ここに在らずで身体は任せていた。
帰ってきたらマーリと、使用人の方々が出迎えてくれてクレイン公爵とルキアスを挨拶した。
そしてついでの様にやってきたクソジジイ。
自己紹介を終えた後に一息付き、
「しかし、リリアは長子の後継でして…クレイン公爵様もご子息は後継でございますよね」と、渋った。
「妹君がいるので大丈夫ではないですか?」
「えっ?私がルキアス様の婚約者に?」ルキアスの問いにアリアの突っ込み。どうやらアリアは異世界の住民らしい。何故そうなる。
「そうですよ、クレインご子息!我が家にはリリアの他にいますよ!」意地でもアリアの存在を認めたくないクソジジイはどうやらルキアスの存在も認めたくないらしい。
「問題ないですよ、我が家は公爵家。父上も婿養子で迎えておりますが男爵の跡取りだったのですよ。母上と相思相愛で、婿に来てくれたのです。リリアは幸せにしますから妹君に優秀な仕事が出来る心の広い方を見つけられては?」
あっ、クレイン公爵婿養子だったんですか。息子の発言が強い気がしたのは奥様の立場が強いからですか?!
そして幸せにするってところだけ聞くとプロポーズに聞こえる不思議。ついでにアリアのディスりを忘れない心遣い。
「いやいやご子息はまだまだ若い。リリア以上に身分の高い釣り合いの取れる御令嬢がまだまだ沢山おりますよ」
「経験者の方の意見はとても参考になりますが、一つの考えとして心に留めておきます。結婚は本人の気持ちが大事と我が家の方針でして、早いですが私としてはリリア嬢に惹かれております。若いものの気持ちを汲み取るのも残り少ない人生の餞別と思いください」
クソジジイから言わせたら産まれたばかりの若造に馬鹿にされていると感じるだろう。
クソジジイもクソジジイで大人気ないが。
というか、7歳児の使う言葉ではない気がする、公爵家、教育方針大丈夫か。
ぎりぎりとした空気をホームの時計が夜を知らせる。鳩さんポッポこんばんは。
静まり返ると同時にクレイン卿がルキアスの手を引き帰宅を促す。
その光景だけ見たら年相応に見えるから不思議だ。やっぱり見た目はまだまだ子供だ、オーラは黒いけど。
「では、後日」
掌にキスをされて馬車に乗り込むルキアスは王子様みたいだった。
そして空気の読めないヒロインは走って馬車の前に待機して手を出していた。上手くかわしていたけど。
今日のお茶会の主役が王子様だったはずなのに全然記憶に残ってないのは何故だろう。
夕食も喉を通らず、家族の反対を押し切り自室に入りそのまま寝てしまった。