大丈夫
「僕はね、お前みたいな奴が二番目に大嫌いなんだ」
ルキアスの声音と口調が一気に変わった。
今までに見せたことない嫌悪の表情で令嬢を睨み付けている。
「そ、そんなぁ…だって…私の父は…」
「僕ね、近衛隊長、アペロ・ルーズーフ子爵と知り合いなんだ。ジョン、だっけ?彼は君が生まれる前に死んでるよ」
辺り一面シーンってなる。レベッカも泣き止んで、いきなり死んだとか言っちゃってるもんだから険しい顔してる。
「しかもね、無理心中だったみたいだよ」
ウッソやん!!儀式しました発言ナルシスとしてたやん!
「アミリアお嬢様の事を愛していたみたいでね、後を追ったんだって。生まれ変わっても一緒になりたいって願ってたんだって」
そしたら胸揉みたいとか言うな、もっとまともな恋愛を所望する!
「……ルーズーフ子爵はね、血の繋がりのないもう一人の身内がいるんだって。よく自分の弟の名前を名乗って遊び歩いてたんだって」
「ルーズーフ家系の瞳の色はエメラルドだよ」
お前みたいな薄汚れた色じゃない、と聞こえた気がした。
思えばジョンは実家の事は喋らない人だったな。と、令嬢を見るルキアスを観察しながら思った。
多分、どちらかの兄の事だろう。
ジョンはその人の事、凄く嫌いだったんだろうな。
令嬢を見る目が汚物を見るかの様に、冷たかった。
場の雰囲気が居た堪れずアレクが
「も、もう話は終わったよね?解散しようかっ、ね!」
と、鶴の一声でダンスパーティは終わった。
権力者の特権ですな!
令嬢は気まずげにルキアスを見た後、逃げる様に去っていった。
アリアは私に何か伝えようとしていたけど、ルキアスから手を掴まれ、その場を後にした。
ご都合スチル背景…誰も来ない空き部屋の中に入り、「ごめんね」と一言、彼は言った。
「怖がらせてごめんね」
「大丈夫よ」
不安げな目でこちらを伺う。
「大丈夫」




