前!前世
「アミリア、お前は私の大切なマーリをよくも虐めてくれたな?同じ血が流れているとは思えない」
少し、いやかなり、芝居がかった口調で実兄は私ことアミリア・エイデンを見下ろす。
兄の隣にはキャメル色の癖毛かかった長髪、子リスみたいな零れそうなうるうる潤んだ瞳の乙女-ーーマーリが腕を絡ませ守られるようにいた。
「いくら彼女が平民だからと言って学園で嫌味三昧、陰で虐め、制服を破り、私と別れさせるために色々してくれたな」
「お兄様、それは誤解です…私は何もしていません」
そう、なにもしていないのだ。
私は嵌められた。
そう伝えても双子の実兄キリィは憎々しげにアミリアを見る。
戯言を。
その一言を呟きキリィは長々とアミリアの悪事を伝えている。
伝えられているはずのアミリアはどこか上の空で聞き流していたが。
前世の記憶を思い出したのは6歳の頃。
よくある発熱でのパターン。
確か16歳の裏若き高校生を謳歌していた[私]は変わった子だったと自負している。
何が変わっているかというと特にわからなかったけれど、あえて言うなら理想を求め続けていた。
高校生に入ったらバイトをすぐに始めて〜、彼氏を作って〜、友達とカラオケや映画に行ったり、美味しいカフェを巡ったり!と。
学生の本分である[勉強]と言う概念がすっぽり抜けていた。
そして偏差値少し低い公立に推薦入学を果たし桃色ハッピー高校生活ね!と和気藹々と門をくぐり半年。
テストはギリギリ平均値、バイトはなんとか学校の許可を得て、20時帰りの個人うどん店の店員になり、彼氏はまだ出来ていない。
顔は平均的だと思った。
友達と呼べる子たちも出来て、バイト先もいい人たちばかりだった。
彼氏は出来てないが。
そんなある日、隣の県から遊びに来ていた甥っ子(クソガキ4歳児)が買い物中、義姉から手を離し道路に飛び出し追いかけて庇った私がトラックに撥ねられた。はず。
甥っ子は義姉に向かって押したから大丈夫だったと思う。最後に見えた光景が義姉に抱っこされてた甥っ子だったから。
まぁ
そんな感じの前世で何が言いたいかと言うと。
…今更異世界に転生してもお嬢様言葉使えないんだよね?!
ほら、平均値平均だったとしても国語は残念だったからさ!
異世界チート能力〜とか言われてもいわゆるバカの部類だったから生まれ変わっても今更知識披露とかむりぽなの!
ちなみに発熱の原因は双子の兄キリィのイジメによる水かけらしい。