虹の女神と色覚
虹の女神と色覚
リゲル恒星系にプリズム星という星がある。
地球派生型の人類とはファーストコンタクトだったが、どうやら友好関係が結べそうだった。
「いやあ、実に綺麗だったよ!」
プリズム星人と会った者は口を揃えてそう言った。
プリズム星人の瞳の虹彩が、虹色をしているのだ。
美しい虹の女神が友好団の代表だった。
「私たちは、赤外線から紫外線以外の色まで見ることができます」
ちょうど、プリズム星人にとって、地球人が色盲の人の立場にあたるわけだが、地球人も特殊な眼鏡を開発して、見えなかった色までを見ることができるようになった。
「視覚を司る視細胞の錐体と桿体のうち、錐体が明るいところで三色型色覚(赤、緑、青)の仕組みで色を見分けているわけですが、プリズム星人の瞳はそれ以上の種類の色が見えるわけです」
「すごいなあ、圧巻ですな」
プリズム星に招かれた使節団は眼鏡をかけて、星の情景に息を飲んだ。
「オズの魔法使いで、エメラルドの都に入った時も緑のガラスの眼鏡をかけて、なにもかもエメラルド色に見えた、っていう記述があったなあ」
「でも、今回は本当の色がみえているわけですね。すごいな」
英語でひとみのことをIris、虹の女神のことをIrisと呼びます。
プリズム星人はまさにIrisと呼ぶにふさわしい。
ぱらぱらと天気雨が降った。
「虹だ!」
特殊な眼鏡を通して見る虹は七色以上の色で構成されていた。